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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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王としての苦悩、心の影


「はぁ……」


 暫く訪問者も無く、書類仕事を進める。

正直元々引き篭もりで人を純粋に

信じるような人間ではない。寧ろ嫌いな方だ。

結局のところ流されるまま戦ってきたが、

俺の目的はなんだったんだろうか。

俺としては何がしたいのか。

元の世界に帰りたい訳ではない。

真実が知りたい?

この世界に呼んだのはあの”本当の神”だ。

エンディングに辿り着いたとき、

俺は何を得る事が出来るのだろうか……。

 そう考えると、兎に角俺の大事な

人たちが住む世界を誰かに操られるような

世界では無くす事が目的だな。

先ずはオーディンのところに辿り着く。

そこから先はその時だ。


「あまり余計な事は今考えないほうが良いよ」

「お帰り」

「君くらいの年齢なら、部下も居てっていう

環境だったろうし、王様と言っても似たようなものだろ?」

「正直しんどい」

「これからもっとしんどくなる。

君も覚えがあるだろう? 国取りゲームで

領地が広がったときの事」


 そう言われて振り返る。

確かにその通りだ。今は本拠地のみに

集中しているが、これから広がれば広がるほど

多くのことを考えなくてはならない。

その為に基盤としてこの国で、

経済の循環や法の施行をしどこでも組み込めるような

ものを皆と考案した。

が、結局のところゲームではない。

オンルリオの件が良い例だ。

俺の予想外の事が多くおきて、正直お腹が痛い。

聞いてないから言うが、チャンスをくれといわれても

って感じが今はしている。

もっと言えば、チャンスを与えられる人間が

今のところ誰も居ない。


「おいおい、あまり陰に入らんでくれよ。

まだ領地戦も終わってないのに」

「その言い方だと領地戦も面倒な事になりそうだな」

「勿論。今まで冒険者気質でこれただろうけど、

ここからは王様として戦うんだ。一人で戦えない

って分かっているなら、如何にして他人を信じて

一緒に戦い抜くか。君も腹を括ってもらわないと」

「……随分優しいな」

「そうかい? 一蓮托生なのは僕らが一番だと思うが。

僕の目的を達成するためには、君にエンディングまで

辿り着いて貰わないと困る。その為には身を粉にするさ。

それは君に仕えるものも同じはずだ」

「そうだな。気を取り直して頑張るか」

「そういうことだ。で、悪いけど次の領土戦の仕度を

始めるけど良いかな?」

「始めるか。取り合えず戦術を整えて、

兵糧と兵数そして人員を定める」


 とは言うものの難しい。

今回若くこの国出身のオンルリオがあのような状態で

帰還した事もあり、国民も同じような人選では

不安になる。俺としては若い世代を鍛えたいし経験値を

与えたい。が、難しいだろう。


「まぁ俺が出るか」

「そうそう。勝負に勝って内容でぼろ負けだったからね。

向こうの領民が怒らないのが救いだ。

なら勝負も内容も勝って勢いを付けないと、

この国だけで良いって事になる。

そうなったら最悪三国に攻められる。

勝てるだろうが、被害が大きすぎる」

「それは勝ったとは言わないな。

……どうやってもオーディンの望み通りに

なりそうな流れだわ」

「そこを何とかするのが君の仕事だ。

最悪でも勝てると分かれば、最善を尽くす甲斐もあるだろ?」

「頑張ろう頑張ろう」

「君こそ戦場に出たら切り替えてくれよ。

ショックなのは分かるけど、落ちっぱなしでいられないんだから」


 そう言ってロキは席を外した。

うーんやっぱりショックなんだよな。

怒ってるんだろうな。

王様になって色々忙しなくやって、

割と全てが順調に行っていただけに、

こけた時の衝撃が結構あったんだな。

ロキと話してそれを気付かされた。

感謝しないとな……。 

 色々と自分の中で整理して

その後、重臣たちを集めて、

次戦について話し合う。


「次は俺が直接出る」


 その発言に回りはざわつく。


「陛下が直接でなくとも……」

「ノウセスの手柄を取る訳ではないがな、

オンルリオの失敗もある。俺が出て

示さなければ、国内が落ち着かない」


 その言葉に、この国出身の重臣は

明るい声で唸る。逆にノウセスなどの

他国出身者は低い声で唸った。

ここでノウセスが戦果を挙げて

統治まで行けば、他国出身者の方が

上であるような風潮が出かねない。

そうなると取り返しが付かなくなる。

他国出身者には例の大使の事があって

肩身が狭いのも分からなくは無いが、

それは半分自分たちの組合の問題も

含んでいる。だからこそ俺が出張る。


「で、陣容はどのように」

「親衛隊を四部隊、それと兵士五百で。

俺の考案した遊撃編成を組んで出陣する。

兵の指揮を俺とオンルリオ、イシズエで

行う」


 今回の出陣は俺の考案していた

遊撃編成を試す事をしたいと考えた。

機動力を生かして日数を掛けず統治まで

至れるかどうか。試してみなければ分からない。


「我が王よ、失礼ながら」

「ナルヴィも皆も言いたい事は分かる。

だが再起の為に機会を与えるのも年長者の

仕事であるし、立ち直るなら早い方が良い。

何より単独でまた出して失敗すれば取り返しが付かない。

俺も暫くは休ませる心算だったが、

鬱屈とした気持ちで長くいれば、難しいだろう。

とまぁ建前はそうだが、俺もイシズエも親衛隊も

最初からいる状態なら無茶も無理もしようが無い。

この状態でどうなのかも見たくもあるからだ」


 俺の言葉に重臣たちは意見を交わし始める。

当然他国出身者のみならず、この国の人間からも

疑問の声は上がった。俺もそうは思ったが、

当初の目標とは変わってしまった。

オンルリオがベストは無理でもベターぐらいの感じで

こなしていた場合、この次はノウセス、

その次にこの国の将がと考えていて、

それを俺が遊撃で後方から支援する段取りだった。

その最初が崩れたなら臨機応変に変えなければ。


「それにオンルリオが居たからこそ、

我が軍の練兵は順調だった。

皆失敗に囚われているが、彼は繋ぎ役として

十分役割を果たしながら練兵を行ってくれた。

彼を失う事が我が軍の為になるとは思えない。

彼のみに拘るのではない、ここにいる皆は

俺が信じる者たちだ。誰一人代えがきかない

人物しかいない。そう考えるからこそ、

オンルリオを起用したい。ここは俺の我侭を

許して貰いたい」


 ロキと話して頭を整理して、

冷静に考えれば俺が自分で言ったような事は

その通りなのだ。

オンルリオがそこを果たしてくれていたからこそ、

攻める事も守る事もできる。

勿論親衛隊など各隊は別にしても、大枠はその通りだ。

失敗ばかりに眼を向けていては、

さっきの俺みたいに落ちて見失う。

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