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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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領地確保

 合間に人と会ったりしつつ粛々と仕事をし、

しょぼーんとしながらご飯を食べ、皆に慰めてもらった。

王様寂しす……。


 それから五日後の朝。

少数を引き連れたオンルリオが王の間に控えていた。


「オンルリオ、ご苦労様」

「面目も御座いません」

「いやよくやってくれた。ゆっくり母親を

労わると良い」

「……陛下、母の具合が良くなった暁には」

「流石にあの領地に戻すわけには行かないが、

以前と変わらずやってくれると助かる」

「是非今一度チャンスを与えて頂きたく」

「勿論。今回の事をよく学んで、次に生かしてくれ」


 そう伝えると、頭を下げて下がっていった。


「我が王よ、あれで宜しいのですか?」

「良い」

「確かに今回の事は仕方ない部分も御座いますが、

立て直せなかった事はそうではありますまい」

「初陣だし一番槍だし。それに役割を交代させ

たんだ。お構いなしで良いと思うがなぁ」

「交代させたのは温情でありましょう?

戦を挟めば冷静になるかと思いきや、

更に慌てて市民に被害を出すなど話にもなりますまい」


 そう、この五日に起こった事を簡単に説明すると、

ほぼ抵抗のなかった隣の領地に進軍し、

無意味に威嚇し反発を招き小競り合い。

更に街を守る壁を壊すなど損害を出した。


「モンテクリス卿には悪い事をしてしまった」

「いえ。我らも恭順を決めかね遅れた事が

この事態を招いたので。陛下には是非

我らと我らの民にもどうか公平なご判断を

して頂ければ幸いです」


 オンルリオの横で傅き控えていたのは、

金髪のオールバックに口髭を蓄え、

背広に身を包んだスマートな巨人族。

紳士で品のある雰囲気と、穏やかな言葉遣い。

恐らく領地での意見の取りまとめに

時間が掛かったのだろう。

今までのことを考えれば、出来れば何事も無く

そのままで居られれば一番良いと思うのが

当然だ。進んで傷付くならそれ相応の対価が居る。

それは大義や信念、忠誠や願い。

地位や名誉などの欲。そう言ったものがあればこそ。


「モンテクリス卿とその領民については、

変わらずそのままで。ただし我らの法を施行させて

それを遵守して頂きたいのと、

ヤマナワを将として駐留軍を置く事、

そして兵の募集や人材の確保する為の推挙を

お願いしたい」

「承りました。恭順に遅れた分を取り戻したく思います」

「私も早いうちにそちらに出向き、

今回の件で被害を被った人々に謝罪したく思う」

「有難き幸せ。医者の手配を早急にして頂き、

重い怪我の者は居りません。陛下のお見舞いがあれば、

少しは心が軽くなるかと」

「有難う。壁の修理もこちらから派遣する。

また食料に関しても融通する用意があるので、

実態把握の前に私から少し、モンテクリス卿への

感謝の印として少し渡したい」

「重ね重ね感謝致します。では私はこれにて。

ヤマナワ殿とセンリュウ殿、ヨウト殿と話し

今後の事を詰めねばなりませんので」

「領民も安心しよう。またそちらに出向いた時に

ゆっくり語り合いたい」

「是非。我ら領民一同お待ち申し上げております」


 立ち上がり頭を下げるモンテクリス卿に、

俺は近付いて握手し送り出した。

正直多少の抵抗があるのは想定していた。

事前に勧告はしているし、それに対して

期日内までに回答が無かった。

この情勢でわざわざそうする必要は無い。

後二つ領地があり、そこも同じだ。

最初にぶった切った奴の領地も、

離反するかと思いきや回答せずだった。

 想定外とするなら四人も居て

要らない被害を出した事にある。

それについてナルヴィは処罰するべきだと

言っている。モンテクリス卿の手前も勿論あるが、

先頭に立った将としての責任を取らせたいと

考えているのだろう。

 俺としては書類のだけで、

責任の話をしたくはない。其々に責任はある。

そう期間を空けず領地には出向く。

そこで話を聞くつもりだ。


「しかし母親の病が重く危篤にあるので

帰還するようにとは」

「対外的にも良い理由だとは思うがな」

「あからさまにも思いますが」

「温情だと皆思っただろう。

それで良い。不平不満を持ち続けられても

オンルリオにとっては辛いだろうし。

挽回なら幾らでもこれから出来る。

それに期待したい」

「仇とならねば良いですが」

「そうなったらそれまでだ。

一人ひとりに最後まで手とり足とり

してやりたいが、流石にそれを

全ての人には出来ない。

結構頑張ったつもりだけどなぁ」

「それを汲んでいれば、

被害を与えた領主が隣にいるのに、

母危篤の意味も解さずチャンスをなどと

私は敬愛する我が王に口が裂けても言えません」

「痛いことを言う……」

「少々気をつけた方が良いかもしれません」

「なら対策を話し合うか」

「心得ました。私とウルシカ殿、アシンバ殿で

図ってみましょう」

「俺も混ざる」

「大丈夫です。結果はお伝えしますし、

するしないは我が王の判断で」


 そう言ったきりナルヴィは

王の間から一礼して去って行った。

中々難しいなぁ。

失敗を恥として挽回するより

恨みに思う事が先行してしまえば、

もうそれは長い年月を掛けて

自分で悟り正すより他無い。

他人がどう言おうと聞く耳を持たないだろう。

 バランスを取るために、

オンルリオにも今までの労をねぎって

チャンスをと思ったのだが。

こういう失敗もあるのかと痛感している。

この国の人のことは言えない。

良かれと思って余計な事をした。

ただ拘って何とかしようと執拗になる事は

断じてしないよう気をつけよう。

立ち直るにしても本人が基本だ。

気には掛けるのは勿論だが。


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