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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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初陣の混乱

そこから更に二週間。

言葉にすると少しだが、大混乱が

あった。初めての事とはいえ、

オンルリオの準備が捗らず、

結局総動員で出陣の準備をした。

最初のうちは大目には見ていたものの、

時間が掛かりすぎていた。

兵糧の準備から補給線の確保、

経路の確認。篭城された時の事や

統治後の事。上げればキリが無い。

 ヨウトはそれらに関して

周りの人間に聞いて回って概要を

何とか三日で仕上げ、オンルリオに提出。

が、とうのオンルリオは人を集める事に

頭が行き過ぎて確認していなかった。

生返事で済ませて、それも統治後に

必要な人材をうちから持っていこうとしていた。

その様子に兵士たちから不安の声が漏れた。

スカウトされた人材もこの国の出身者で

固められていたため、気を利かせて

皆が準備を進めた結果、収集が付かなくなった。


 言い方は悪いが、順調大成功は

想定していない。俺ですら大規模戦となれば、

同じように失敗した可能性はある。

有難い事に冒険者から王様になって、

それまで付いてきてくれた人間も居て、

足場を固められたから、そして頼る人を

多く回りに固められたから無いと思うけど。

言い方が悪かったのか。若い面子のみで

という言葉に囚われすぎたのか。


「良いように思いますが」

「船出で盛大にずっこけたのに?」

「はい。これが混戦の最中であれば、

立て直す事が出来たか疑問です」

「私もそう思いました。

シンラとも話しましたが、

そうなった場合、陛下の武力に頼る他無く」


 シンラとカムイと今回の件について

話していたが、俺たちの間に不平不満は無い。

寧ろ今回の件の反省点や修正点を挙げて、

対策を練るのに忙しかった。


「オンルリオ殿は将軍には難しいと思います」

「現段階では、という部分もありますが、

指揮があって初めて輝くかと」

「指示をした俺が言うのもなんだが、

トロワとカトルがよく動いてくれた」

「正直親衛隊の要たるお二人を出すのは

どうかと」

「私はシンラとは違い、お二人を出した

陛下の判断は流石だと思っております。

あのお二人をもってせねば収まらない

可能性が大でした。更に言えば

トロワ殿、カトル殿共にオンルリオ殿の

先輩に当たるこの国出身者。ぐうのでも

出ますまい」

「さりとてお二人はあまりにも厚遇優遇が

過ぎるのではないか? 成功すれば

オンルリオの株が上がるだけだ。

俺ならオンルリオに対して良い気持ちはしないな」

「気持ちの問題はオンルリオ殿に対処させる

他あるまい。そこはヨウト殿の腕次第」

「それはまた剣呑な事で」

「そうせざるを得まい。我等とて昔からの

友人ではないのだ。その人となりまでを

知らん」

「そう考えると陛下とカムイと一月に渡って

膝を突き合わせて飲んだ事は、大いなる宝に

なるわけだ」

「陛下の懐の広さと寛容さに感謝致します」


 そう、事態の収拾に俺は親衛隊から

二人、オンルリオと年が近くまたこの国

出身の者を手配した。トロワとカトルは

双子で、親衛隊として入ったのも初期からだ。

警護は元より日常の差配にと、俺に極力

気を使わせないよう、また動きやすいよう

気を配ってくれた二人でもある。

親衛隊も多くなり、其々の分野に特化した

繋ぎ役、そしてバックアップとしてだけでなく

王の眼の代わりも勤めていた。

 中でもトロワとカトルは目立たず余計な事は

しない。この国でも珍しい部類の人間だ。

名と同じ親衛隊の順列に適う働きを

してくれていた。


「ただ陛下の腹の内通り、残念ながら

数日で戻るやも知れません」

「腹の内とは人聞きの悪い」

「失礼を。ただやはりそれは我らも

同じ思いです」

「シンラと同じとは言いがたいですが。

出来れば上手く行って欲しいと願っております」

「綺麗事を……と言いたいが、

それはその通りだ。特にトロワとカトルの

両氏には這ってでも戻ってもらわねば」

「敢えて中身までは聞かないが、

腹を壊さないようにな」

「心得ておりますとも。

軍師たる者、顔は笑顔で腹で怒って心で泣いて、

頭で次の策を練り続ける生き物故」

「……シンラも軍師業は初めてではないのか?

私は初めて陛下に軍師としてお仕えするのだが」

「ものの例えだ友よ。伝え聞いたるは、ってやつよ」

「例えでは無いと思うが」


 そう話しつつ二人は紙に筆を走らせている。

今回の混乱があったが、今日出立した。

で、俺としてはチャンスを与えたかったものの、

トロワとカトルを補佐に付けた。

更に悪い事にオンルリオがその場凌ぎで

雇用した人間を数人解雇した。

中にはスパイ紛いの者も居て、正直辟易している。

本人の気負いすぎにしてはエライ結果である。

その為他の諸将からのオンルリオの評価は

言うまでもない。シンラのオンルリオ呼びが

全てである。


「結果は分からないさ。シンラの期待には

副いかねる事になると思うけどな、俺は」

「それは顔で笑ってらっしゃるので?」

「いいや。次の策を練っている」


 そう俺が言うと、二人は同時に

紙を俺に向かって差し出してきた。

分かりやすくまた正反対な提案が

二人から出てきた。

 シンラは俺が兵を率いて後を追い、

掌握する案。

 カムイは静観しつつも、

オンルリオを考慮してアシンバを向ける。


「どちらも駄目だな」

「陛下はオンルリオに甘う御座いますな」

「やめろシンラ。オンルリオを憎むあまり

陛下に対する口の聞き方が酷すぎる」

「……申し訳御座いません。自分でも

冷静を失ってしまい失礼を」

「まぁ軍師だから自分で言ったように

頭は冷やしておいてくれ。俺が血が上った時に

諌めるのが二人の仕事だ」

「「御意」」

「俺としては役目を取り上げる事はしたくない。

だからといってこのままにしておけば、

領地だけでなくそこに住む人の信頼を

失いかねない。それは取り戻すにはあまりに

苦労が大きすぎる」

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