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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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開戦の狼煙

「そう、その必要がない事を彼らは

自ら示してくれた。確かに我らの罪もあろう。

が、今この国には彼らの国の出身者も居る。

そして私は出身を問わず身分も問わず、

才あるものは積極的に分け隔てなく採用してきた。

それを皆感じて同じように接してくれてくれた事、

心より感謝し、また誇りに思う」


 その言葉に皆頷き、俺も返すように頷いた。


「我らは他国を犯す事など、正直どうでも良い。

この国の貧困を、この大地の回復を優先すべく、

分け隔てなく力が必要なのだ。それを思って

交渉しようとギリギリまで考えすぎてしまった。

その事に関して皆に詫びなければならない。

王としての迷いが、皆の不安と怒りを招いてしまった事、

ひとえに未熟な王としての我が責任だ。

この件が切っ掛けで一緒に汗水流し、生きてきた隣人を

うらまないでやって欲しい。この通りだ」


 そう言って頭を下げる。それに対して

国民の皆は悪くないと声を張り上げて返してくれた。

有難い事だ。


「ありがとう。……もう一つ、皆に詫びなければ

ならない事がある。俺は、今日の夜半から朝に掛けて

起こった襲撃に対し、被害を受けた家屋や、何より

大事な我が門兵が重症と聞き、最早我慢の限界に達した。

どうにか争わずに済む術を考えていたが、

それをあざ笑うような連日の街頭の演説と襲撃。

それこそが各国の答えであると、今更気付いた」


 後何を言おうかと考える為に俯いたが、

それがどうも辛い感じに見えたらしく、陛下コールが

起こってしまった。違う違う。


「ああすまない。言葉にするのが難しい。

言いたい事は山ほどあるが、それはきっと

皆の胸に灯る火と大差ないと思う」


 俺は右拳を左胸に当てて皆を見た。


「戦おう、同じ夢を見る事が無いというのなら。

戦おう、我らの所為にし我らのみに集るを良しとするなら。

戦おう、我らの未来と大地の未来の為に!」


 俺は鞘から相棒たちを引き抜くと、空高く掲げた。

青白い光を放つ黒隕剣と、気の色に染まる黒刻剣(ダークルーンソード)

皆の歓声が上がり、気炎が見える気がするほどだった。


「明日より戦と防衛に向け周辺を制圧、

国境に砦を立て各国討伐を開始する!

生産も開発も急ピッチで進めて欲しい。

長い戦いになるかもしれない。

だが誰一人として欠けることなく、

一丸となって戦い抜こう!」


 地鳴りがするほど声が響き渡る。


「よし皆、今日は開戦記念日として

国庫からも振舞うから賑やかにしてくれ。

明日から暫くの間、なかなか気も抜けないことが

多くなるしな。ああそうそうあの大使どもは

適当なところまで護送して叩き返す。

我らは彼らと違って礼節を知るものであるからな!」


 そういうと笑いと共に皆頷いていた。


「ではよろしく頼む!」


 俺が一礼して階段を下っていくが、

後ろからは声援が鳴り止まなかった。

多分結構なストレスが溜まっていたから、

その反動なのだろう。俺が期待通り想像通りに

近い答えをした事もあるだろうし。


「王、お見事でした」

「そうか? もっと上手い言い方はあると思うが。

それより国民の皆に国庫から材料を出して

振舞って欲しいわけ隔てなく。病院にもな。

それと大使たちにも牢屋の中ではあるが、

振舞ってやるといい」

「……はい」

「良いじゃないか。もう二度と会う事はない。

今回は大使だから生かして帰す。そうでなければ

もう刎ねてる」

「して、ノウセスの処分ですが」

「ああ。あの雰囲気では言い出し辛くてな。

恵理! リムン! エメさん! フェメニヤさん!」


 俺は恵理たちを呼ぶと、婦人会で国庫から

料理を振舞って欲しい、祭りの指揮を取って欲しいと

伝えた。そして涙を流し感動してる事を大仰に伝える

イシズエに、祭りの警護とフェメニヤさんの補佐を

するよう頼んだ。


「他の重臣達は皆一度王の間へ集まってくれ」


 階段を下りた所に皆居たので、

指示を出したもの以外は王の間へ集まった。

テーブルにはノウセスたち以外が腰掛けている。

アシンバウルシカも傅こうとしていたので、

席に着くよう促した。


「で、ノウセスの処分を発表する」

「陛下、お待ちください。我らにも共に責があります。

彼一人に負わせるのは」

「不満なのか?」

「不満というより、我らにもその処分の一端を

お分け頂きたく」

「そうか」


 アシンバとウルシカは共に立ち上がり弁護した。


「ノウセス、お前に罪があるとすれば、

先ず独断専行、そして少し策に溺れた事だろう。

ただし独断専行は時間やまた責任感からのものだし、

策も正確無比で確実になんて無理な話だ。

ただし今後は俺に相談するように」

「誓って」

「なら処分を発表しよう。ノウセスの外交職を解く」


 俺の発言に皆どよめいた。

アシンバとウルシカは抗議しようとしたが、

手で押さえた。


「逸るな。ノウセスの策は俺も同じ立場なら、

後顧の憂いを断つ為にした。ただ外交職としての

仕事はそれではあるまい?」

「はい」

「本人も罪の意識があるように思うので、

より厳しい処置をする事にする」

「どのようなものでも決して御恨み致しませぬ」

「言ったな? それを忘れるなよ?」

「はい」

「ならその言質を得たところで正確な処分内容を

伝えよう。ノウセスは外交専任職を解き、

ノウセスのフロスト出身者による隊を率いる将軍職に

就ける事にする。要は責任が重くなるという事だ」


 その発表に皆ざわつく。


「お、恐れながら陛下」

「なんだまだ足りないのか?」

「いえ、いえ決してその様な」

「流石に褒美をやるにはかなりの成果を挙げねば

やれない。更にこれからの勲功によっては、

皆に疑心を抱かれる。俺の為にも頑張って

戦果を挙げてくれ。将軍職は間違いじゃなかったと」

「は、はい! この命尽きるまで

陛下の御為に誰よりも尽くす所存!」

「それは頼もしい。ナルヴィも負けていられないな」


 そう言うと、ナルヴィの目付きが悪くなる。

ノウセスは特にそれには負けずに見返し、

その後俺を見て床に頭を押し付けた。


「さぁノウセス将軍。席についてくれ。

この時に将軍に就けた意味、

分からないノウセスや皆ではあるまい?」

「はい。我がフロストの攻略で御座いますね?」

「然り。ロキより報告もあったが、

ノウセスのフロストの塩害が酷く、

飢餓が強いらしい。うちとしても塩の精製を

したいし、兵の魅力もある。

先ずは武を示す。俺も勿論出陣する。

なるべく早く足場を固めて攻める為、

皆も明日の会議までに知恵を練ってくれ」


 

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