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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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大義名分の口火

実はこの会議の前の日。

大使が面会を求めて来訪した。

それもウルシカとノウセス更には

アシンバのフロストと全ての国が

示し合わせたように同じ日に。

まぁ示し合わせたは言い過ぎだ。

何しろ得が無い。

 連合で攻めるとか言われても、

今我が軍にとって何らの

脅威でもない。そんな事をされても

良識と見識のみならず知性を疑いかねない。

 流石にそれを正直に言う訳にはいかない。

勿論皆それを承知していた。のでやんわり

言おうと話していた。

 が、何と言うか斜め上を飛んでいく

大使たちの発言に、一同混乱と怒りが綯い交ぜになっている。

俺は笑ったが、それも皆の機嫌を損ねたらしい。

大体同じなのだが、ウルシカの国の大使とのやり取りを

少しだけ思い出す。


「王、貴方は良くぞここまでこの食べ物しかない

国を再興されましたな」

「ああ有難う。だが皆のお陰だ」

「なればこそ我らの国民も居るのですから、

その分を我らに謙譲し、我らと対等に話す事を

我らの王は許すという事です」

「ん?」

「お分かりになりませんか?

我らの王は貴方を認め貴方の功績を評価し

同じテーブルについて貢物を献上する事を

許すと仰られているのです」


 この後も永遠とこの類の事を言っていたので割愛するが、

彼ら曰く俺が頭を下げて分け前を渡せば

他の国と組んでうちを攻めるのをやめてやる、

という事を真顔どころか少し上からニヤつきつつ言われた。


 どこをどうすればそんな事をうちにいえるのか。

正直ノウセスやウルシカのうちとは組むな、

という発言は正しいように思う。

貧困のあまりどうかしてしまったようだ。

 彼らもここに来る前に城の中をうちの護衛付きで

見て回っているはずで。

うちは前以上の城壁と最新の攻城兵器や高所修理機、

もっと大きくいえば文明が違うレベルだろう。

痩せ我慢過ぎるなぁとあまりの事に爆笑してしまった。

今も思い返すだけで腹が痛い。

ニヤニヤしてしまう。真顔であんな事を言うなんて

正直今世紀最大レベルのジョークだ。

 ただ仮にうち以上の発展をしているのだとすれば、

それはそれで楽しみな面もある。

もっともそれならうちに仕事を探しに、

そして居住を求めて大量の人間が来る必要はない。

そう思うが意外にあったりするかもしれない。


「どうしたものかとはどう言った事でしょう」

「いや大使たちへの返事だよ」

「要るようには思えませんが」

「しかしなぁ。彼ら俺からの返事を直接伺いたいから

二、三日待ってやるって言うしなぁ」


 俺はニヤニヤしながら言った。

皆の視線が痛い。


「王、僭越ながらお願い申し上げます。

一刻も早く大使たちを国へ帰して頂きたいのです」


 珍しくフェメニヤさんが立ち上がって言うと、

ユズヲノさんや恵理、エメさんやリムンは頷いた。

頬を膨らますリムンを見ると、大分おかんむりらしい。


「彼らの態度はこの際どうでも良いのです。

私としては彼らが居て吹聴することにより、

この国であの大使たちの出身の者たちが

肩身の狭い思いをしなければならない

事態になる事を危惧しております」

「分かっていますよフェメニヤさん」

「……王、それはどういう事ですか」


 一同の視線が俺に向く。

さてどうしたものか。

俺としては区分け線引きをしたいのは

前々からやっていた事で分かると思う。

更に雇用の面や起用の面でも

出身で差別したりはしない。

だが生きていく上で妬み僻みはある。

元々生活していた国の者より上に立つのだから、

そういうのもコミで立ってもらっている。

 互いの損得を照らし合わせて合意し、

今信頼を築いているところでもある。

人々の考え方や見方は恐らく変わっているものと思う。

俺としてはそれを見たい。

先ずは巨人族たちの結束を得たい。

俺は古いものを排除したりもしない。

ラーメンぽいものは相変わらず工夫してはいるが、

元々の液体を使った新しいバージョンも出しているし、

他の地域で廃れてしまった衣料だったり

武芸だったりを保護したりもしている。

あまり見栄えがするかは分からないけど、

俺がそれを身につけたりとか。

 収まった後に其々の国に帰すのが良い。

そう考えての事だ。それを出来るする国と、

それを許さず誰かの意思により多くが捨てられる国。


 戦には必ず大義名分が必要だ。

それが無ければただの虐殺に他ならない。

例え偽善だとしても、生きる者にも死ぬ者にも

戦う為の理由が要る。

これまでの死の原因の多くは栄養失調が

根っこにあったものだ。

あの大使たちの要求を呑めば、

また時代は元に戻る。俺がそれをするとは

誰も思っては居ないだろう。だが万が一を考える。

 俺の考えは決まっているし、

変わる事はない。だがそれ以上に必要なのは

皆の意思だ。繁栄してきているものを、

自分たちの意思で元に戻すのが良いのか、

それとも自分たちの意思で例え血を流しても

先に進めるのか。


「俺は少し調子が悪い。気分を害した。

引き篭もるから誰も声を掛けないでくれたまへ」


 そう言って皆を追い出した。

あからさまな嘘ではあるが、それこそが重要だ。

これは疑心暗鬼を生む。今まで迅速に決断してきた王が、

まさか……と。何度もナルヴィ始め王の間を叩くが、

今は一人になりたい、などとメランコリック気分で言って

追い返した。自分としてもあからさま過ぎてなんだなぁと

思いながらも、久し振りにボーっとする時間が出来て

意外に良かった。


「陛下、宜しいでしょうか」

「ハンゾウか。どうかな表は」

「はい。イシズエ殿、ナルヴィ殿、アシンバ殿が

主導して其々の大使に他の者たちが居る前で

陛下が考え込んでおられる事を誇張して伝えました」

「なるほど……」


 窓の外をハンゾウと並んで見るが、

あぁ~蠢動しておる蠢動しておる。


「ハンゾウはどう見る?」

「僭越ながら申し上げます。そう長くは持たないでしょう。

持って二、三日が限度かと。

正直イシズエ殿は本気で陛下が考えて居られると

思い込んで周りを巻き込んで奮闘しておりますので」

「イシズエは世が世なら役者になれるな」

「無理でございましょう。ご本人は本気でやっておりますので」

「ナルヴィはイシズエが火なら水か」

「はい。努めて冷静に、これまでの陛下なら万が一間違いは

起こされまい。されど皆の事を思えば従うもやむなしかもしれぬ、と」

「まったくなぁ。あの大根に涙を誘われるとか。

やっぱり顔かなぁ役者は」

「ナルヴィ殿は陛下のためなら嘘も真にしてしまいますので」

「怖い事だ。でもまぁ何れ国民による政治体制に移行するにしても

何にしても、議論を交わす為の思いと行動、

その鍔迫り合いの仕方を学ぶ良い機会だ」

「陛下は本当にこの国を統治する事に執着されないのですね」

「ああ嘘偽り無くな。俺と巨人族は共通の敵が居る。

それを倒す為に手を取り合う必要がある。

与えられる前に与える。その方が協力を得やすいと思ってさ」


 ハンゾウは俺の言葉に微笑みながら頷くと、

頭を下げて去っていった。さてさてどうなるか。

俺は少し変装して紛れてみたい気持ちになっている。

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