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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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悪趣味な紙幣で戦の火を灯す

「……なんですこんな早朝から」


 露骨に嫌な顔する臣下が多くて困る。

城へと続く大きく開けた道の両側で

早朝は市が行われている。

 経済に関して具体的な梃入れが出来たのは、

ウルシカと連日つめて話をしてきたことで、

現在徐々に離陸準備に入っている。

その際たるものは、紙幣の発行である。

 それまでの経済は、土地に関して国が管理しており、

それを働きに応じて小麦を配っていた。

具体的には物々交換で、例えばフェメニヤさんの

提案で彼女たちの開発した食べ物を

振舞う店を作った。そこでは支給した小麦を

なるべく押さえめで交換している。

という具合にして回っていた。


 更に他国から人が来るようになり、

塩や布などの各地の名物との交換がされるようになる。

そうなると税金をとる場合物で溢れても困るし、

大型の取引が発生した時、小麦を運んでというのは

大変である。最初ウルシカとはウルシカのフロストで

使われている札で行こうかと話していたが、

俺が以前居た国の話をすると、

ウルシカは目を輝かせて紙幣を作り始めた。


 ウルシカが何故危険を冒して、少数の部下と共に

わが国に単身来たのか。それは閉鎖的なウルシカの

フロストではやりたい事がやれない。その一点だけ

らしい。部下とも話したことがあるが、ウルシカは

向こうでも資産家で、皆止めたらしいがそれを

一笑に付したらしい。そして彼は言った。

これは俺にもよく言う。

”死んで持っていけるものは何一つ無い。

喜びも恨みでさえも、きっと無くなるだろう。

資産も家族も何もかも。だからこそ胸沸き立つ事の為、

笑顔溢れる事にために生きていたい”

 ウルシカの信念を聞いたとき、

ウルシカが王様でも良いような気がしたが、

本人は絶対に無理だと公言している。

俺以上に落ち着かないかららしい。


「俺も落ち着かない性格でね」

「まぁそこにシンパシーを感じてはおりますが、

私より若いとはいえ無理は絶対に駄目ですぞ?」

「経済の安定のためにも、な」

「失礼ながら申し上げますが、

王が今は全ての支柱であり道しるべです。

この流れは歴史の転換と言っても過言ではない。

変わるべきときに変わるべき人が来た。

我ら全てはその流れに一瞬でも遅れたくないのです。

そしてその行き着き先を見てみたい。

命尽きるまで。だからこそここで倒れては困ります」

「分かった。で、紙幣の方はどうかな」

「まぁ元々重い物こそ価値があるという、

昔からの価値観がありますので、

まだ馴染むには時間が掛かるでしょう。

多くのものが市の終了後、城の交換所で

紙幣と小麦を交換して安堵しております」

「造幣所も良いようだ」

「お陰さまで、働き手も多く仕事が出来たことで、

問題なく機能しております。王がご提案下された

方法によって、交換時のチェックも滞りなくされて

おります」

「今のところ犯罪は起きていないか?」

「残念ながら数件起きております。

ただお許し頂いたように、そういうものを

対策チームとして雇用し、抜け道潰しを

しておりますれば、徐々に穴も塞がりましょう」

「そうか、ならデザインを必ず変えるように。

絶対だぞ?」

「……はい」

「何で間があるんだ」

「いえ、まぁ……。その、お年寄りなどは

それを大事に身につけたり、拝むものまでおりまして」

「それが嫌だから止めたのに! 俺はまだ生きてるんだぞ!

気味が悪い! 趣味の悪い金持ちレベルで気持ちが悪い!」


 そう、このウルシカ仕事がとても出来て

客観的に物事を見れることから信頼している。

が、センスが絶望的なのだ。

ウルシカの奥さんと子供にもあった事があるが、

家族ですら嘆いていた。今回紙幣の絵柄に関して

それがもろに出た。控えめに言っても最悪である。

俺は普段実に質素な格好をして歩いているが、

した事も無いような豪華な格好で、決め顔をして

その紙幣に印刷されている。悪趣味にもほどがある。

ウルシカ的には富の象徴ぽくしたとか言ったが、

どうみても嫌味な頭あれな人にしか見えない

風評被害も甚だしい。即刻中止させ、その後

交換にも応じると御触れも出したし、

紙幣の使い方講座とか、講習会でも全て変えた。

そう思っていたのだが、このウルシカは

変なところで頑固を発動させ、俺といたちごっこを

繰り広げている。実に無駄な時間だ。

だがそれと分かっていても止めない。

俺が折れるまでやり続けるつもりだろうが、

俺も諦めたりしないので、顔を見るたびに言っている。


「うちの特産品も増やしたいな」

「そちらはナルヴィ殿やフェメニヤ殿、

エメ殿とリムン殿、そして何より陛下が

直接やっている事業如何によりますでしょうな」

「黒尽くめの里から提供された資料だったり、

種っぽいものもあるから、先ずは回復を優先だけど、

これも時間が掛かる」

「しかし海のものを食すという発想はありませんでした。

あれには皆驚いておりましたぞ?」

「巨人族ってのは不思議だな。これだけ食糧難なら、

何でも食べれるものを探して食べてるのかと思った」

「……プライドが無ければここまで荒廃する事も

無かったでしょうな……。知っているものを食べつくし、

そしてここだけが残った。私は滅びるものと

覚悟しておりましたが」

「随分と諦めが良いな」

「いえいえ、諦めが悪いからこそここに来たのです。

王も私以上に諦めが悪いと見ましたが」

「……今はそうかもしれないな」


 結局歩きながら話して、暫くすると

ウルシカの後ろに用がある人が列を成したので

解散することになった。


「いよいよだな……」


 兵士たちが訓練するのを見ながら呟く。


「ついに動くかい?」


 どこからともなくロキが来た。


「ああ。嫌な事を言うが、

オーディンと戦う気概があって

戦力になる巨人族の決起の為には、

この大陸の安定は不可欠だ。

衣食住の安定。先ずはこの国で

そのシステムと基盤を作って

流れに乗らせた」

「あまり確実な事はいえないけど、

磐石に近いものがあると思うよ。

かなり細かくやったからね君は」

「当然だろう。足元が崩れたら

元も子もない。確実に倒す為に」

「僕の予想以上にやってると思うよ。

正直負けられない気さえしている」

「ロキの力はいざと言うときのために

残しておいてくれよ。俺のほうで出来る事は

やるから」

「……何か想像している事があるのかい?」

「ロキと言えば、って思ったら隠し玉が

切り札が必ずあると思ってさ」

「それが君のためになると?」

「いや、自分のためにだろうな。

それに俺とは正面から殺しあってくれるだろう?」


 ロキは俺を、俺はロキを口元だけ

微笑を持って見て答える。


「君の想像通りに行くのは悔しいから、

手土産を持ってきた」

「情報だけでも十分だが」

「一応ナルヴィや他の連中に人を借りて、

他の領地を回ってきた。そして其々の

フロストの国境近くに見張り台を設置して、

兵も配置してきた」

「助かる。備蓄も保存食も、武器も準備は出来ている。

錬度はキリがないしな。五百人の精鋭は出来た」

「じゃあその為に準備を始めるとしよう」

「ああ。久しぶりに戦場を駆けたい」

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