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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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コウさんぽ

 そうこうしている内に、日曜日が来た。

七日で折り返し作業休みである今日は、

公務員的な立場である者たちも休みである。

割と最近までは街中ものんびりしていて、

見張りも門番も暢気に過ごせる人気の日

であった。が、今は違う。毎日のように

人は行きかう。そしてその為に用意したり

しなければならないこともあったりと、

門番と兵士は完全にシフト制で平日休みを

入れている。週一日は確実に休ませているし

労働時間も管理している。ナルヴィたちにも

厳しく言い渡していた。


「王、お話があります」

「ない」


 ナルヴィのこの切り出し方は

大体お説教だ。三人が圧し掛かるベッドを

出た後、俺はそのまま王の間で事務作業を

始めた。恐らく寝巻きに近い格好についての

文句なのだろう。


「臣下としてご忠言申し上げたき儀がございます」

「分かった善処する」


 そう言うとでかい溜息を吐かれた。なんだよ。


「敢えて申し上げますが、今日は何の日ですか?」

「日曜だ」

「休みでは?」

「門兵を始め事務次官だったり各国の組合長、

そして部隊長も休んではいない」

「彼らは別日で休んでおりますが」

「俺もそうだ」

「それに関してご忠言です」

「だから何の問題があるんだ。小麦の収穫だって

フェメニヤさんとか恵理が、他の人の仕事が無くなるって

言うから仕方なく外れたし、一人で鍛錬しようと思えば

一個中隊が付いて来るから他の時間にしているし。

こっそり事務作業をしてみれば誰か付いてくるし」

「前提として早朝からこそこそと動くのは止めて頂きたい。

貴方が気にするなと言っても我ら臣下は当然気にします。

まだまだ王としての自覚が足りないように思います」

「俺はおべっかを使う奴を重用したつもりはないが」

「おべっかではありません。現役を退いた会社の会長が

財布も持たずにうろつくのと変わりありません。

予定に無い職務が増えます。ご考慮頂きたい」

「俺に自由は無いのか」

「戦略を決める自由はあります」

「え、他には無いの?」

「何を持って自由と思うかは心持次第です。

ただし普通の人とは権利も義務も違うことは

再度自覚して頂きたい」

「分かったよ気を付けますよ」

「……あまりお分かり頂けていないので

はっきり申しますが、休むのも仕事です。

余裕無く動き回られては気を抜く暇が

国民全てにありません。あまり急ぎすぎると

燃え尽きてしまいます。この先長いですし

後に続くもののために残すのが、せっかち

という性質だけでは苦情が後を絶ちませんし、

この先何百年も貴方の名前と落ち着かない行動が

受験生の暗記対象として残りますが宜しいか?」

「そんなところにまで責任は持てないんだーが」

「現在の過労死の可能性をなくす事くらいには

責任は持てましょう?」


 この先の受験生からまで苦情を受けたくは無い。

そして過労死で国を滅ぼしたくも無い。

俺は渋々筆を置き資料を纏めた。

それをナルヴィがとろうとしたが、

お前も休めよと言って引き出しにそっとしまって

鍵を掛けて王の間をでる。

 引きこもりの時を考えたら、百倍じゃ利かなくらい

毎日忙しい。王なので適当な事もいえないので、

其々の専門官に聞いたりして勉強もしている。

体も実のところこっそり隠れて動かしていた。

が、ヨウトはまだしもガンレッドの先読みというか

なんというかが凄すぎて撒きにくくなっているのが

悩みの種でもある。ヨウトは良いのか悪いのか、

一度寝たら目を覚ますのが大変らしく、家の中に

この大陸の犬であるフロストクを三匹飼って対策しているようだ。

ヨウトから請われて小屋を建てたが、

城が嫌になったからではなく、迷惑を掛けるからだった事に

いつものしっかりしたのとは別の一面が見れて驚きだった。

それを思うと朝はもう少し寝ているか……とも考えたが、

あのベッドの混雑からしてそう長い事寝てられない。

いい加減どうにかしてくれと言ってみたものの、

全員から抗議を受けて変わらずに居た。


 暫く屋上から周りを見ていたが、

陽が徐々に高くなり開門の時間になったので、

下へ降りて街を偵察する事にした。

まだ朝飯前だし、皆小麦の作業が

あったりと慌しい。子供たちも寝ている。

ローブを被り、なるべくそれと分からないように

城を出てうろつく。


「おう王様、元気か!」


 分かるらしい。丁度新設した病院を見に行くと、

まだ他の医者が出てきていないのか、

門の前で髭お爺先生が診察していた。


「何してんすかこんな道端で」

「何も何も診察だが」

「今日は日曜だしまだ朝も早いですよ。

ちゃんと寝ないと先生が倒れたら医学が止まりますが」


 そう言うとめっちゃ笑われた。


「そのまま返してやろう。

それにこれもお主が思ってる事だろうが、

その程度で止まるなら何れ止まるもの。捨て置け」


 と言われてニヤッとされた。

……流石人生の先輩。お見通しって訳だ。


「少し話をしても良いかね?」

「診察のお邪魔でなければ」

「寧ろ診察しながらで許して頂けるなら」


 話といっても世間話のようなものだった。

人が増えてきて治安が一時悪化したものの、

すぐさま体制を整えて、良い悪いの線を

明確にしたお陰で街が安定した事や、

その結果病気などを気にするようになり

病院が繁盛している事、黒尽くめの里から

人質として来てもらっているユズヲノさんと

グオンさんが、漢方のようなものを調合し、

更には診断もしてくれるので、その方面の

医学も伸びているしまた学ぶものも増えていて、

髭お爺先生にも余裕が出来ているらしい。


「特にあのエメさんがな、我らの間を

行き来してくれているお陰でたすかっとる。

本来であれば牽制しあっても可笑しくない

関係だったのだが、そんなものはない。

お主もこっそり毎日見に来ているが、

あの娘はハヲノの面倒も見つつ補助もしてくれて

将来有望じゃな」

「……俺の変装はばれやすいんですかね……」

「無理じゃろうな。そういう生き方の

星の元に生まれてない。嫌でも光る」

「そういう生き方をしてきてなかったんですけどね。

一人で部屋に引きこもっていたような人間なんで」

「そりゃいかんな。出るところに出たら

その反動で余計に光る。変装すればするほど

余計に周囲に心配を掛けるで止めたが良いと思うぞ。

友人としての忠告じゃて」


 俺は髭お爺先生の元を後にする。

あの先生が余裕が出来てくれば、

色々見えてくる事もあるし、後進の教育も

捗るだろうし有難い事だ。

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