基盤が固まりつつある中で
「お待たせいたしました!」
勢い良く上がって来たウルシカと
ノウセスは同時に部屋に飛び込んできて、
俺の前に書類を出した。そのまま息を切らせて
二人は席に着く。アシンバも席に着く。
書類に目を通すが、出足が遅れたにも
かかわらず内容は細かく端的に書かれており、
そこから数字で具体的に示したりもしてる。
何より二人とも客観的に書かれているのが良い。
簡単に言えば二人とも自分のフロストは
薦めないという事だった。
ウルシカのフロストはこれまで四つの国の
物を流していた、この大陸の商いの中心地。
ただし俺が出てきたことで、今この地に移動している。
その復権を狙っているようだ。
王様が特に損得で動いており、法があってないような
そんな国らしい。今のところ今までのことがあって
攻め込まれていないが、周りの国からあまり
よく思われていないようだ。しかしそれまで
裕福な国だったため、戦力はうちよりも多い。
ノウセスのフロストは資源も乏しく、
盆地に位置していて、唯一の特産品が塩。
そして塩害も多く、貧困も酷いようだ。
王様は兎に角忍耐の二文字が似合う人らしい。
自分自身も清貧を旨としているようで、
戦力はうちと同等で錬度はうちより圧倒的に上のようだ。
「なるほどね」
「如何されますか陛下」
「そうだなぁ。これを見るとこの国が
どれだけ大地の崩壊に手を貸していたかが
分かる資料だった」
「確かに」
「この国の裕福さに比べて戦力が低く、
裕福な国ではなかったのは、
ウルシカの国によるコントロールが
働いていたという事だな」
「商売が下手、の一言に尽きますな」
「となると商人の集まりを作って、
そこら辺の部分を仕込まないと、
ただ食い物にされるだけだな。
それと他国人への税金は今のところ
二倍のままでも良いが、この先そのままでは
商人が育たないと立場が逆転されるな」
「それに関してはこのウルシカに
お任せいただければ、早急に
先ずは普通の商人にまで育てて見せましょう」
「ウルシカよく言ってくれた。
この件に関してはウルシカにこそ、
手を上げて欲しくて暖めていたんだ。
その手腕を見せてくれ」
「はっ!」
「では改めて俺から三人に提案がある」
先にアシンバと話していた、
其々のフロスト出身者の組合に関して提案した。
三人の気合の入った承諾を得て決定し、
早速この後より始めるとの宣言を得て終了。
「さてさて……」
資料を自分の引き出しに入れた後、
誰も居ない部屋で一人天井を見上げて一息。
恐らくウルシカはチャンスだと捉え、
驚く速さで仕事を目に見える形にしてくるだろう。
そして触れなかったノウセスに関しては、
ノウセスのフロストの団結力を見せる為、
強固な組織を結成、兵に関しても組織し
こちらに面通しをしてくると見ている。
言葉は少ないが、その胸の内は熱く燃えているだろう。
他の二人に負ける気など更々無いという目をしていた。
「すまないがガンレッドとヨウトを呼んでくれ」
「御傍に!」
入り口の親衛隊に声を掛けたら、その横から
二人とも直ぐに飛び出してきた。
「早いな」
「勿論です! 最近置いて行かれる事も
多く、他の方から王に張り付くのが
一番正解だと教わりました!」
鼻息荒いヨウトとそれを笑いながら頷く
ガンレッド。
「悪かったよ。忙しくてどうしても
次々動いてたら置いて言っちゃうんだよなぁ」
「困りますが私たちも王の動きを想定して
置いて行かれないよう頑張ります!」
俺はその心意気を汲んで、
二人に子供たちに関しての提案をする。
「二人を呼んだのは他でもない。
俺の傍付にはしたんだが、是非して欲しいことが
あるんだ」
「なんでしょうか」
「うん。先ずは教科書の内容をナルヴィと
話して決めて欲しい。必ず何かに偏ったり
しては駄目だ。考える力を育てる内容が良い。
法に関しても取り入れて欲しいのと、
言語に関しても多めに学習して欲しい。
そして体を動かす事を忘れないこと。
この後どんな災害が起きても生き抜いていける、
そんな知恵と力を付けられる学校が良い」
二人は一生懸命メモしていた。
「ちなみに一から十まで二人が決める必要は無い。
ナルヴィと図って方針を細かく決め、
数学者、文学者、社会学者、言語学者、科学者に
武術者へ発注、その後出来上がったものを
チェックしてくれ。カンズ、ディセット!
すまないが恵理とリムン、エメさんに
フェメニアさんを呼んできてくれ」
今日の護衛であるカンズとディセットに
頼み、四人も呼んでこの問題について話し合った。
そして方針を伝えこの六人で進めていくことにした。
というのもガンレッドとヨウトにも、
多少責任がある仕事を任せたいと思っていたが、
全てやらせると寝ないでやりそうなので
複数人のプロジェクトに混ぜてみた。
成長と共に仕事も多く振り分けていくことにした。




