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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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北西のフロストとアシンバと

「王には分かっておいでとは思いますが、

それを抜きにしてご判断下さいます様」

「勿論だ。自分が守っている人たちを

置き去りにするには、カグラは拘り過ぎた」


 そう表面上は言っておく。短い間とはいえ、

共に行動した仲間だ。正直言えばアシンバの

言葉が無ければ駆けつけていたところである。

……事情を知っているアシンバには見透かされて

いるんだろうなぁ。それで釘を刺されたっぽい。


「なるほどね……足りない人のところに

足りる人がくるのか」

「そうでしょうか。互いに足りぬところを

補い合えるものが集うのかと」


 横を向くと切れ長の目にほっそりした顎、

端正な顔立ちで涼しく答えるアシンバ。

ナルヴィといいイケメンは出来る人間が

多いと見える。俺に絶対的に足りないもの、

それをナルヴィは補ってくれている。

冷静にそして客観的に見る事がなかなか難しい。

外交においてはアシンバがその役割を

してくれそうだ。


「早速ですが、我が北西のフロストに関して

ご説明申し上げても宜しいでしょうか」

「ああ頼む」


 アシンバの故郷である北西のフロストは、

山岳地帯だ。以前は麓で農作業や商売を

していたようだが、災厄の後は山へ引き

天然の要塞と備蓄を盾に他国の侵略を

許さずに来たらしい。現在は備蓄を

やりくりしながら、山で取れる天然の恵み

そしてそれを元にした栽培をしているようだ。

 また山を背にそして今は本拠地としている

ため、兵士たちは肺活量が多く足腰も強い。

奇襲が兎に角上手いとの事。


「なるほど。攻めるにはかなり熾烈を極めそうだな」

「はい。正直申し上げるなら、土地としての旨みは

全くございません」

「産業は?」

「産業に関していえば、昆虫から採取されるものを

元に、衣類など縫製製品が商いとしてはメインです」

「なるほど……山は寒いしな。それで王様は

どんな人かな」


 俺がそう問うと、言い淀んで止まる。


「言いたくない事は言なくても良い」

「いえ、申し訳ございません。正直そこが一番の

難点でございまして」

「……嫌な予感がするな」

「王の予感が如何様なものか、まだ浅い私には

予測が出来かねますが、我が国は代々女性が

国を統治する国でして……」

「そんな気がした」

「……ですか。その、自愛に満ちた方では

あるのですが、この苦しい現状と加齢もあり、

私も母で苦労していた次第でして……」

「みなまで言わんでも良い。なるほど

それでカグラは意固地になっているのか」

「……恐れながら」


 そらぁロキもキレるわ。この大事に

女性同士の維持の張り合いもあるなんて、

面倒この上ないわな。


「となると無理に攻めたところで

泥沼。最後の一兵になるまで戦う羽目に

なりそうだな」

「はい。老若男女全てが兵として機能しますので」

「なら様子を伺いつつ、手立てを模索していくが

良いか。そういう面を知っておくだけでも、

使者が来たとき対応し易いし助かる」

「我が国の事故。王にはなるべく冷静な

ご判断をして頂きたくご進言致しました」


 俺は資料に目を通すが、アシンバの端的な説明を

しっかり細くする数字などが盛り込まれていて、

把握できた。


「ある程度は掴めた。それとは別にアシンバに

相談がある」

「私で宜しければ」

「うん。実は三人を主導として、

其々の国出身者の寄り合いというか組合を

作りたいんだ」

「無用な混乱を避けるために御座いますね?」

「恐らく俺より三人の方が感じているだろうが、

あくまでもこの国は俺の民の国だ。

お前たち三人は新参者であり、他国出身者は

言うまでも無く得体の知れない余所者。

人種は同じでも、知らぬ身内より知る隣人。

どちらも怖いが、知らぬ身内は性質が悪い。

知らぬが故に在らぬ事を想像し、それを増幅させ、

憎悪の対象ともなりかねん」

「底が見えなさそうで見えそうな、財源を

横から奪い取る、旨みのみを得ようとする

害虫に見えなくも無い」

「言い方が直接的ではあるがその通りだ。

それは内乱の火種になる。俺としては

この国の代表としてどちらを優先し

裁くかは明白だ。正直な話他国出身者を

俺が優遇して良い事は何一つ無い。

この国の安定、そして民意を汲めば

悩む事なく処断する。だがそこに俺の目的は無い」

「はい。そこで我々が主導して

其々の国の出身者を集め組織するのですな」

「言い方は悪いが管理してもらい、

この国の人間に誠意を見せるため、

禁を犯したものをいち早く処断してもらいたい。

その方が困り事も相談し易いだろうし、

孤立する事もなくなるだろう。

いずれ溶け合うものだとしても、

今の状況下ではせざるを得ない。

かといって迫害を奨励する事も無い。

子供たちが居れば同じ場所で同じ事を学んでもらう。

ただそれが一つになるまで、子供たちの成長と

同じだけの時間がかかる」

「自分の身は自分で守る、ですな」

「そう言う事だな。兵士としても我が軍の一員に

なってもらうが、前からも後ろからも刃を突きつけられた

状態で戦場に出るなど、それこそ反乱の火種になりかねん」

「分かりました。他の二人とも相談し、

そのように致します」

「頼む」


 表向きはそんな感じである。

ぶっちゃけて言うなら、完全に押さえ込むことは

難しいだろう。ただその時にこそ

其々の姿勢や真価が問われる。

俺としてはこの三人の動きを見て、

この大地の逼迫した状況より

生まれ故郷を優先するようなら、

それはそれで相応しい位置に置いたまま、

監視の目を強める。

が、管理運営が出来統率が取れれば、

ここから更に格上げをしたい。

 出来れば三人とも上手く機能させてほしい。

俺の狙いとしては外交もそうだが、

戦術戦略部門としての

総合的なものにしたいと考えている。

現在の戦略は俺が勿論メインだが、ロキとナルヴィ、

エメさんを通してのユグさん、

恵理とリムンで詰めている。

ただ最近は其々の部署の事情も絡んでいるので、

なかなか難しくもなっている。個人的にはそこにも

梃入れをしたいが、もう少しかかりそうだ。

そこでその補足というか補助で

この三人を入れたいとも考えている。

この大地を広く見るなら

其々の国の人材は必要不可欠だ。

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