栄える都市に群がる人と事象
それから日々は過ぎていく。
内政担当官たちによる整備も
少ない人数ながら良くやってくれていて、
大分形になってきた。
その証拠に今うちの城下町には、
色々な物が溢れている。
この事態の発生でユズヲノと共に
先頭に立ち、出入りする人員を
厳しくチェックする。また特徴や
持ち込んだものなどを
記して残しておく。
また髭お爺先生やエメさんに
薬物についての講義を、門兵たちに
してもらっていた。特に幻覚系のものは
疲れや辛さから逃げたいために、
使う者もいるかもしれない。
それが流行って当たり前になってしまえば、
国力を弱らされてしまう。破滅へ一直線だ。
懲罰は即施行し、厳正に処罰した。
例え一度でも持ち込んだり使用したものに
関しては、情け容赦なく処断した。
そして皆にも周知するよう徹底する。
こればかりは知らなかったでは済まされない。
髭お爺先生とエメさんとも話したが、
嵌れば抜けられない事は確定だった。
患者が居て会わせて貰ったが、抜け殻のように
なっていた。多少改善してもその薬物への誘惑が、
完全に消えることは無いとの事。
俺の時代に関してはこの件は徹底して駆逐する事を
宣言しておいた。厳罰にも処す事、情状酌量しない事も。
また意図的に処方され、直ぐに医者に駆け込んだもので、
何とか抗い戦い続ける人たちには、その危険性を
訴えて貰うために市場で公演を開いて貰っている。
「賑やかなのは良いがなぁ」
こちらが整う前に襲撃された気分だ。
まぁうちが豊饒の土地を持っているのは、
俺以前から周知されていた事だった。
勿論俺たちもそれを踏まえた上で、
急ピッチで法などの施行や整備を整えてきた。
が、俺も言っていたように施行してみないと
その穴が分からない。皆死に物狂いで来るので、
思わない手で攻めてくる事もある。
俺の不手際もあるが、そこはそれだ。
あまりにも悪質なものに関しては即決で処断していく。
顔や性格など細々と記した後、罪状を読み上げて
兵士と共に市中を歩かせ、外へ出す。
二度と我が国に入る事は許されない。
これに関してもかなり効果があった。
先にも書いたように、この国が一番豊穣の恩恵を
受けているのだ。言わばここで生きていけることは、
生命をある程度保証されるに等しい。
そこへの入国が二度と許されないという事は、
絶望に等しいようだ。
「いたちごっこでもあるしなぁ」
犯したものを探しては追いかけ捕まえ。
親衛隊に兵士を配置し、憲兵のような事を
してもらっている。
本来であれば軍の指揮を磨いて欲しい所ではあるが。
組織が巨大化すると下が見えなくなる。
その為に各長に関しては、俺の意図を汲めるものや
誠実である者を配置している。
人が二人居ればもう問題は出てくる。
それに関して意見を求められ相談に乗る。
俺元引き篭もりなのになぁ。
言ってて俺に突き刺さる事が多すぎる。
ただそう言った事をまとめて置き、
どういう状態で発生するのか、
期間はどれ位なのかなどを書き留めておく。
するとズレは勿論あるが、ある程度心構えや
事前対策が出来てくるので、気をそんなに揉まなくて
済んでいる。
「王、黄昏てる場合ではありません」
「分かってるよ。で、次は何だっけ?」
「お疲れのようですね」
「今は建国したレベルだからな。
皆忙しいだろ」
「精神的に参っているのではないかと。
最近は心労が絶えない様に思いますので」
「仕方ない。それだけ頼りにされてるんだからな」
「頼りにされてるレベルではありません。
全てにおいて支柱であります。
この絶え間なく流れる全ての事に対して、
止まる事無く流しておられるのです。
特に善悪の境を明確にし指針を示した事で
曖昧さによって迷う事がなくなり、
普通に暮らす人々にとってはすごし易くなりましょう」
「で、後どれ位で行けそうかな」
「王はどうお考えで?」
「偵察の帰りを待って情報を整理しだい、
即出陣したい」
「分かりました。それにしても宜しいのですか?」
「宜しいだろう。前渡ししたのは
意地が悪いとも思うが、後方の安全は確保するに
越した事はないし」
偵察に出ている黒尽くめの里に関して、
イシズエに話を聞いて里を長の妻と娘と共に
訪れ、仕事の前渡しとして食料を渡し、
食事を振舞ってきた。更にグオンという老人が
長の妻と娘の世話役に申し出てきたので、
条件を付けて了承した。その条件とは、
密偵としての情報ではなく、
生きていく上で得た薬草などの知識を使い、
髭お爺先生とエメさんと話し合って採取してもらい
講演をしてもらう事だ。
二つ返事で了承を得、長代行の者とも話し、
里での薬の調合などを依頼。それを長にも伝えるよう
言っておいた。
「あまり他の里に突っ込みすぎると、
心労が増えますぞ?」
「仕方ない。ただ安心して帰ってこれるとしれば、
奮起してくれるかもしれんし」
「試してみるだけの価値はあるかもしれませんな」
「まぁ薬草の知識はあったけど、
調合の知識を得られた事、そして量産も整った事で
髭お爺先生たちの効率も上がったし、
何より病人の症状改善が早くなった。
それによって生産性もあがったし」
「そうなるとますます都市は忙しくなりますな」
「面接だけでそれぞれの部署の長たちは大変だな」
「やはり我々が最初は受け持ちますか」
「そうだなぁ。皆自分の仕事を優先してもらいたい。
俺たちで面接して纏めて各長たちとの話を通して
採用かどうか決めよう。面接する事にまで
気を割いていたら大変だ」
こうして俺とナルヴィで応募してきた者たちと
朝から面談をし、それを各長たちとの会議で
上げて採用の判断をする仕組みを作った。
ここから例の畑を含んだ城壁の拡大事業、
そして海産物の採取と大地再生に取り掛かる
人員を得る事が出来た。




