流れる日々の合間に
その日は何事も無く終了した。
ヨウトもこの日は流れを覚えようと
必死に見ていた。ので俺から
紙と墨つぼと筆を上げた。
ここで凄いなぁと思ったのは、
ところかまわずメモしない点だ。
紙もタダではない。工程は割愛するが
作るのも大変だ。それを知ってかしらずか
暫くして必要なら俺の目を盗んでメモしていた。
食事も丁寧にそして美味しそうに食べている。
手を組んで頭を下げるなど、
感謝する気持ちも忘れていない。
「ヨウトのご両親は厳しいだろうけど、
愛されているんだなぁ」
とボソッと言うと、照れくさそうに笑った。
俺は羨ましいと思いつつも、預かったからには
なるべく力になろうと、就寝前にメモをチェック。
大まかな流れを書きつつ、それ以外は
細かな点や気付いた点がメモしてあり、
良い感じである。
兵をどやして回っていたわりには謙虚である。
ヨウトの寝床はガンレッドに言って客間の一つを
使わせた。本人は野宿でとか言ったが、
俺が悪い王様になっても良いのかと聞くと
渋々従った。本人は図書室を希望していたが、
即却下した。どうせ寝ないつもりなのは予想がついた。
鍵は役職者にのみ持たせ、年少者は不許可としている。
これはガンレッドに対しての対策でもある。
寝るのも仕事。特にこんな時代で寝れる時は
仕事だと言いつけてでも寝させないと、いずれ寝れない
時がくるかもしれないのだから。
「城壁の方は良いようだ」
「はっ」
「で、例の矢倉車に関してはどうだ?」
「はい。王の提案頂いたのを参考に、
各組で改造しつつ作業しております」
日々は過ぎていく。三週間目になると、
それまで痛んでいた部分や破損部分、
脆い部分を修理できていた。
修理していた兵たちに、矢倉車の
締め切りを聞かれた。
「締め切りは無い。良いと思えばいつでも
もって来てくれ」
「良いんですかい?」
「勿論。城の修理はもとより、篭城する時にも
ああいうものがあれば役に立つし、
もっと別のものに利用できる案があれば
積極的に採用する。ただそろそろ一期生チームを
立ち上げて、開発部門を新設したいと思っている。
急いだが良い」
これに活気立つ者も居た。
ただ兵士は兵士で鍛錬もしなければならない。
イシズエとオンルリオによれば、
隊列を組んで支持や合図に従い動く事の
初歩は出来てきているようだ。
だがまだ難しい動きは無理との事。
いずれは太鼓などの合図で動きを変えられるように
したい。各隊一人以上合図係りも置く。
内政部門においてはナルヴィが
新任の十人と会議をしつつ修正案を出してきている。
ただ概ね問題ないので、施行後修正し続ける
しかないので了承しておく。
更にあの髭おじいの先生から、
家族構成や身長体重年齢性別が送られてくる。
ここから見るに、どうも男の子が多い。
バランスが崩れるほどでもないが気になる点だ。
これに関して効果のほどは定かではないが、
俺が女性の働きを褒めたり、女の子が元気な事も
国の豊かさにとって大事だといったりと、
なるべく男尊女卑、女尊男卑にならないよう、
俺が気にしているというのが分かるようにする。
そしてフェメニヤさんを始め、恵理とリムンに
エメさんにも役職を与えて分かりやすく
外へ示したりもした。
「たのもぉおおおお!」
大体午後になると、こういう声が耳に届く事がある。
こないだの戦闘での俺の戦いが知れるのに、
大体二週間位必要らしい。これはこの大陸の流布の
速度が分かって良い事だ。が、腕試しが多くて困る。
「王、いい加減にされますよう」
暫くは受けて立っていたものの、ついにナルヴィの
お説教が入ったので終了になった表向きは。
個人的にはあれな人が多く、自分がどの国の誰なのか
名乗ってくるので、その国の影が見えて良い。
俺自身が肌で触れることで分かる事もあった。
「良いなぁ実に良い」
俺は就寝前に一人思うことや知ったことを
纏めている。まだまだおぼろげながら、
他の三国が存在している事が分かってきた。
ただカグラやショウが見えてこないのが
気になるところだ。
「王、夜分失礼致します」
ナルヴィとイシズエ、オンルリオが入ってきた。
「何か火急の用向きかな」
「はい。門の前に人だかりが」
「攻めてきたのか?」
「どうしても王に謁見したいと申しております」
「難しい話だな。急襲でもないのに寝静まった
この時間に門を開くと余計な心配をさせて
城内も騒がしくなる」
「はい。本来なら追い払うところではございますが、
此度は王のご判断を仰ぎたく」
「敵国からの使者なら追い返せ。
それ以外なら話を門の前で聞く」
この夜寝静まった状態で使者であれ
敵国の兵を中へ通せば、こっちの内情が知れるし、
身軽なものであれば潜める。かといって
使者を門前で対応するのも不味い。
「ならばお出まし頂きたく思います」
「分かった。ガンレッドとヨウトには
声を掛けなくて良い。二人も今は夢の中で仕事中だ」
そう言うとナルヴィは何か言いたそうだったが、
何も言わずに俺に付いてくる。




