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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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絢爛絶技

 小言が終わり一日も終わる。

暫くは大きな動きも無く、

人材の発掘や器具の開発、

城壁の修理や兵士の鍛錬、

治水の状況などなどを見ていた。

そして更に二週間ほどして

いつも通り小麦の収穫に精を出していた、

ある日の朝。


「王、お下がりを」


 ナルヴィの声にただならぬ感じがした。

顔を上げると砂煙。軍だな。


「皆、城へ下がれ!殿は俺がする!」

「何をおっしゃる王よ!」

「そうです、私やオンルリオにお任せを!」

「いや、お前たちはこの国にとって必要な

者たちだ。まだ歪ながら、元となる形は

示したし、俺に何かあってもそれを使えば

大分マシになる」


 俺は両手を天へ向けて突き上げる。

その手のひらに俺の相棒二振りが

左右に収まった。


「何より丸腰で何が出来る。

さ、早く行け。収穫した小麦が無駄になる」


 そう言っても下がらない三人とフェメニヤさん。


「分かったはっきり言おう。

弱いやつは下がれ。丸腰ほど無駄なものはない。

死ぬことこそ今はこの大地に対する不敬そのものだ」


 俺は背中と左腰其々に鞘に収まった相棒たちを

付けて砂煙へと歩いていく。今までとは違う状況での

殿は、緊張感がまるで違っていた。自分が居なくなっても

良いようになって欲しいが、きっとまだ難しいだろう。

俺が居るからこそやってる部分もある。

そう言う事を思えば是が非でも生き残らなければならない。

ガンレッドのような子たちが、自由闊達に振舞える未来を

作る為の一端を担っているのだから。


「見つけたぞ!」


 砂煙を上げて来た連中は俺を見つけたようだ。


「そう。まだこんなところで倒れるわけにはいかない。

この地を蘇らせた上で、オーディンと戦い勝つその日まで」


 一歩ずつ歩くたびに、地面の底から俺の気を通して、

星力が送られてくる。


「どうか我が絢爛絶技、照覧あれ」


 俺は黒隕剣、黒刻剣(ダークルーンソード)を引き抜き、

速度を徐々に上げて砂煙へ突き進む。


「あ、あやつだ!捕らえろ!」


 聞いた事があった声だ。ならば遠慮は無用!

俺は一気に間合いをつめ、馬上に居たその声の主を、

胴から真っ二つに切り離す。

そしてその周りに居た偉そうな鎧を着た者たちも

体を捻りながら形を問わず切り伏せていく。

一頭の馬が俺の傍にて顔を覗き込む。

俺は迷わずその背に乗ると、


「一度ならず二度までも、良くぞ我が畑

母なる大地の恵みを荒らしたな下郎共!

その意味を知るものやあるか!」


 俺の怒号に馬は前足を上げ嘶く。

そして着地すると鼻息荒く周りを回り始めた。


「そうか。覚悟あってのことなら最早語るべき事も無し」


 俺は星力を相棒たちに更に注ぎ込み纏う。


「お前たちを一人残らずこの大地の糧とする。

大地へと帰るが良い。死後のお前たちに幸あらん事を」


 馬の腹を足で軽く蹴ると、馬は呼応し速度を上げた。

脅しだがこれだけでも少しは効くだろう。

殺さずを誓ってるわけでもないので、必要な芽は摘む。

だけどそれ以上は必要ない。なんならこの中から

優秀な人材が現れる可能性もあるのだから。


「いけっ!」

 

 相棒二振りを投げ放つ。なるべく鎧を確実に斬るように

念じながら暴れさせる。馬を走らせながら、兵の数を確認した。

二百以上居る。連合軍か?


「と、止めろ!」


 その声に馬が反応した。高く飛び上がる。

その下では矢が刺さり、煙を上げている。

視界をその方向へ向けると、昨日の一味ぽい者もいた。

そうか。なら仕方ない。


黒刻剣(ダークルーンソード)!」


 俺は相棒の名を呼ぶと、左手に戻ってきた。

黒隕剣も一旦戻って旋回したものの、また飛んで

行ってくれた。


「いくぞぉおおおおああああ!」


 星力を通して次々に鎧や武器を破壊していく。

段々後退したことで、小麦への被害が抑えられたが、

それでも小麦が馬や人の足によって踏みつけられている。


「消えうせろ!」


 憤怒を持って上級大将ぽい全身鎧も叩き斬る。

昨日の暗殺者の一味も同様に。

特に暗殺者一味はこないだの件の後だから、

同情の余地無し。


「あ、あああああ!」


 一人の兵士の錯乱した声と共に戦場は乱れる。

指揮を執ろうとする者も居たが、狂乱状態に

陥った兵士を統率出来るほどの信頼は無いようだ。


「ならば用も無し」


 指揮を執ろうとしているものを確実に処理して行く。

我先に逃げるものを追い討ちなんて、悪趣味も

甚だしい。が、今は一瞬でも多く俺の国には

戦争をしない時間が必要だ。無事に逃がすのは少数で良い。

俺の武威も知られるだろう。


「お許しを!」

「俺だって言われて!」

「家族が!」


 口々に勝手なことを言う。

お前たちは言われただけで人を殺すのか。

家族が居るから助けて欲しいと、お前たちが

攻め込んだ先で言われたら助けるのか……。


 戦争は何も生まないというが、

昔の戦争は生んだかもしれない。

人の浅ましさを、この生死の境の場所ですら

覚悟の後ですら相手に強いろうとしていたことを

負けたら無かったことにしてもらおうという

身勝手さを知る事になるのだから。


「オーディンは、それをコントロールしようと

しているのかもしれないな……」


 俺は斬り伏せながら、最後の敵に思いを馳せる。

そう考えるとオーディンはロマンチストの極地に

居るのかもしれないな。

戻ってきた黒隕剣を右手に収めた後、

相棒たちを鞘に収め天を仰ぎ見る。


「王!コウ王はご無事か!」


 ナルヴィの声で我に返る。

気付けば回りには負傷兵の山。

そしてそれよりは少数の犠牲者。


「問題無い」

「追撃を」

「必要無い。必要な分は俺が追い撃ちしておいた。

一般兵をこれ以上小突いてもな」

「ですが禍根を残しましょう」

「そうだな。命を救われて恨みを持つようなら、

次は確実に処理する」


 俺の声に負傷者達は傷を抱えながら後ずさる。


「どうしますか?」

「何もせずで良い。……お前たち敗残兵に

言っておく。好きにしろ。だが傷は他で癒せ。

前にも行ったが、俺は才を求めている。

我こそはと思うものがあれば、傷を癒して来るといい」


 俺は馬の腹を蹴って城へと向ける。

俺とナルヴィから離れたところに、

イシズエとオンルリオが率いてきていた

兵が居る。


「も、申し訳ございません」

「いや、それより悪いなお前たちの手柄を取って。

まぁ見ての通り生かしすぎたが、

それでも血に染まって怨念の場所になるよりは

良いだろう」

「何処か近くへ埋めましょうか」

「それより負傷兵に持っていかせよう。

彼らにも家族が居るはずだ。死者まで冒涜する

気は無い」


 兵士たちの中を進んでいく。

自然と道が開いたが、皆目を丸くしていた。

まぁそうだよな。大軍を相手に一人で、

しかも大半を生かしたままにすれば、

化け物だと思われても仕方ない。

これも考えなくてはならない。

俺も全知全能ではないから、

これがどのような効果を生むかは

予想できない。

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