表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

357/570

散歩という名の調査

 エメさんと一緒に城の裏手から外へ出る。

一応恵理とフェメニヤさんに声を掛けた。


「イシズエ大丈夫か?」


 俺は後ろを歩くイシズエに声を掛ける。

最初は平坦な小麦畑の中の舗装された道を

歩くだけだったが、段々曲がりくねり

坂になってそれを上がり始めた。

 俺もエメさんも鎧を着ていないが、

イシズエは着ていた。しかも少し息が

上がっている。俺の言葉に頷く。


「ここ」


 暫く坂道を行くと次第にそれは

山道となって、登山ぽくなっていた。

俺にとっては良いトレーニングになったが、

イシズエは辛そうだ。手を貸してなんとか

上にたどり着くと、そこはまた見晴らしの良い

場所だった。


「案外遠くないんだな」

「そう。お母様から海が近いかもって

聞いてたから昨日散歩してみた」

「なるほど。これは良い」

「良い?」

「ああ。大収穫だ。エメさん良くやってくれた」


 俺がエメさんを見つつ、

腕を組みつつ笑顔で頷くと、顔を横へ向けて

しまった。俺の顔変なのだろうか……。


「だ、大収穫とはなんでしょう……」

「ん?ああ、今見た限りこの先を

仕切っている者が見当たらない。

塩害とかもあるからだろうか。

兎に角戦闘の必要がないのがデカイ。

本拠地の安定が第一だが、出来れば

こっちにも人を割いて研究をしたいな」

「賛成」


 それから少し休みを取った後、

俺たちは城へ戻る。裏門には

ナルヴィがエライ怖い顔をして

待ち構えており、クドクド言われる。

イシズエはぐったりして、俺は

小言が終わった後フェメニヤさんに言って

休ませた。

 

 こうしてある程度の方針や

やる事が決まり少しの間波はなく過ぎる。

俺は一人暇して座っているのは

どうしても出来ず、身軽なのを良いことに

色々見て回った。見るべき点のある者には

自分用のメモ帳に名前を記し、

こそっと声を掛けたりもした。


「今日は何処へ行かれるのですか?」


 日課のこっそり行動中声を掛けられる。


「ガンレッドか。いやなに日課の散歩だ」

「存じております」

「そうか。ガンレッドはどこに?」

「散歩です」


 受け答えと表情、身のこなしからして、

俺みたいなのと違い良い家に生まれたのが

分かる。このガンレッドは最初に散歩に出た際、

終始俺に付いて来た年少者だ。特に突っ込まず

ただジッと俺を見て付いてきている。

撒こうと動いてみたが、あっという間に見つかった。

ので今日諦める事にした。


「どうですか御成果は」

「見るもの全てが新しくて良いよ」

「街の様子は如何ですか?」

「こう言っては何だが、意外に治水がしっかりしていて

疫病は大丈夫のようだ」

「飢えもありますが、私たちもそれなりに

改善するためにやってきましたから」


 ハキハキと答えるガンレッド。

頭良さそうで何より。俺は少し卑屈になった自分を

心の中で宥め、ガンレッドと共に移動する。


「あ、王!こちらですか!」


 イシズエの声が飛んでくる。

一瞬隠れようとしたが、ガンレッドにマントを掴まれる。


「お戻りを。昼食で御座います」

「ああそうか……」


 ついつい見て回るのが忙しくて忘れてた。

俺が居ないと皆食べられないから、

帰るよう言われてたんだ。


「ガンレッド、お前も一緒に居たのか」

「はい。王が安全でありひょうきんな方で

ある事は、私がご一緒していれば分かるかと

思いまして」


 そう言うガンレッドにやれやれと言った

顔のイシズエ。流石のイシズエも聡明な

ガンレッドには手を焼くようだ。

それから俺は昼食に戻るが、

午後も城や城下を見て回る。

最近では動きが分からないとボヤかれるが、

その方が都合が良い事もある。

仰々しく視察なんてやって身構えられても、

それは日常の姿ではない。それでは見えない

ものもある。

 これを暫くやっていると困ったこともある。

ガンレッド以外にも子供が付いてくる事だ。

追い払うわけにも行かず、鬼ごっこなどをして

何とかお昼寝状態まで持っていこうと奮闘する。

たまにあの白髭のお医者さんに怒られたりもした。

ガンレッド曰く、厳格な姿などは皆知っているので、

そういった部分も知れて良かった、らしい。

またナルヴィに威厳がーとか言われるなぁと

ボヤいたが、ガンレッドは


「ナルヴィ殿はそんな事は言いませんよ。

常時張り詰めてても緩んでても駄目で、

欲を言えば柔軟で水のように居るのが

理想ではないでしょうか。なので喜ぶかもしれません」


 と言った。俺の保護者のようだ。

城へ帰還して自分のメモ帳を更に自分用の

ノートへ書き写し注釈していると、

ナルヴィが来て案の定チクチクしてきたので、

ガンレッドの言葉をそのまま告げると


「その子供、なかなかですな」


 と言い残して去っていった。

やるなガンレッド。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ