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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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人は育てるもの

 そこから再提出された三交代の

シフトがあったのでチェックする。

今はどうしても無理をしてもらわなければ

ならない。寝床であり自分の部屋のような

ものであるこの城を万全にしなければ、

安らぐ場も無い。何れは塀を拡大し、

畑も入れた範囲にする案を、二人に伝える。

自給自足が出来る堅固な要塞。

地下にユグさんが居るとはいえ、

出来ればユグさんを含めてガードしたい。

更に言えば屋根的なものを張りたい。

水の管理も徹底したい。


「あー誰か文官が欲しい……」


 俺はイシズエとオンルリオの二人を、

城壁の修理や見張りの方の見回りに

行かせると、玉座ではなく来客用の

椅子に座って嘆いた。


「欲しいのかい?文官」


 もうロキが何処から来ようが、

多少驚く程度で済んでる辺り

慣れは怖い。

 背後から声を掛けられたが


「ああ。正直ここの皆から取り立てようかと

考えたが、恐らく王族でもない限り、

生きていくのが精一杯だ。

学校なんてものがあるのかも解らない」

「正直言うとそういうのは前はあった。

ただしこの大地がこんなになる前だけど」

「だろうな。そんな余裕が今は大人にないしな。

教育の義務だけは必ず入れたい」


 正直子供が見当たらないのは、

恐らく俺の出方を見ているからだろう。

俺も無理にそれを要求したりはしない。

彼らの判断は正しい。子供は人質として

かなり大きなものになる。

 直感で良し悪しを判断している。

豊かになれば何故そうなのかも含めて

考えることが出来るようになる。

貧困は全てを奪う。正しいことや

他人を気遣う心でさえも。


「兎に角今は歌って踊れる文官くらい

元気なのが欲しい。口だけなら要らんけど、

事務処理能力が欲しい。……欲しいものだらけだ」

「まぁある程度は育てるしかない。

どこかの国じゃあるまいし、

新しい人材を取りはするが育てない、

育てる余裕を下に与えない、

即戦力じゃなきゃ自分の国の人すら

人権がないなんて馬鹿げてる。

無から有が勝手に生まれるわけは無い」

「……俺への慰めか?それとも戒めか?」

「普通の話だ。当たり前だ。

人間が最初から火を起こし電気を使って

生活してたわけが無いだろ?

いつしか皆”当たり前”になっている」

「当たり前になった時が、それがなくなった時が

一番大変なんだよなぁ」

「自然は人間の”当たり前”に付き合わないからね。

神も然りだ」

「……取りあえず俺としては野武士の集団を

武田騎馬軍を目指して鍛えますかね」

「文官に関しては直ぐに。

育てるにしたって育てる人間が居なきゃ

話にならない」

「ラハム様とかほしいなぁ」

「ダメだよ。あっちもあっちで忙しい」


 そりゃそうか。俺はロキに頼むと告げて、

少しだけ目を瞑る。欲しい物だらけで

頭が埋まりそうなのを、一旦頭の机から下ろす。

今ある人材で早めに整えないと。

 前線は俺を筆頭にオンルリオそしてイシズエも

補佐としていてくれる。問題は後方だ。

補給線の管理そして物資の管理。

後詰の整理。領地の安定と防衛。

それらを指揮する人間が要る。

正直武田騎馬軍ほど統率が取れてくれば、

俺がわざわざ皆の手柄を横取りするように

前線にでる必要は無くなる。

 その為の軍律かぁ……。

ラーメンの知識だったり歴史の知識だったり

があっても、そっから先の知識が乏しい。

だけどやらなくちゃなおっさんだし。

最早実地から、やってみて学ぶしかない。

 それと後で精巧な地図を

作成してもらわないと……。

戦略を立てて戦術をクリアしていかないと。

防戦一方じゃ疲弊してくだけだし。


「困りごとしかない……」

「どうやら私のお役に立てる場面のようですな」


 俺がその声に振り返ると、

ブラウンのフルフェイスの鎧に身を包んだ

騎士が立っていた。


「よぉ……久しぶりだな」

「はい。私はあくまでも父上の命令で動いて

いましたので、いつでも来れました。

漸く不本意な任務も終えましたので

最速で帰還いたしました」


 フルフェイスのメットを取ると、

現れる海外ドラマのイケメン俳優のような人物。

ブロンドの髪を靡かせ、顔の紋様は

心なしか薄く見える。


「ナルヴィは相変わらずだな」

「いえ、とんでもございません」


 そう言うと俺の前まで足早に来て、

右膝を立て左膝を地面につけると、

深々と頭を下げた。


「おいおい……」

「コウ殿……いや王よ、我が王よ!

ついに、ついにそうお呼びすることが叶い、

また覚悟を決めてくださったこと、

望外の幸福にこのナルヴィめは満たされております!

また我が身を至急ご所望という

あまりの光栄さに身が消えんばかりでございます!

ああ王よ我が王よコウ王よ!

我が身我が命我が魂は、コウ王のみの為に

例え世界が滅びようとも御傍に侍り戦い続ける所存に

御座いまする!」

「うるっさいし長い……三行で頼むわ」

「ああ王!我が王!コウ王!」

「……馬鹿にしてんのか?」

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