一難去って
「馬鹿を抜かせ!貴様なぞに膝を屈するなど
我が誇りが許さぬ!」
「解った。……兵士諸君!美味しいものを
食べたくは無いか!」
俺がデカイ声で叫んだ後、
後ろの皆も呼応して叫ぶ。
後ろを見るとロキが指揮してくれたようだ。
その声に後方は静まり返る。
「兵士諸君、我々は君たちを欲している。
君たちが万全なら、敵に対し護ることも
攻めることも容易。勇猛果敢にして
最強の巨人族。この大地を蘇らせ
子供や妻を幸せにするために、
巨人族を反映する為には、
偉そうにする人物より君たちをこそ
我々は欲している!
我が軍は再編中だ。才ある者は
その才により歩兵より上がれる。
また食事も新たなものを考案中である!」
その声にヒソヒソ始まる兵士たち。
「そうだそうだ!オラァ今王様が
提案したものを更に良くして開発して、
歩兵から物作りのリーダーになる為に
一所懸命やってる!」
「俺もだ!」
「そう、俺の提案を超えるものを
作ったものにはその責任者を任せる
コンテストもやっている!伸し上がるなら、
手柄を立てるならどちらが良い!」
俺は後ろからの声に呼応し、
両手を広げ声を張り上げ煽る。
後方からは歓喜の声が飛んできた。
「だ、黙れ世迷いごとを!」
「貴方たちは逃げるなりなんなりすると
良い。その首を取らないことが、
俺の前の王まで忠節を尽くした事への
礼だ。次に会った時はもう容赦はしないし
降伏も受け入れない」
俺がそう宣言するとイシズエが
頭を横で下げた。その後にオンルリオも。
二人の気持ちを汲んでここは逃がす。
「良かろう、次は戦場で会うぞ!
皆のもの、領地へ戻るぞ!」
歩兵を掻き分けて将軍と幕僚は
引いた。
「皆、今は引いても構わない。
時間はある。家族を連れてきても良い。
我こそはと思うものは我が元に集ってくれ。
心より待っている」
俺はそう歩兵たちに声を掛けて一礼する。
それに呼応して皆も一礼した。
動揺する相手の歩兵たち。中には小隊長のような
ものが、家族も領地に居るから一旦戻るぞ、
と促していた。
ただそれでも戻らないものも居る。
聞くと家族が居ない者らしい。
俺は彼らを受け入れ、先ずは食事を取らせた。
そして後のことは一旦オンルリオとロキに
任せる。一難さってまた一難には当然なる。
女性陣には引き続き食事の改良を頼み、
帰順してくれた兵士を含め、
兵たち全員を中庭に集める。
「恐らくここから更に残りも、
あの将軍の伝達などでこの状況を知り、
攻めてくることもある。ただ相手も
出方を考えてくるだろうから、
先ずは矢倉の提案を頼む。
それと同時に新たに来た者たちも
コンテストに参加してくれても良いし、
またこれから城壁の修復や補強で
見るべきものがあれば、指揮を任せたい。
先ずは補修隊長、何れは守備隊長をと
考えている」
俺が一通り喋り終わると、
ざわつく。
「才があれば王は地位を与えてくださる。
それがどんなものであってもだ」
イシズエの声に歓声が上がる。
更に明確な役職が見えた事で、
テンションも上がったようだ。
「じゃあ皆、早速作業に取り掛かってくれ。
後夜の見張りなどはオンルリオ、君に任せても
構わないか?」
「じ、自分でありますか!?」
オドオドし始めたオンルリオ。
どうしたんだべ。
「そうだ。親衛隊長として俺と現場の繋ぎを
頼む。其々の役職が決まれば、またそれは
違うかもしれないが、今はオンルリオに頼みたい」
「は、は!」
敬礼した後に頭を下げるめちゃめちゃな
オンルリオ。それに周りの兵士も笑いながらも
高揚していた。
「良いと思ったものは積極的に役職に就ける。
時間があるようでないぞ?」
俺の言葉に皆は足早に散っていく。
固まるオンルリオの肩に手を置き
「オンルリオ、あともう一つ。
中から腕の立つもので
今この流れに乗る気が満々なものを、
十人集めてくれ」
「は、はい!」
「イシズエ、この城で一番良い鎧兜を
十用意できるか?」
「直ぐに」
二人も足早に去っていく。




