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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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 矢倉の修理や壁の修理に梯子を使っていた。

それは良いんだけど、降りて掛けて降りて掛けて

は効率が少し悪い気もした。

 見た所台車のようなものはあるので、

俺が似たものを提案しても、文化レベルを

著しく押し上げたりはしないはずだ。


「おーい誰か工作が得意な、我こそはって

人は居るかな?」


 となるべく頑張って声を出したが

流石引きこもり。皆に声が届いていない。


「皆のもの申し訳ない。王よりお話がある。

聞いていただけないだろうか!」


 横に立っている前王が声を張り上げると、

皆手を止めた。


「忙しいところ申し訳ないが、

誰か工作が得意な、我こそはってひ」


 俺が最後まで言わないうちに、

大挙してきた。やる気まんまんですやんか。


「あー解った解った。えーっと

誰か紙を……」


 俺の周りが紙で埋め尽くされた……。


「書くも……」


 筆と墨つぼを持つ手が紙の上に……。


「ちょ、ちょっと距離はなれて」

「皆落ち着いてくれまいか。

王がお困りだ」


 そう言うと皆しょんぼりしながら下がる。

巨体に似合わず面白い。

 俺は一人前に居たものの紙と筆、墨つぼを

取ると、地面において書き始めた。

要するに動く矢倉みたいなもので、

道具をそこに置いたりすれば、一回一回

降りたりする必要は無いようにしたい。

 ので足元に切り株を横に三十センチ位の

厚みで切った後、真ん中をくり抜いて棒を

通して重みに耐えられる台車を作るよう

提案してみる。


「どうだろう」


 そう言うと、皆腕を組んで唸っていた。

出来そうには無いか。

 俺が筆の柄で頭を掻いていると


「皆、王に忌憚無い意見を。

出来る出来ない答えてくれれば、

王は答えてくださる」


 前王がそう代弁してくれた。

弁えて皆に気を使いつつ、

俺にも気を使って円滑に進めようと

してくれていた。こういう気の付く

性格だからこそ、四面楚歌になって

誰にも頼れなかったのかもしれない。

投げ出したくても投げ出せない。

故に崩れたとき逃げ出したのだろう。

引きこもりをしていた俺よりも、

この人は立派だ。


「あの、一つ宜しいですかい?」

「どうぞ」

「これ、上手くいったら褒美とか

ありますかい?」


 と言われた。


「うーん」


 今まで下の人間だったから、

上の人間の無能に腹を立てるし

そいつの所為だから、改善したら

何かくれってのは解る。

 ただ今上に立ってみてこの状態を

みるにつけ、誰の所為かといえば

全員の所為だ。

 と一般論を説きたくなるのは

思い上がりだろう。そして

それはしてはいけない。やる気を削ぐ。

また過度な褒美は際限が無くなるから

バランスが大事だ。

 また役職を与えるにも能力が

問題になるし。


「王、一応褒美に出来そうな物はありますが」

「いや褒美の中身の問題じゃない。

ここの給金の支払いは?」

「食料が主です」

「皆はもっと食べたい?」


 俺が聞くと頷いた。


「上手いものを?さっきみたいな奴?」


 大きく頷く。


「よし解った。功績を見て判断しよう。

特に俺の提案より上をいった素晴らしい

開発をした者の中から選抜し、

この国のそう言った物を作るチームに、

そして一番のものはその代表として

俺と現場の繋ぎをしてもらおう。どうかな」


 というと俺の周りにあった紙と筆と墨つぼは

瞬く間に無くなっていった。


「そう言えばそろそろ名を聞こう」


 俺が横にいる前王に訊ねる。

が無反応。


「聞けないと前王というけど良いか?」


 頷く。俺は嫌味な人間ではないし、

人に付くことで生き甲斐を、

そして自らを生かせると思って

汚名返上したい人間をいじめたい訳でもない。


「なら勝手につける。気が向いたら

本当の名を教えてくれ。

仮の名をイシズエとする」


 俺がそう言うと、目を見開いた。

立ち上がり城の中へ戻る。

遅れて付いてくるイシズエ。


「名の意味が気になるか?

俺の国でイシズエとは、

基礎となる大事な物事、要は土台だな。

これをイシズエという。

汚名返上なんてケチな事だけ考えるな。

イシズエとなれ」


 振り返りイシズエにそう告げると、

また地面に土下座した。


「悪いがこの大地を蘇らせるまで、

イシズエ、お前を俺の副官とする。

やる事が多くて忙しい。土下座は良いから

次の仕事に取り掛かる。置いていくぞ?」


 敢えて促さず、身を翻して

城の中へと俺は戻る。

イシズエは急ぎ俺の横に戻ってきた。



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