蘇り始めた城
丁度ベランダのような場所から
庭を見れる所があったので、
そこから声を掛けようかと思った。
が、何か見下ろしてるみたいなので
庭の方に移動する。
「あ、コウ」
「おっちゃん!」
女性陣を引き連れて恵理とリムンが
移動してきた。
「どうだ?そっちは」
「うーん大変大変。
こうしたいああしたいこうしてほしいとか、
もう意見が多くて」
「そうだのよ。大変だのよ」
「そうか良い事だ。そこから実現させないと、
不満溜まるから優先順位つけて素早くやらないと」
「了解。じゃあリストアップしておくよ」
「りすとあっぷ?」
「皆が希望するもので多いもの、実現を早くした方が
良いものを選んでおく事だよ。恵理、少ないものは
別に紙に書いておいてくれ。そういう所にも何か
ヒントが隠れてるかもしれない」
「あいあい」
「あーい!」
俺たちがそういう話をしている時も、
女性陣の視線が凄い感じる。
引きこもりにこの視線は辛いなぁ。
苦笑いしつつ庭に出る。
兵士たちも大工道具を片手に集まっていた。
俺たちがぶち抜いた床だけでなく、
城壁とか矢倉の修復を急ピッチで進めている。
「皆忙しいところすまない」
俺は一言謝罪した後、
前王と王妃について意見を求めた。
最初は言い辛そうにしていたものの、
ロキがじゃあ処分でと言った所意見が出てきた。
結果一般兵としてでも良ければと言う事に。
俺は相手に通じたり戦の時に謀反を起こす可能性も
伝えたが、それでも変わらないらしい。
そうした時は自分たちで、という事で纏まった。
その方がいきなり来た俺がやるより納得いくか。
ただ仕事しろって言われても、
難しいだろうし目もあるので、
暫く俺についていてもらう事になった。
「じゃあ報告は上の階にお願いしマース。
じゃ解散!」
そう言うと皆足早に去っていった。
うーん……何か通信手段というか、
ラジオというかそういう受信機とか
そういうものがあると便利だよなぁ……
と思いつつ上へ行く。
「あのーもしもし」
さっきから黙った横に居られる恐怖よ。
デカイ体で無言で直立不動。
「何か喋ってもらえますか?」
恐る恐る言うが無反応。
困った。イマイチ感情が解らん。
普通末っ子って天真爛漫なのでは、
とか思ったがそれも人其々だわな。
「じゃあ悪いけど一緒に行動してもらうよ」
と声を掛けると頷いたので、
早速下へと移動する。
先ずは女性陣のところへ行った。
俺としては醤油についてどうにか
ならないかと相談しに行こうと思っていた。
醤油ほど万能な調味料は無い。
醤油麹を作るのに小麦と大豆、玄小麦がある。
元々ラーメンに使ってた液体のこともあるから、
これはいけるかなと思った。
「やってみます……」
元王妃はそう言うと、早速取り掛かった。
何か思うところがあったのか、大豆を蒸して
小麦を炒る作業を始めた。そちらにも人員を裂きつつ、
もう一つの班に日常食の改良をお願いした。
「コウ、これ見て」
その最中に恵理から声を掛けられる。
振り返るとそこには赤いワンピースに白いエプロン、
赤の三角巾を付けたエメさんが居た。
「おぉー!素晴らしい。良いね千は来るよ」
「一万は来るでしょ。中々良いよねシンプルで。
元々スタイルも良いし」
「ん?」
エメさんは少し混乱しているようだ。
気恥ずかしいのか手が忙しく動いている。
そして段々後ろへ下がっていく。
「何処へ行くんだ」
「まぁまぁ乙女心よ」
そう恵理が頷きながら言うと、
女性陣は賑やかになる。かしましい事だ。
おっさんは皆にお願いすると部屋を出る。
女性陣はわいわいやっているようで何よりだ。
「ふぅ……」
横にいる巨体は安堵の溜息を吐いた。
恐らく奥さんが早速役に立っているのを見て、
安心したのだろう。
「奥さんは戦力になりそうだ。
案外こっちがあわあわするより何とかなるもんだ」
そう声を掛けるが、いけないと思ったのか
仏頂面に戻った。俺はそれを見て少し笑ったが、
突っ込まず次へ移動する。
床の舗装に関してはロキが一案あるようなので、
そこは任せることにした。
簡単に言えば地下はこちらの領域なので、
バリバリに舗装する必要はない。連絡口としての
使用と落とし穴、脱出路的なものを作る方が良い。
ロキも勿論承知である。
外へ出れば皆せわしなく
壁や矢倉の補修をしていた。




