掌握、そして内政へ
「逝け」
俺は大きく振り被った相手の
隙を突いて鳩尾に一撃加えた。
一撃で倒すならこの部分しかない。
時間を掛けるなら執拗な右側面への
強打が良いが、めんどくさい。
こいつ王様の癖に逃げよるし。
「はぐ」
鳩尾は胃だけではなく、
肝臓の一部もダメージを与えられる
体でも特に多くの臓器などへ
ダメージが通る場所だ。
また鍛えていても引き締まった体が
指し示す窪んだ一点を狙い打つことが
出来れば極大のダメージを与えられる。
「ああ」
「王が」
悲嘆にくれる声が庭に座らされている
兵士たちから漏れ聞こえてくる。
「取りあえず静かになったところで、
俺の話を聞いてもらおうか」
改めて兵士たちに声を掛け、
城の入り口へ戻りエメさんと並び立つ。
ロキや恵理、リムンたちも来て横並びに
なるのを見て、俺は話を始める。
「俺たちはこの大陸ではない、外の大陸から来た。
そこでこの大陸出身者と出会い窮状を聞き、
この大陸を救う為にやってきた。
俺はここに来るまでに
この大地に広がる荒野を見てきた。
断言する。
このままでは君たちは君たちの手によって
残り一人になるまで互いを食い続け、
やがて死滅すると……。
断言する。
この大地を滅ぼしたのは誰かの所為ではない、
他ならぬ君たちの所為だと。
だが断言しよう。
君たちが託して力を貸してくれれば
必ずこの土地を、この大地を蘇らせると。
そしてみせよう。
君たちが見えない明日に進んでいた中に、
希望の光を。
我が剣と共に誓おう。
我が力の全てを持って、この大地を
蘇らせると」
俺はそう言った後、
相棒の黒隕剣を引き抜いて、
天に向かって掲げた。
青白い剣身に漂う青白い球体。
相棒は俺の演出に協力してくれ、
球体を素早く回転させ、青白い光を
より強くはなった。
どよめく一同。
効果は絶大だ。少数による短時間での
制圧。王との一対一での圧倒的な勝利。
そして宣言からの相棒の光による演出。
ここまでやっといてなんだが詐欺っぽい。
俺は一瞬にやけて噴出しそうになっていたが、
何故かリムンと恵理にお尻を抓られていた。
神妙な面持ちをしながら。痛い。
「先ず一つ手始めに貴方たちに光以外の
ものを見せましょう。お願いします」
恵理も俺のノリについて来た。
そして後ろに声を掛けると、お姉さま方が
大量の器と手押し車に鍋を乗っけて出てきた。
エメさんも流れを呼んで全ての兵士の蔓を
静かに解いてくれた。
そして一人一人に手渡して行く。
「是非食べて欲しいだのよ。
ここに居る人が何も特別なものを持ってこないで
あるもので作ったものだのよ」
「そう、力だけでなく知恵があれば、
まだこの大地は蘇る余地がある。
希望はある。明日はある。
それを掴むも捨てるも君達次第だ!」
ロキとリムンもノッてきた。
ロキは元々得意だし、リムンは純粋に美味さに
感動してるっぽいが効果は覿面だろう。
むさぼるように食べる兵士たち。
忙しく動くお姉さま方。
俺は剣を収め、ただ皆が静かになるのを待った。
やがて腹を満たして全ての視線が俺に集まる。
「どうか、我が剣となってくれまいか」
そう言うと彼らはお姉さま方の顔を見た後、
全員で頷いてくれた。
「ありがとう諸君。この大地を蘇らせる為に、
共に戦い抜こう!」
こうして攻城戦は終わりを告げた。
制圧したのでこうした行為は茶番なのかもしれない。
が、俺は何れこの国を去る。
なので出来ればなるべくこの国の人が多く戦いに
参加し、勝ち取ったものとして残る方が良い。
正直課題は山積みである。正直うちには武官しか
居ないので、文官が少ない。今この城の巨人族で
そう言った人材が見込めるのか。
一人一人面談したり見て回ったり、
また新たな人材を発掘する必要がある。
出来れば早いうちに一戦交えたいのもある。
またここに居ない兵士たちに関しても
動かなければならない。
「まぁ任せてよ。僕も今は全力でやってあげるからさ。
なに、謀略はお手の物でね」
とロキは楽しげにしている。
取りあえず内容は聞かない。
聞くと怖い。




