制圧宣言
「ちゃんとしたご飯を頂くのは大事だなぁ」
「まぁね。取りあえず僕らにもいただけるかな?」
「勿論。皆さーん!取りあえず作り方わかったと思うので、
量産したいと思います。この便に入れてた小麦。
これ集めてもらえますか?解らないことがあったら
聞いてください!」
そう声を張り上げて言うと、お姉さま方は
元気に返事してくれて、作業に取り掛かってくれた。
どうやら下の階に食料庫があるらしく、
そこに要らないものとして分けていたようだ。
海産物とか取れたらシーフードのラーメン行きたいし、
うどんも開発してやろうかしら。
「君ねぇ。料理作るのが仕事じゃないんだから。
そこのところ忘れないようにね」
「解ってるって。でも軍を鍛えるのに
やっぱ栄養は大事だ。お姉さん方を
味方に付けられればそこは問題ない」
「あの、これ」
「はいはい」
暫くお姉さま方に教えつつ、
恵理とリムンとロキに振舞って、
備蓄とか食料関係の報告を受けていると、
「ちょっと良い?」
「あ、エメさんごめんほったらかしで」
「私は大丈夫。光合成してるだけでもエネルギーは
回復できる。それに一番熟れた頃に出される
ラーメン食べたい」
「そ、それはどうも」
「それより来て。巨人五月蝿い」
俺はいつの間にかお姉さん方にエプロンと
三角巾を付けさせられながら、帳簿と新しいレシピを
作成していた。で、すっかり忘れてた。
エメさんの後に続いて作業場から出る。
暫く歩いて城の正門というか一階の大きな
扉を開けると、前には大勢の巨人が
蔓に包まれて座っていた。
「なんか用か?こっちは食料の確認とか
料理とかで忙しいんだ。くだらない用なら
適当に一人叩き斬るぞ?」
俺はエプロンと三角巾を付けたまま、
腰に手を当てて低い声で宣言した。
静まり返る一同。だが直ぐにぎゃあぎゃあ
言い出した。
「五月蝿い!誰か一人喋れ!ホントに叩き斬るぞ?」
そう言うと、前の顔にペイントみたいなのを
している顎鬚の巨人族のおっさんが
喋りだした。
「き、貴様らは何者だ!?
何故わが国を攻めた!」
「俺たちはこの大陸の騒乱を鎮めて
元の場所に戻す為に外の世界から来た。
何故ここを攻めたかって肥沃な土地を
攻めるのは当然の戦略だろ」
「そ、外の世界から来ただと!?」
「いや巨人族以外なんだからそれ以外に
なにがあるのよ」
「そ、それは……」
「というか君らゴブリンじゃないんだからさ、
せめて飢え死にしないよう、種族が
反映するよう栄養状態を改善しようとか
思わなかったわけ?戦いに全部勝てる訳ないし、
そのうち疲弊していく。併呑したところで、
その領民どうする気なの?皆殺しにするの?
馬鹿なの?死ぬの?」
取りあえず俺は解り易く批判してみた。
実際ゲームですら無計画に占領していけば
先ずは兵糧から尽きて反乱が起きてゲームオーバーになる。
ましてこの大陸は元々が飢えてるのに、
それを加速させてどうするのか。
……もしかして巨人族ってゴブリンなの?
「たかが数人に襲撃されてつぶされた、
なんて不名誉背負うより、謎の人物を
新たな盟主として戴き種族を護る戦い
とかに変えたほうが良いと思うけどどうよ」
まぁ折れんわな。だけど折れるより
道は無い。はっきり言えばエメさん一人に
負けたんだから、言い訳のしようも無いと思うけど。
「き、貴様がどれほど強いか、
一騎打ちを!」
「国王!」
顔にペイントみたいなものをしている
顎鬚おっさんが叫ぶ。国王らしい。
妄りに一騎打ちなんて将のやることじゃない。
ましてや王なら尚の事。
「エメさん、解いてやって」
「いいの?」
「構わないよ。めんどうだけどその方が早い。
まだやることがあるんだ。忙しい。
エメさんにも美味しいもの沢山食べさせて
あげたいし」
「解った!」
元気良く蔓を解いた。吹き飛ぶ国王。
あかんわこれ。しかもあやつ逃げ出したぞ……。
「こ、国王!?」
もう鴨葱ですわ……。
俺は直ぐに距離を潰し、国王とやらの
腹を蹴り上げてエメさんにパスする。
それを蔓の鞭で叩き落とすエメさん。
「おいくだらない事するな」
「ち、畜生!」
国王は殴りかかってくる。
もっともそんなものは何もならない。
俺は手を使わず少し足首を動かし
移動範囲も小さくして避け続ける。




