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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
アイゼンリウト騒乱編

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冒険者たち、進撃す!

コウは眠りより覚める。

アイゼンリウト最後の戦いを前に

自らを振り返る。

 眼を開けると、綺麗な青空が広がっていた。

美しい。

青空が美しいと元居た時にも感じられたなら、

俺の運命は変わっていたのだろうか。


「眼が覚めたのか、コウ」


 ファニーが俺の顔を覗き込む。

まじまじとファニーの顔を見る。


「綺麗だ」


 つい口に出てしまった。

ファニーは顔を赤くし、目を見開いて次の瞬間

俺の視界は拳で埋まった。


「おっちゃん平気か?」


 次に目を開けた時、今度はリムンの顔が映る。

愛らしい顔をしている。

こんな幼子を迫害してまで護りたいものなどないだろうに。

だけどそれが無ければ出会えなかった。

俺は人としてこの子に何をしてやれるだろうか。

 心配そうに、引きこもりで無職でダメなおっさんの顔を

見つめるこの子に。

 ダメなままでは護れない。

自分がダメな終わっているおっさんだとしても、

ダメなおっさんを終わらせる時期が、

今であってはならない理由はない。


「いつまでもいい年こいたおっさんが、

堂々巡りしてる場合じゃないよな」

「ん?」

「いや、リムン少し見ない間に大きくなったか?」

「一日位しか経ってないだのよ。

でもぱわーあっぷしたのは間違いないだのよ!」

「そうか、それは嬉しいな」

「うん!」


 にぱっと笑うリムンの顔は眩しかった。

護れる力がある。

この世界に来た事で与えられた力。

最初は同じように絶望したけど、

ファニーと出会い、ダンディスさん、リードルシュさん、

ミレーユさん、リムン、ビッドに姫、

少しずつ繋がりを持ち世界が広がるのを感じた。

王は違ったのだろうか。

世界はこんなにも多くの人たちが居て

繋がれる可能性に満ちているのに。


「王は俺か……」


 そうだ。

王は人を嫌い、人を蔑み、人を遠ざけた

引きこもりだった俺自身。

きっと俺以上に辛い目に遭っているのだろう。

最終的には、魔族というツールを見つけて手に入れた事で

更に落ちて行った。

 強ければ何も恐れずに済む。

全てを力で支配し、自分の気分次第で壊す。

そんな力が欲しいと思った事は何度もあった。

だがそれが他人と引き換えだとしたら、

それは引きこもりには無理だろう。

そんな行動力があったら働いてる。

 

 そして思う。

流されている部分もあるが、

俺は今行動的ではないかと。

引きこもりが外へ投げ出され、

動かざるを得なくなったが、

自分が思うように動いている。

 結果として、国の大事に係わる事にまで

首を突っ込んでいる。

元の世界では考えられない。


「ようコウ、起きたか」


 ダンディスさんも様子を見に来てくれた。

流石獣族というべきか、回復力が凄いなと

感心した。


「はい、おまたせしました」


 俺はゆっくりと起き上がる。

眼の痛みは無い。


「コウ、いけるか?」


 リードルシュさんも近付いてきてくれた。


「んじゃ行きますかね」


 ビッドも笑顔でそう言いながら俺の所へ来てくれる。


「コウ殿」


 姫も流石の回復力だ。


「アリスとイーリスは?」

「ここに居るわよ」

「……」


 アリスは腕を組みながら近寄ってきて

イーリスは憎しみを帯びた顔で、城を見ていた。


「皆、ここからは最終局面だ。

もし戦うのが無理な人が居たら、残って欲しい。

恐らく王は準備万端迎え撃つ態勢を整えている」


 そう言って俺が皆の顔を見ると、

ダンディスさんはニカッと笑い、

リードルシュさんはいつも通り腕を組みながら、

ジッと俺を見ている。

ビッドは自身の筋肉を自慢するように、

ボディービルダーのような動きをして、

自分が問題無い事をアピールする。

姫は竜槍を持ち、姿勢正しく立っている。

アリスはふん、と言う。

イーリスは立ち上がり城へと歩き出した。


「生きて帰れる保証はないから、ファニーとリムンは……」


 俺が良いかけるとリムンは俺の前に来て、

顔で抗議した。


「我は他がどうかはしらんが、

コウとは一心同体一蓮托生だ。

お主が死ぬ時はその傍らに居る」


 ファニーは俺に背を向けつつそう言った。


「解った。なら行こう。俺は必ず王を倒す。

そして皆で生きて帰ろう」

「当たり前だ。我とコウとの旅は

まだ始まってもいないのだからな」

「うん、アタチも旅したいから頑張るだのよ!」

「そうそう、肉を沢山入れてもらわないと、

俺も本業がヤバイから頼むわ」

「そうだな。コウには防具の代金を

稼いでもらわねばならん」

「俺も折角姪っ子が見つかったんだ。

死んでられない」

「私は……私の国を護りたい。

コウ殿、貴方に全てを託します」

「アリス、イーリス」


 俺は一人一人の顔を笑顔で見つつ、握手を交わす。

 アリスは溜息をつきながらも俺に近付いて


「魔族は舐められたらお終いだからね。

キッチリアイツとの落とし前をつける。

その後でアンタとも」


 とにらみながら言うが、

俺は強引に手を取り握手を交わす。

アリスは頬を人差し指でかきながら、

握手を強引に解かないでくれた。

 イーリスは無視して行こうとするも、

俺が駆け寄り握手すると、皆の元へ連れてくる。


「目的は皆一つだ。あの王を倒す。

色々あると思うけど、

それは王を倒した後にしてくれ。

今は一人でも多く力が欲しい」

「魔族を信頼できるのか?」


 リードルシュさんは俺の目を見ながら言う。

俺に淀みはない。


「こと王を倒す事に関しては、

信頼というより信用して良いと思います。

魔族ってプライドはどの種族よりも高そうだし」

「それは言えてるな。エルフよりは高かろう」

「皆、円になって手を真中へ」


 俺がそう言うと、アリスとイーリス以外は

円になり手を出してくれた。

それを俺は無理やり引き込み、

アリスとイーリスにも手を出させ

皆の手のひらを合わせる。


「皆、必ず生きてこの戦いを勝って

いつもの生活に戻ろう!行くぞ!」

「おう!」


 俺は最後に手を乗せ置くと、

そう掛け声をし手を押した後、

空へ向けて手を上げる。

皆も気合いを入れて真似をしてくれた。

アリスはノリノリでやってくれた。

イーリスは仕方なさそうにしていた。

これで心と目標は一つ。


 俺は皆の前を歩き城門をくぐり、城下町へと入る。

城下町の空の上だけ曇りだった。


 ――良く来た。スマンが城下町のみ日光を遮らせてもらう――


 城の方から声が飛んでくる。

見ると城の周りは、城門前と同じ青空だった。


「来るわよ」


 イーリスが口を開く。

すると地面から、骸骨に鎧兜を付け武器を携えた集団や

魔族が湧いてくる。


「さぁ行こうか!この国最後の闘いへ!」

「おう!」


 俺達は王の用意した、もてなしを処理すべく突撃した。

アイゼンリウト最終戦が始まる!

果たしてコウは生きて帰る事が出来るのか!?

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