蘇らせるもの
――ですが私が到着したとき、既に大地は死に絶え
巨人族も半数が死滅していました。――
半壊状態だったのか。何か罰を与えたとかいってたが、
ただ隔離しただけではなさそうだ。
――そう、ただ罰を与えるだけに留まらず、
大地そのものを殺していたことに、私は怒りを覚えました――
「それで彼に抗おうと?」
――あまり適切とはいえません。この大地を蘇らせるのが急務であり、
それを妨げるのであれば誰であろうと容赦はしないという事です――
他の事は眼中になしって事か。巨人族がこの上の大地のみを
奪い合おうが土地を殺さなければ良いと。
「あれだね、戦争が起こるのも実は歓迎してるんじゃない?」
ロキは俺が敢えて聞かなかった事を聞いた。
恐らくここは表土が流れて消えておらず、微生物も生きていた。
最初はこの土地をコントロールすることで、
巨人族の死滅を狙ったのかもしれないが、
今ユグドラシルの目的は土地の再生だ。
生物の循環を考えれば戦争が起こってもらった方が良い。
自ら手を下す事もなく罪悪感もなく土地を鍛えられる。
ここに根付くようにしたのも巨人族が居ることによって、
水の循環等も自らしなくともしてくれる。
そうしなければ彼らが死ぬからだ。
――不良神の横の人物。確かコウと言いましたね――
「そうだが」
――私は貴方なら組んでも構いません――
ロキは不満そうな顔でこちらを見る。
まぁ言わんとしている事は解る。
「こちらとしては、この大地を救う目的で来た。
それは単に戦争を止めるだけではない。
そういった面ではありがたいが、
生憎と俺たちはオーディンの敵だ」
――……貴方ならそういう事をしそうですね。
不良神と共に居ることからしても、酔狂な方だと
私は感じていました――
「俺としてはその事で貴女に迷惑を掛けるのは忍びない」
――なら手を組むと言うよりは、途中まで共同戦線と
致しませんか?生憎私は全力でこの土地を蘇らせる事しか
今は考えられません。例え誰の命令であれそれを放棄して
行くことは有得ない。なのでそれまでは休戦し共同戦線と
しませんか?私も自分の身を護る事と土地を蘇らせること
この二点のみに集中できれば有難い――
「そう言う事なら。ならその申し出は有難く受けたいと思う」
――……良かった……。貴方がただの乱暴ものであったのなら
この土地の肥やしになってもらうだけでした。まさか理解ある者が
私の前に現れてくれるなんて――
ユグドラシルの大きな目から光が出て降って来る。
「取り合えず今の状況を教えてもらおうかな」
「……仕方ない。あんなクソマズい物を永遠に食べさせられるより、
美味いものが増えたほうが精神衛生上良いか」
「そうそう。それまでの共同戦線だから」
俺は腕を組みユグドラシルを睨むロキを、
まぁまぁと両手で仰ぎながら仕方ないよねーって
感じでご機嫌を取る。
――何から話しましょうか――
「やっぱりこの大地の成り立ちから言った方が良いかな」
「地球誕生からか?」
「そんな前の話してたら後百話は掛かる。
端折りまくる」
――そうですね。土地を蘇らせる事こそが第一なので――
そう言うと二人は話し始める。
この世界は元々星が最初に生まれ、その後神々が生まれた。
やがてそれは左右に別れ、戦になり、勝てば官軍状態で
善き神悪しき神となった。悪しき神は大地を追われ地に潜り、
善き神は大地を追われ空へと上がった。
ユグドラシルの幹より分かれた三つの枝の世界。
それは今俺たちが冒険している大地、
オーディンたちの大地、
そして魔族の大地。
星の仕切りのような役割をユグドラシルは果たしている。
その後オーディンたちの大地でラグナロクのような
兆しが見え、小競り合いからオーディンたち対巨人族の
戦争へと発展しかけたが、戦争前夜に何かが起こり、
巨人族の大地だけが俺たちの大地へと隔離され降りてきた。
と言うことらしい。
俺は日本人だから、あの土地の様子、草木すら生えない
あの状態を、何かで見たことがある気がしていた。




