ラーメンは人それぞれにこだわりがあるもの也
「これは人為的なもんじゃないだろ?」
「まぁね……」
これに対してロキは苦虫を噛み潰したような
顔をし、その後心が冷えるような冷たい顔をした。
怒り。ロキという人物は狂言回しと言う一面や
悪知恵から来る悪戯、神々の黄昏を
起こしたという面だけを見ると、悪の権化っぽく
思える。
しかし神々の黄昏が起こった切っ掛けは、
ロキが神々の祝宴で突然全ての神々の過去の罪などを
暴露して、糾弾したことに始まる。
「しかし酷いなあれは。この大地は何処で植物とか
栽培してるんだ?あの土地の感じだと栄養すらなさそうだけど」
「流石無駄に知識があるね。そういう事だ。栄養なんて無い」
「何をしたらあんなことになるんだ?恐らく微生物レベルまで
死滅してると思うんだけど」
「虫一匹居ないって言うのが答えだよね。
答えは実際その場所に行けば解る。まぁその前に
この大陸の食事ってのをしてみる?」
いやらしい顔をしたロキ。
もう平屋で酷い目に遭ってるので、
言わずとも知れている。が、腹は減るものだ。
なんだか前の大陸に居た時より体力の消耗が
激しい気がするし。
俺の返事を待たずにロキは先に歩き出す。
しょうがないので付いて行く。
街に居る人たちはとてもじゃないが
活気があるとはいえない。生きていると言うか
生かされているように見える。
嫌な予感しかしない。ていうかあの平屋の奴
なんで無駄に元気だったのだろうか。
「君は実際成長したと思うよ、おっさんだけど。
来た当初なら死んでた」
「この世界にコンバートされてステータス補正を
受けてたのに?」
「数字や感触だけなら誤魔化せるからね。
そのうち解るけど、補正そのままの君なら
楽にあの荒野を越えてたし、腹が減ることも
水を飲むこともそんなに無かったはずだ」
恐ろしく燃費が良いのかと思った。
都合が良すぎて妙な気はしたし、表現力が
無いのかとも考えたが。
「補正にオーディンは関与してないのか?」
「してないね。彼も言ってたと思うけど、
君はオーディンではなく彼に召喚されてる。
干渉しようとしたけど、最終的に僕が妨害した」
あの目薬とかって事か。
「そういや黒刻剣は?」
「……まぁそれについては追々ね。
さ、着いたぞ。問題の食事処」
……一軒の平屋、そして食事処。
悪夢の再来か。
「……そんな怖い顔で睨まれても困るなぁ。
君がラーメンマニアだとは思わなくてさ」
「日本人を侮っちゃ駄目だ。ラーメンには物凄く五月蠅い」
「まぁインド人とイタリア人の中にも
日本に来て怒る人も居るよね」
「そんな感じか俺」
「だね。ここではあれが流行り、とは言わない。
それは大体察しが付いたと思うんだけど」
「いーや違うね。ただの醤油ラーメンとは言え、だ。
先ずもって麺を作るところから間違ってるんだ。
いいか良く聞け?」
「あーもーおっさんマックスだな。
君に対してラーメンが特大の地雷だとは思わなかった。
他は大してこだわりなさそうだったのに、
最終決戦前に急にそういうのを出してこないで欲しいんだが」
「いやいやお前もあれを食えば解るって。
ラーメンに対する冒涜だわ!」
「そんなに神聖なものならケリが付いたらラーメン屋でも
建てて引き篭もれば?」
……なるほど。
「いやいやいや、そんな盲点だったみたいな顔して
真面目に考えられても困るんだーが」
「ううむ……先ずは別のラーメンを食してみないことには」
「料理研究家にクラスチェンジするなら終わった後に頼むよ。
開いてますか?」
ロキは俺との会話を切る為に食事処に入った。
俺も仕方なく入る。
「へいらっしゃい!どこでも好きなお席へお掛けになって!
お客さんカウンターへどうぞ!」
「うっざ」
ロキは言い放つ。思い知るが良い。
てかこれはこの大陸のテンプレなのか?人を含めて。




