ボッタクリを追い払う新技
「うぐぉぉお……俺のラーメンが
あまりにも美味すぎて嫉妬したのか……」
「いや不味いわ」
「やはり嫉妬か……」
「お前が作ってるとしたら絶望的に不味いぞ」
「嘘を言うな」
「嘘な訳ないだろ。どうやって作ってるのか
見せてもらおうか」
「良かろう……」
デカイのは腹を押さえながら立ち上がると、
奥へ進む。俺も後に続いた。
「どうだ」
この大陸ではドヤ顔すると大抵解決するのか。
俺は無言で蹴り飛ばす。木の机の上に
乱雑に置かれた材料、焚き火を弱く起こしたままで
鍋ははずされている。そして黒い液体のビンが
棚に置いてある。
「お前これなんだ。出汁は何でとってるんだ?
まさか出汁無しとか無いだろうな」
「出汁って何だ」
「……あんなクソ不味い物が流行ったら、
オレイカルコス大陸全体の味覚を疑われるわ」
「ば、馬鹿な……」
うなだれるデカイやつ。
ホント筋肉の無駄遣い甚だしい。
「まぁいいや。そんな事より人が集まってる
街はどっちの方角だ?」
「人間が何の用だ」
「最初に出会ったときに聞けよ。……それもいいや。
この大陸で起こってることを調べて解決する。
その為に来た。さ、答えたんだからお前も答えろ」
「嫌だ」
……めんどくさいわぁ……。
まぁ元々当ても無く歩いてたんだし、その内何処かに
当たるだろう。俺は無視してこの場を立ち去る事にする。
「待て!」
改めて持ってきたクロスを身に纏い、
スイングドアを押して外へ出ようとした時、
怒鳴る声が背後からしたが構わず出る。
「待ってくれ!」
デカイのは俺の前に回りこんで土下座をした。
「何のつもりだ。俺は忙しい。お前の下らん妄想に
付き合ってやる暇は無い」
「いや付き合わざるを得ないはずだ!」
「……今度は腹への一撃だけで済むと思うな」
俺は実際に斬るつもりはないが、黒隕剣を
鞘から引き抜く。青白い剣身を中心として漂う青白い煌き。
完成した完全なる黒隕剣。その煌きは最早一つの
星のようだ。
「は、話だけでも聞いてもらえないだろうか」
「あんなクソ不味いものでボッタくっといて
今更何の話がある。人間の三大欲求の一つを
汚しただけでも万死に値する。見逃してやるだけ
有難いと思ってあの平屋に戻れ。
欲をかけば死ぬことになるぞ」
そう諭しながら歩いているが、土下座したまま
移動して俺の前に居続けた。仕方なし。
「忠告を無視したのはお前だ……怨むなよ」
俺は黒隕剣の切っ先を天へ向けて突き出す。
眩い光を放ちながら黒隕剣の周りにあった煌きは
徐々に範囲を広げ、その動きは風を起こす。
「我が剣と我が身の錆となれ。
お前の事は努々忘れることは無いだろう。
名も無き巨人族の者よ、さらばだ。
11番目の新星の煌き(カ・ノーヴァ)!」
俺がなるべく制御出来て強めの技を放ちたいと
思った時に、頭に浮かんだものを口にする。
黒隕剣はそれに呼応して剣身を強く発光させ、
煌きは高速で運動をし始める。
「消えよ」
「う、うわあああ!」
煌きの一つがデカイのに当たると、
デカイのは吹き飛ばされた。
「……なーんてな」
俺は切り替えるためにそう口にする。
黒隕剣も発光を止め、煌きも元の運動へと
戻った。不味いラーメン食わされただけで
処したらアホ過ぎる。しつこく絡んで押し付けた
その罰位は与えても良いかと思った。
俺は鞘に納めると、平屋の後ろへ回り
荒野を歩き始める。日は傾き星星が空を埋め尽くした。
「無駄な体力を消耗させんなよな……ったく」
俺はゆっくりと空を眺めながら荒野を行く。
見渡す限り荒野。その内何処かに当たるよう
星に願いながら進む。




