重き荷を負うて
「ショウ、ちょっと俺とお話しようぜ?」
「え、は、はい」
俺はショウと肩を組んで少し離れる。
ラハム様は俺の意図を感じカグラに
俺との戦いでの注意点を話し始めた。
「この辺で良いか」
「なんでしょう」
「カグラのことどう思ってるんだ?」
「え!?!?ふぁ!?」
愛い奴。思いっきり慌てておる。
暴れるショウを押さえつける。
「暴れんなって。で、どうなのよ。
王族だからーとかそういうの良いからさ」
「ど、どうと申されましても。主と臣下の関係
ですし……」
「いやいやそれが無かったとして、よ。
どうなのどうなのどうなの!?」
「そ、それは……」
野暮この上ないな。パワハラっぽいし。
なら本題に入ろうかしら。
「……好きなら何で戦場へ態々連れて行こうとする。
彼女は腕力はあっても戦闘のセンスは無いと思うぞ?
巨人族でもある程度までなら戦えるかも知らんが、
恐らく王族は無理だろう」
俺が急に真面目なトーンになったので、
ショウは驚いて血の気が引いた顔になった。
「事情があってしたいんだろうと思う。
だがそんな甘いものじゃない事は、ここまで
色々手を尽くしてきたお前なら、承知しているはずだ」
「……それでも姫は上に立つものならばと」
「上に立つものは先頭きって戦うものじゃないし、
一騎打ちなんて駄目だろ。首を取られたらお終いだ」
「頑固なもので……」
俺は溜息を吐く。まぁショウは全て、
いや姫でさえ全て承知って事なのか。
「重き荷を負うて遠き道を行くが如し、か」
「え?」
「いや、ショウにとって背負う荷の一つなんだろうな
と思って。……だけど予め言っておく。俺は勝つ為に行く。
どんな手を使っても結局勝たなきゃ明日が無い。
姫の気持ちは俺も汲むが、姫にしか出来ない姫のすべきこと
が現れたときは容赦無くその任務に当たってもらうぞ?」
「はい……」
「後お前もその力を極める事を忘れるな。
姫に回している力をお前自身を高めることに向ければ、
更なる進化を目指せる。それは姫の命を守る事の大前提だ。
何より今のお前は弱いのに更に弱い者に力を与えている。
それは俺が言わなくてもラハム様が言っていたと思うが、
結局待っているのは共倒れだ」
ショウは俯く。まぁはっきり言葉で伝えておかないと、
甘い雰囲気に流されていけるかもしれないなんて思ったら
足元すくわれるし。そんなものになったこと無いから
解らんけども。
「こっちとしても悲劇が起きて復讐や恨みにまみれるより、
冷やかしてるほうがマシだからな。やれる事はやってやる。
但し忘れるなよ。俺はあくまで助っ人だ。ショウとカグラに
今よりマシな明日を迎える手助けをする為に行くんだから。
二人には是が非でも生き残ってもらう」
「ありがとうございます!」
「さ、戻ろうか」
しかし巨人族の島ってのも簡単に想像しただけで怖いな。
デカくて力が強い。それだけで十分恐怖だ。
「謙遜かい?」
「飽きたのか?」
「一応凱旋みたいなものだから、気分は高揚しているよ。
何しろ僕が全力で戦っても良いなんて最高さ」
「それは楽しみにしてる。で、謙遜とは?」
「謙遜だよ。巨人は言わば抗えない自然の力、破壊の象徴。
君は更に大きなものの加護を得ているじゃないか。
格で言えば上だよ」
「星あっての自然てことか」
「そうそう。相性で言えば相手にとって最悪だ」
「皮肉だな」
「皮肉だね。星にとって自然が第一であるはずなのに、
今は人が優先なんだからね」
「それ位危険てことだろう」
「君が抑止力に選ばれた」
「……そう考えると嬉しくないな。後を思えば」
「まぁ前借みたいなもんだからね。全部終わったら
僕が姿を借りてるであろう本人に相談するといい」
俺とショウの話がひと段落ついたのを見計らって、
ロキが俺の横に来て告げる。忘れるなって事を
言いたいんだろう。終わったら相談してみるかね。
「兎も角生き残らなくちゃ。最後の舞台まで
辿り着けずに死ぬ可能性もあるんだし。
僕はその為に戻ってきたんだから」
どうやら今は良いロキのようだ。
だが油断は出来ない。いつ牙をむいてくるか。




