ショウとカグラと
「あ、ラハム様。ショウとカグラを戻してもらえますか?
あの二人に案内を頼まないと」
俺は大分会っていない巨人族の二人の名を告げる。
アルブラハさんのように巻き込まれてしまった、
俺に助けを求めてきた巨人族である。
「ん?別にいらんだろ。巨人族の奴らの頭の中は
戦う事、そして誰が一番強いかってだけの話だ。
難しく考える必要はない、実にシンプルな人種だぞ?
そういうところに今のお前が単身乗り込んで、だ。
ばったばったと薙ぎ倒すのが俺は良い修行になると
思ったんだがなぁ」
「僕も居るけどね」
「お、俺も居るぞ!」
「お前ら二人は知らん。野垂れ死ね。どうか大陸に付いた瞬間に
穴か何かに落ちて別れに別れて散り散りになった後、こっそり
襲撃を受けて野垂れ死ね」
「……おいこの水人間具体的に襲撃計画を話したぞ?」
「凄いねぇ僕を殺れるといいけど」
ちゃまもロキも暢気である。まぁロキは巨人の血を引いてるし、
出身にも近いところだろうから解るが。ちゃまの余裕はやっぱり
傷が付けられないという事なんだろうか。
「ちゃまちゃま。一つ言っておくけど”傷つかない”だけだからな?
死なないんじゃないんだぞ?忘れるなよ?」
「解ってるわそんなもの。常識常識!」
「巨人でかいぞ筋骨粒々だぞ?踏み潰されるぞ叩き潰されるぞ?」
「あ」
「今気付くなよ」
「茶番はその辺にしておけ。……仕方がないな。あいつらは鍛え甲斐が
あったからもうちょっと絞りたかったんだが……」
ラハム様は腰に手を当て空を見上げ溜息一つ。
ホントに絞りたそうだな。流石プロデュースしたい人。
「せい!ああああ!」
「はぁああ!」
二人は鍛錬途中だったらしい。
ショウとカグラの一撃はちゃまへ余すことなく注ぎ込まれた。
「うべらぼらみ」
傷は付かないものの衝撃のダメージくらいは多少受けるみたいだ。
「よう二人とも、元気か?」
俺は右手を上げて笑顔で二人に挨拶する。
俺の声に反応して二人は振り返る。
「あ!御久し振りです旦那!」
「コウ様!お会いしたかった!」
ショウは俺の左手、カグラは俺の右手を取って
握り潰さんばかりに握手してきた。
「ホントに申し訳ない。長いこと待たせたが、
これから二人の故郷に行くから」
「「本当ですか!?」」
二人は俺の言葉を聴いて顔を見合わせると、
俺の顔をもう一度見た。そして頷くと抱き合って
喜んでいる。リア充爆破しろ。
「爆破はともかくどうだ、軽く俺のプロデュース力を
試してみては」
「頭の中を読まないで頂きたい。二人いっぺんにですか?」
「勿論。その方が解り易い」
何か種があるらしい。リア充の種はあるかも知らんが。
「ぜ、是非!」
「宜しくお願いいたします!」
ああ何だろう顔から発する見えない光がまぶしい。
これが若さかリア充か。
「お前リア充リア充うっさい」
「さーせん」
「じゃあ本気でやるように双方とも。特にショウとカグラは
最初から全力でやれ。出なければ殺される事はないだろうが、
呆れて一人で巨人の島を壊滅させるかも知らんぞ?」
俺は破壊神ではないのだが断じて。
俺が不満を抱いている間に、ショウは眼帯を外し、
カグラはその膝まである長い髪を宙に浮かせ始める。
「へぇ……これはまた」
「驚くのが早すぎる。見世物じゃないんだ、実際組み合って
感じてもらいたい。これなら対等は全然無理でも足元には
及ぶ。一緒に連れて行っても邪魔には並んだろう」
「それは四人の巨人の王ともぼちぼちやりあえるってことですか?」
「一騎打ちならな。一騎打ちなら」
「そうですか」
実際に感じてみるか。一騎打ちならぼちぼち
やりあえるレベルってのを。
俺は星力を少し厚めに纏う。




