神々の娯楽的投擲(ディシーヴオブバルドル)
「早速で悪いが決めさせてもらおうか!
神々の娯楽的投擲!」
バルドルは両手を広げて天を仰ぎながら叫ぶ。
天を裂き現れる無数の落下物は光を放ちながら
高速で落ちてくる。凄まじい光景だな。
これなら全滅させられるかもしらん。
バルドルも含めて。
……ホントどんだけいじめられっこなんや。
バルドルちゃまは母上の溺愛によって、
誰からも傷つけられることが無くなった。
それを確認するべく神々が色々な物を投げつけた。
勿論傷つかない。そこから何を思ったのか、
神々はバルドルちゃまに対して物を投げつける遊びを
始めたのだった……。主神の息子やで?
体は傷つかなかったのかも知らんけども、
心は傷ついたと思うなぁ。
「ふはははは見るが良い世界の最後を!」
「はいはいもう良いからのいといてね」
俺は面倒だったのでちゃまを蹴り飛ばした。
あいつが叫んでるとこれは止まりそうも無い。
恐らく一回目は巨人に行くように仕向けたのだろう。
本来はこういうものだ。バルドル含めこの島を
破壊する必殺技。どういう風に本人を言い包めたのか
知らんが、えげつなさ過ぎるわ。どんだけ嫌いなんだ。
溺愛してたんじゃないのか?……まぁあんなんなったら
溺愛できないのかも知らんけどもだ。
「相棒……頼む!」
俺は黒隕剣を引き抜くと、相棒を落下してくる物の
角度を確認してその先へ向けて助走を付けて投擲した。
黒隕剣は雷の起動を描きながら天へと駆けていく。
落下物は四散していき、大地に光の粒の雨が降る。
暫くして黒隕剣は雲をも散らせて俺の手元に素早く
帰還してくれた。
「おい、ちゃまをこれ以上虐めるなよ」
俺は蹴り飛ばした方向を見る。そして少し驚いた。
そこには以前は俺の弟の子供の頃の姿かたちをしていた
ロキが、今は全然違う姿になっている。
「どうするこれ。居ても邪魔だと思うんだけど」
「ひ、ひぃいいいいい!」
処された本人と処した本人が今まさに前回のリプレイを
やらんとしている。ああ……そういえばさっき見た樹は
ヤドリギだったね……。
「取り敢えずロキ、その手に持ってる
ヤドリギの枝を捨てて頂戴よ」
「……仕方ない。まぁいいさ」
ロキは本当に残念そうに枝をぽいした。
それを感じたのかちゃまは俺の後ろに高速で逃げてきた。
「……イライラするな」
「まぁまぁ。それよりその姿」
「あ、これ?君には変わって見えるんだね。
今のところ僕は決戦でもないから礼装を装備してない。
という事は君の目に映る僕は、君にとって苦手だったり
気が引き締まる相手のようだ」
鼻で笑いながらそういうロキ。
「それはそれは。しかしそんな姿をしてて、後で
本人から苦情が来るんじゃないのか?」
「言わば映し鏡だからね。君に苦情が行くと思うよ。
ただこれに関しては君が意識してどうにかなるものじゃ
無いから仕方ないけど」
……ロキの隠し玉か?
「まぁそれはさておき、取り敢えず鉄砲玉は処したことだし、
とっとと最後の島へ行こうか」
「巨人の島か。ここは良いのか?」
「ああ、冒険したいだろうけどね。
君ももう勘付いているかも知れないけど、
ティアマトが覚醒した今この島はもう手出しできない」
「どういうことだ?」
「ウリディンガルムが言ってただろ?バランサーってさ。
ティアマトは誕生の母であり世界の礎。世界を死で作り上げるのは
マルドゥクがやったけど、本来なら彼女は死ななくても作れるんだ。
大体今回は旦那が居ないからね。逆切れして殺戮を始める事もなし」
「俺たちが呼ばれたのは」
「彼女も言ってたけど完全に僕とあちらの都合で呼んでもらった。
但し辿り着けるかは保障してなかったけどね誰も。
その見返りとして僕たちは彼女の死の遠因を無くす触媒などを
与えたわけ」
「それがメデューサさんたちか」
「そういうこと。ま、立ち話もなんだし中へ入ろうか」
「了解。ちゃま、行くぞ?」
「……そいつも連れて行くの?」
「放っておくのは流石になぁ……」
俺はちゃまの手を引いて、元入った巨人の入り口へ
ロキとともに移動した。




