開戦の狼煙
「わーお現実にぃぃっ戻ってぇっ……きたぁあああああ」
橋封鎖出来ない感じの物まねを棒読みでしてみた。
すっげ頭痛い。あぁ~ガジられておるガジられておる。
いやぁしかしたまげたなぁ。記憶抹消されておらんとはなぁ。
「よく生きて帰ってこられたな貴様……びっくり人間か」
「俺に言われてもなぁ俺立ってただけだし」
「……何ぞようわからんが、母上も頭をガジるのはそれ位に
していただかないと。話も進みませんし」
「ムガァアアア」
単純に人型ムシュ状態である。空間が戻ってからというもの、
相棒は沈黙している。修正出来たってのは魔力の消耗が
激しいという部分が無くなったってことなのか?
でも今の俺は魔力を持ってないはずなんだけどな。
気になったので黒隕剣を抜いてみる。
「うわっ!?何をするかっ!」
いや俺より先に反応するなよ。
黒隕剣の剣先は青白い光となっていて、
更に剣身付近に青白い小さな玉たちがケプラーの法則、
太陽を中心に回る星星のようにぐるぐる回っている。
「さっさとそれを仕舞え。こんなところで解き放つなアホたれ」
頭の激痛が無くなったかと思ったら、
次はケツを蹴り上げられた。
「気は済んだか?」
「全っ然!……だがな我の用は済んだ」
「この力を渡すために?」
「反旗は翻ったし星力も渡したし黒隕剣も開放してやった。
これで我も自由!」
「ティアマトさんご苦労さん」
「お主に労われてもな。それに勘違いしてくれるなよ?
ここからが本番よ……。古の時代からの期間と逆転劇はここから始まる!」
ティアマトさんは拳を握り玉座に右足を掛けると、
天井へ向かって吼えた。それを見てウリディンガルムは
涙を流しながら頷きつつ拍手をしている。
「よ、よかったっすね」
「うむうむ」
「うははははははは!」
吼えるティアマトさんに頷くウリディンガルム。
二人だけ絶好調に盛り上がっていた。
「……来よったか」
暫く眺めていると、鍾乳洞全体が揺れ始めた。
第一弾がお出ましかな。
「恐らく細かく言わんでも説明があったと思うが、
神々の黄昏の前哨戦が来た」
「前哨戦にしてはエライ強い力みたいだけど……」
「外に出てみれば解る。ラハム、聞こえるか?」
そうティアマトさんが言うと、上空に小さな空間が出来、
そこにラハムさんが映し出された。
「なんだ?」
「なんだではない。時は来た」
「俺の時ではないがな。例の準備は出来ているが、
ここではないだろう。先ずは前哨戦。お前達だけで何とかしろ」
「……貴様……どちらが主なのか忘れたのか?」
「そんなものは知らん。建前はそうでも本音は好きにさせて貰う。
裏切らないだけ有難いと思って貰おうか」
……なんか火花でも散らんばかりの様相を呈している。
睨み合いが暫く続いた後、ウリディンガルムの溜息で我に返る。
「まぁまぁまぁ。ちょっと俺が出てくるよ。どうせ俺に用が
あるんだろうしさ!」
俺はティアマトさんを羽交い絞めにして玉座に下ろすと、
写っているラハムさんにそう告げた。
「どうでも構わん。忘れるな、俺はお前をプロデュースする
つもりはある。それだけは信用して良い。信頼と期待はいらんが」
「了解。で、出口は――」
俺が聞こうとしたら、床が抜けた。
マジで床が抜けた!玉がヒュンてなるわ!
底の見えない暗闇を、ただ只管落ちていく。
……なっが!何処行くんだ俺!




