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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
黒き女神の迷宮

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世界との対話

「本当はもっと丁寧に導いて貰いたかったんだけどね。

どうも君に巻き込まれて基礎データがずれたらしい。

まぁもっとも機械じゃないし、端から端まで管理してないから

ずれるのも無理は無いんだけど」


 俺の右手を強引に握った後直ぐに手を離し、

彼はまた黒隕剣の動きに目を戻した。

黒いセーターに黒のチノパンと御洒落に拘る感じがしていないが、

高い鼻に切れ長の目、整った顔立ちと高身長というだけで、

着ているものをグレードアップさせているように見えた。

そんな彼は俺に話しているのか解らない感じで、話を続ける。


「で、だ。改めて僕の世界へようこそ。君は十一人目の勇者に

して、初めてここまで到達した。恐らくもう敵が誰であるのか

今更君に説明する必要も無いと思う」

「オーディン様ですね」

「そう。今の段階で話せるのはそこら辺りまでだ。

悪いけど君が何故どうやって召還されたのかは答えられない。

個人的にはそれを知ったところで害は無いとは思うんだけど、

ある程度信用はしても信頼も期待もしない性分なんだ。

悪いね」

「いえ大丈夫です」


 俺の返事を聞いてクスッと笑う。

なんていうのかイケメンでコミュ力もあってデキるって感じだ。

そういう部分が見えてくるとどうにも近寄りがたくなる。


「どこまで話したものか……。まぁ僕が言える事も

現段階ではあまり無いんだよなぁ。……さして言えば

黒隕剣て君が言っているアレの事くらいかな」

「黒隕剣。あの世界の文明レベルを超えている気がします」

「そうなんだよね。あれは僕のところからくすねて言った奴の所為だ。

もっともそのお陰で今君は僕と逢えている」

「ズルってことですか?」

「君がくすねた訳じゃないからズルじゃない。僕が君に渡るようにした

訳でもない。こればっかりは運が良かったんだと思うよ。

改めて計算したけど君の知っているゲームで言うなら、

それを当てるには0.5%から更に0.001%を掴むのと同じ位のレベル」

「狙うとか正気じゃないですね」

「ああ勿論僕は運営として操作してないからね?

当たったところでってのはあるし。何だったらくすねられたものだから、

直ぐ誰かの手に渡って欲しかったんだ。

だからといって重課金者を狙って当てさせることもしないけど、

重課金者に対して一定の金額まで引かせるような真似もしてない」

「随分具体的ですね」

「ああごめん話が逸れた。あーっとなんだっけ」

「黒隕剣をくすねたっていう」

「そうだそうだ。黒隕剣は僕のところからくすねられた物を、

ばれないように再加工して隕鉄にし、更にダークエルフを唆して

高度な古い魔術と年月を重ねた鉱石、そして祝福という名の

バレないようにコードを混ぜて、あの世界専用に完成させたものだ。

べらぼうに魔力を吸うって言うのは、完全にコードがぐちゃっとして

無駄が多いからロードに時間が掛かってるんだ。

あんなものを渡されたら混乱して放り投げたくなるよ。

こんなコード書いた奴を呼んで来い!ってね」


 さっぱり解らん。兎に角リードルシュさんはその所為で

里を追われたと思うと、気の毒でもあり怒りがわいてくる。


「君怒ってるみたいだけどそれは違うよ。

彼は唆さなくても何れ禁忌は犯しただろうし、

それがその時か否かっていうだけだから。

彼は本当に強い剣が生まれた頃から作りたくてしょうがない、

根っからの職人なんだ。失礼な事を言わないようにね」


 リードルシュさんの全てを知っているように

語ってくれた彼の言葉は俺を諌めているようだった。

確かにその通りかも知れないなと思う。


「んで君は幾多の苦難を乗り越え、更に彼らの目を掻い潜り

反旗を翻して今ここに来てくれた訳だ。個人的にはエンディングまで

辿り着いて欲しいと願っているよ」

「が、頑張ります」

「頑張って。今回僕が出てきたのは間接的とはいえ

黒隕剣がごちゃっとした所為で負担を掛けていた。

それの中身を修正する目途がついたんで、ティアマトに少し時間を

貰ったんだ。今の軌道を見ている限り、問題は無さそうだ。

下手をしたらまったく新しい物へ組み直さないといけないかと

覚悟してきたんだけど」

「いやそれならごちゃっとしたままでも」

「……戦士の愛着って言うのかね。ここまで生きてくると、

自分の体の一部にも似た感覚をもったようだね」

「はい」

「良い事だ。君の愛着というか執着事は、両親や弟への恨みだけ

だったから、そういう意味では成長もしたし来た甲斐もあったのかな」

「ありがとうございます」

「まだお礼を言うのは早いよ。君のエンディングはここじゃない。

君がこの世界で生きていけたかどうかの判定は、

もうオーディンを倒す事を避けては通れない。

結果生きていけませんでした、となるかもしれないけど、

君の船には多くの人達が乗り過ぎた」

「ですね。生きてそして皆の明日を開かないと」

「そうだね。……さて。僕はそろそろ戻るよ。

ここから先、オーディンへの優遇は切られる。

それはどういう事だか解るかな?」

「解らないです」

「彼も死ぬということだ。アーサーと同じように。

それを彼は感じる。そうすれば全力で君を潰しに来るだろう。

だが僕は急に全面戦争なんてされても困る。

彼は彼の好んでついた役割を全うして貰う。

但し部下たちはもっと激しく来るだろう」

「気合を入れなおします」

「まぁ巨人の島へ行くといい。最後の舞台は近い」


 そう彼は言った後、眩しい光を放ち始めた。


「じゃあコウさん、ラストまで頑張って。

ハッキリ言うけど優遇は君も無い。やられたらそれで御終い。

それでエンディングだから気をつけて。僕としてはまた君に逢いたいと

心から願っているよ」


 彼の言葉が終わるか終わらないかの内に、

宇宙空間は真っ白な世界に包まれる。

そして俺の右手に黒隕剣は戻ってきた。

徐々に白い世界は元居た鍾乳洞の景色に染まっていく。


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