真面目にやってと言われるとグダる人
ぐずるムシュを抱えながら、ウム・ダブルチュを倒した後に
出来た洞穴を潜り進んだ。が、そう歩かないうちに全体が揺れるほどの
振動が起こる。もう今更この程度では驚く事も無い。
例え足元に穴が出来て落ちようとも、だ。
「……振りじゃないよ」
誰に言ったわけじゃないが、取り合えず身構えた。
そして足を強く踏み鳴らしてみたが、何もないらしい。
ほっと胸を撫で下ろしさらに奥へと進む。
近付けば近付くほど振動は増す。
これは……この先に居るのは恐らくティアマトさんが
生み出した十一の仲間の中でも一番の強敵に違いない。
そう、蟻人間で高度な格闘技術を持ったギトウをも
赤子の様にひねってしまった怪人。
二つの名を合わせたティアマト軍の要……。
「俺だよ!」
武者震いをしながら広がる道を進み、
またもや鍾乳洞のような場所に出る。
ホントこのダンジョン構造どうなってんだ。
「おい無視スンナ!」
今回は少し光が木漏れ日の様に差し込んでいる。
ああ何か神々しい。心が洗われるようです……。
「何手を広げて天を仰いでんだ小僧!」
これまで激戦を潜りぬけてきた俺に対して、
ティアマトさんからのご褒美ではなかろうかや。
「日本語が可笑しくなってきてるぞ!って元からじゃねーか!
……あっ!?」
俺の気分を害した汚物を消毒してやった。してやった。
ムシュを抱えながら加速し、右肩辺りへ思いっきり蹴りで薙ぎ飛ばした。
失敬な奴だ。
「失敬な奴だ」
「何回も言うな!それに失敬なのはお前だ!おいおいお子様ランチよぉ……。
俺様を誰だと思ってんだ!?えぇ!?」
「近い近い近い」
何事も無かったように俺のところまで戻ってきて、
わーわー言った後に顎を思いっきり上げ、俺を下に見ようと
全力で背伸びをしながら目を見開いて凄んできた。
うっとおしいので何も言わずに顔をひっぱたく。
「いって!いっていって!ちょちょちょ!お前何考えてんの!?
先輩に対して無言でひっぱたくとかどういう教育されてきたんですか!?」
ひっぱたかれた頬とは別の頬を抑えながら涙目で抗議してきた。
なんで敬語になってきたんだ最後の方。
「先輩って誰?」
「俺だよ!っていうかおチビちゃんよぉ。
あんま舐めてっと痛い目見るぜぇ!?
俺は昔は錆びた日本刀って言われてたんだぜぇ?」
……すっごい自信満々に苛められてた事を告白された。
え、どうしよう。え、どうしたらいい?
慰めた方が良いのであろうか……。
「あ、そ、それは凄いっすね先輩……」
「おいおいおい、何ビビって目逸らしてんだよ小僧。
チビッちゃったんじゃないでちゅか?」
ムカつくな凄まじく。英単語並べられるレベルで
イラッとした。そら目も逸らすわ。
こんな時……どんな顔していいのか、解らないもの……。
「まぁ良いだろう。あんまりビビらせちゃ修行にならねぇからな。
今日のところはこの辺で勘弁してやりうじゃないのか」
最後噛んだ。スムーズに喋ってたのに惜しい事をしましたな……。
ていうか突っ込んだ方が宜しいのかしらね。
「俺というティアマト軍団一強い芸人……じゃないじゃないじゃない!
っとにこれだから素人さんはよぉ」
自分から芸人だと申告してきましたよこの人。
俺はただぼーっと突っ立ってるだけだから何もしてないんだけどな。
「えっほん。あー、もう一度やるから。……えーティアマントぐ……
あー、ティアンマト……あーっあーっ。えー……ティムバー○ン?」
いや最後アメリカの俳優名なんだが。発声を確認して言った挙句の俳優て。
どこへ行くんだ次は物まねか?しかもパードゥンみたいな聞き方しやがって。
「うるさいうるさいうるさい!えーいめんでくせぇ!
おめをギッタンギッタンにしてやるからよぉ!?……あっ」
なんかもう色々駄目っぽいので投げ捨てたらしい。
ならこっちも、ということで背を向けて振り向きながら凄んだので、
俺は遠慮なしにその背中を空を舞うように下から上へ蹴りあげた。




