なんでもクドくならない程度が良い。
「その中学生レベルの英語を止めやがれ!」
俺は前を向き直しながら相棒たちを高速で、
袈裟斬り逆袈裟斬り斬り払い縦一文字と
何が来ても大丈夫なように剣撃を繰り出した。
「Watch out!」
声が近かったので恐らく突っ込んできたんだろうと
思ったが、当たっていた。俺の剣撃をギリギリで避け、
上空へ急上昇し距離を取っている。元々翼が生えているのに
地上で向き合ってたのがサービスのような気もしないでもない。
が、ウム・ダブルチュの体は鷲と虎の融合体だ。
鷲なら長時間飛べるかもしれないが、胴体が重ければ飛行時間も
短縮されるだろう。クサリクのようにパワーがあるから
竜巻を起こしたり急浮上するのは得意のようだけど。
「おーい掛ってこないのか?」
暫く無言で旋回して居たウム・ダブルチュ。
流石にボーっと俺も突っ立っているだけではなく、
風の流れをごちゃっとさせる為に、ウム・ダブルチュの
旋回している方向とは逆の方へ相棒たちで勢いを付けて
薙いでいる。
「assault!」
決め手を欠いて攻めあぐねたのか、空中で後ろ脚を前に持ってきて
四足歩行状態から変え、羽の動きを前後に変えた。
そして発生する竜巻。アサルトって事は強襲なんだろうが、
予備動作ありありで竜巻が来る事は解る。勿論それが本命出ない事も。
何しろ俺が地上に居ればそれが無意味である事は解っているはずだ。
「いけっ!」
少し間をおいて俺は竜巻を掻き消し、相棒二振りを前方へと
投げ放つ。カン!という音と鳴き声と共に現れるウム・ダブルチュ。
竜巻に紛れてのアサルト。随分優しいじゃないか。
「俺も忙しくてな。悪いがこれで……終わりだ!」
俺は勢い良く天井へ手を向けて飛び上がり、相棒二振りを空中で掴むと、
ウム・ダブルチュへ向けて振り下ろす。それを迎え撃とうとするウム・ダブルチュが
口を開いたので、俺はそれに対して
「うわああああ!」
と腹から声を出して叫んだ。面食らうウム・ダブルチュ。
俺の超音波攻撃……のようなものを食らい怯んだ。
「でりゃ!」
当然俺の邪魔をしに来ると考えていた。
そして何かが飛んできた音と気を頼りに、ウム・ダブルチュへ斬りかかりつつ
左側へ足を突き出す。
「うげ」
汚いなぁ。寧ろ優しく足出しただけなんだから感謝して欲しいくらいだ。
俺はその足を戻しながら、体重を乗せて何かで作ったバリアと嘴で受ける
ウム・ダブルチュを地面へ押し込んでいく。立場は逆転し、重力と体重そして
星力を宿した相棒二振りの剣撃を乗せられて落下していくウム・ダブルチュ。
背中から落下する事に慣れていないであろうウム・ダブルチュは、
目を見開きもがいている。
衝撃波が発生するほどの勢いで地面に衝突し、背中を強打して光の粒子を
口から吐き出すウム・ダブルチュ。
「ぶった斬れろぉおおおっ!」
俺は更に気を入れて相棒たちを押し込んだ。
やがてバリアにヒビが入り、砕け散ると一気に剣先が食い込んでそこから
縦一文字になった。そして光の粒子となり消えていく。
「ほいでお前は俺とやるんか?」
ウム・ダブルチュが何か英語を言いそうだったので、嘴を手で押さえて
見送った後、蹴ったわけでもないのに痛そうに蹲るマスコッツに声をかけた。
「痛い……」
「いや蹴った訳じゃないじゃんか。足出しただけでしょ?」
「痛い……」
取り付く島なし。完全にイジけておる。
「なーんで邪魔なんかしようとしたんだー。痛い目に遭うって解ってたでしょ」
「痛い……」
「ほーらー、先行くから起きなさい」
「痛い……」
背を向けて拒絶するマスコッツ。
子供かよ……。俺は長時間やったところで埒はあかないだろうと考え
相棒たちをしまうと、抵抗されたが何とか抱きかかえた。
そして背中を撫でながら出来た入口の穴へと進む。




