最後に英語を叫ぶのはどうなのかと
「ホントすんませんした……」
元々陰キャではあっても真面目に生き切れない人間なんで、
どうも息がつまりそうになると、ついつい緊張の緩和がしたくなる。
そういう意味でムシュは良い相棒である。
「ご、ごめんなさいきゅぴ……」
俺とムシュは鷲の顔がどいたので、
穴を出ると二人で並んで頭を下げた。
それに対して鷲の頭の人はなんも言わないで見てる。
「あ、あの……」
恐る恐る顔をあげてみるが、能面みたいな顔のまま
こちらを見ている。ムシュと顔を見合わせた後、
ゆっくりそろりそろりと近付いてみる。
あれ、可笑しい。なんか彫像っぽくね?
ムシュとまた顔を見合わせるが、同じような顔をしている。
解せぬ。
「も、もしもーし?」
「あ、あのー生きてるきゅぴか?」
反応なっしんぐ。俺とムシュは限界ぎりぎりまで近付く。
動かんねぇ、などと言いつつムシュは調子に乗って
顔をツンツンし始めた。
「あ」
「あ?」
俺は眼が動いたのを見て声を上げる。
ムシュはそれを聞いて鷲の顔を見る。目が合う。
「ああああああああああああああ!」
「うわああああ」
「ぎゃああああ!!」
鷲の顔は口を開けるや否やバリトンボイスで叫んだ。
俺は間の抜けた声を上げ、ムシュはどこの乙女かと
言わんばかりの悲鳴を上げて一目散に駈け出した。
「バカバカバカ心臓に悪い胸が痛い!」
「きゃはああああ!」
最初の位置まで逆戻りである。
ホント恐らく心臓が痛いんだが全部痛い気がしてきた。
ムシュはムシュで頭を抱えてただ叫んでいる。
「もう良いかね君たち」
目を光らせて顔だけ見える鷲の方が声を掛けてきた。
ムシュも落ち着いたのを見計らってである。
バリトンボイスは伊達じゃない。イケメソか?
「あ、はいすんませんした」
「ご、ごめんなしゃい……」
「なら結構。私の名はウム・ダブルチュ。君の次の修行相手だ」
「ご、ご丁寧にどうも」
「Yourwelcom。では早速だが役割を果たさせてもらおう」
「え、ええ。じゃあお顔の方下げて頂いて……」
「うむ」
あっさりと顔を下げるウムさん。
ここでふと気付いた。言葉が交わせるなら最初からそれで
来ればいいのにと。で、まぁ大方の予想通り
「わざとやりましたね」
「うむ」
わざとである。そしてうむじゃねーよ。
ドッキリにしても長いから。こちとら騙され芸人じゃないぞと。
「さ、そう言ったわけで連戦もね、そろそろラストが
近いということでどうです?コウさん修行の方は」
「え、そうっすね。大分良い仕上がりなんじゃないかと」
「なるほど。自信が見え隠れするコメントありがとうございます。
修行の期間は短いながらも、充実した内容に我々もこれは
ヒットチャートを駆け抜けるんじゃないかと、率直な感想として」
「あ、はいありがとうございます?」
「フフッ、ではですね早速皆さんに聞いて頂きましょう。
”GO to Hell”」
「だりゃあああああ!」
俺は会話をしつつも相棒二振りを引き抜き、
鼻で笑われた瞬間にもう星力を通して振り上げていた。
どこのオサレ放送局だ。ヒットチャート駆け抜けないわ。
それになんだその曲名は酷すぎるだろセンスが!
俺は全力で相棒たちを振り下ろし、星力を放つ。
何かに当たって煙が上がっている。マジかよ。
「今週は1位を取れませんでしたが、来週に期待。
check it out!」
思いっきり良い声でふざけてるのに、
やってる事は高度だ。俺の星力を跳ね返すのではなく、
一瞬で発生させた嵐の力を星力に一旦ぶつけた後、
嵐の流れに乗せて流していた。
「気を付けるきゅぴ!風の専門家きゅぴ!」
「クサリクの上司みたいなもんか」
「そうきゅぴ!」
なるほどマジでラストが近いなこれは。
大物だからこそまだふざけている余裕がある、
それを止めさせてみろってところかな。




