ゴルド大陸修行旅
「これでっ……」
俺は黒隕剣を突き出し大砲恐竜の腹部に
体と一緒に突っ込んだ。
「どうだ!」
突き刺しながら大砲恐竜を押して進む。
流石にでかいだけあってすんなりと吹っ飛んでは
くれなかった。ただそう時間はかけられない。
そろそろ銀の筒が恐らく後ろで俺を狙っているはずだ。
大砲恐竜が壁に当たったであろう衝撃が伝わった瞬間、
俺は黒隕剣に力を込めて、横へ切りつつ全力で走った。
胴が真一文字を受けて光の粒子が更に漏れ、
そこに俺を狙っていたであろう自らの砲撃が、
傷口へ向かって一斉に放たれている。
離れてみていたが、爆発は光る紫陽花の花の様な形に
なっていて綺麗だった。やがて自身さえ飲み込み、
光の粒子となる。最後は銀の筒部分も残さずに。
それを確認してから、大きく息を吸いながら天井
を見上げそこへ向かって息を吐く。しっかし連戦とはいえ、
段々ハードルが上がりすぎじゃないのかね。
あいつらは忘れてるかも知らんが、こちとら元々引きこもりの
無職のおっさんやぞ。強くなったけれども。
「御苦労さまきゅぴ。いやぁ大変だったきゅぴねぇ」
暫くして耳が音を取り戻した時、何事もなかったかのように
偉そうに俺に声をかけてくる奴がいる。普段ならイジってやる
ところではあるが、子供みたいなもんだと思うので、
そこはスルーして対応してやることにする。俺ってば大人。
「おう。次は誰だ?」
「次のところへ行く道が出来てるきゅぴ。あれを通って行けば
分かるきゅぴ」
「へいへい。ほんじゃいきますかね」
俺は相棒たちを鞘に納め、大砲恐竜の居た場所に出来ていた
穴へと足を進める。相変わらず道が分かるように明るいので、
歩くのに苦労はしない。
「oh……」
そして今回はなんと!恐らくまた道が開けるであろう地点に、
横並びの光が二つ。動物専門チャンネルでアリの巣とかを
穿ろうとする生き物がいたなぁ。丁度あれのような感じである。
こっちは鷲の顔のようだ。
「これ吹き飛ばしていいのかい?」
「本人に聞けきゅぴ」
「良い?」
と聞くと、キュイーと高い声を上げた。
……いやぁ動物専門チャンネルは見てたけど流石に言葉までは解らんぞ?
暫く見つめ合っていると、向こうが折れたのか後ろへ下がっていった。
「解らん」
「僕に言われても困るきゅぴ」
「仲間だろがい。何とかして」
「流石に動物専門チャンネルは見ても動物の言葉までは解らんきゅぴ」
「俺の突っ込みを真似るな」
「お前が真似たきゅぴ」
「阿呆か」
そこから俺とムシュの毎度お馴染みが始まるかっていう時に、
穴の向こうから何かが放たれて轟音が鳴り響く。
「おいー、また大砲かい?幾らなんでもそりゃないっしょアンタさぁ~。
オレヤダぜぇー?また耳可笑しくなっちゃうもんなぁこれさぁ」
「あっはっはっはっ」
「笑ってる場合じゃねぇの。解ってないなアンタ。
こっちは一個も楽しくないって言ってんだ!」
「じゃあじゃあ行ってみましょう。ハイ!」
「じゃあが一個多いんだって五月蠅いんだよ君はさぁ。
毎回毎回初めて知ったようなリアクション取ってさぁ」
「なんだい?また文句かい?良いんだよこっちは行かなくてもだ」
「おー!言ったな!?そういうこと言うんだったらね、こっちにだって
考えってものがあるよ?」
「その小さい脳味噌で何を考えたか知らないけどもね、
さっさと行けばいいんだよ。ローカル小説の主人公のくせにさぁ。
大体生意気なんですよー。耳が痛いだの驚いただのとねぇ?」
「なんだーこのヤロー」
一しきりきゅぴを忘れた生き物とやりあっていると
視線を感じたのでその方向を見ていると、また光が二つ。
さっさとしろってことですね、解ります。
「ここでたら訴えてやっからな。謝罪会見用意しろこのヤロー」
「五月蠅いきゅぴ。さっさと行けこのヤロー」
こうして締まらない感じで次の戦いが始まる。




