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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
黒き女神の迷宮

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完成への道すがら

 一転して静寂。息の一つも音がしない。耳を更に澄ませば

埃の舞う音すら聞こえそうな程の静けさに包まれている。

相手を見つつも気を探り、ジッと相手の動きを待つ。

 この時間が続くかと思えばそうでもなかった。

三蔵法師様は優しく押すように錫杖を前に出してきた。

俺はそれをゆっくり下がって対処する。

一歩前に出てくるか錫杖を引けば懐へ潜り込む。

圧倒的とは言えないまでも、確かなリーチの差はある。

特に俺の出会った三蔵法師様は、一癖も二癖もある方だ。

すんなり行くはずもない。


「考えすぎではないか?」


 問われたが迷う事は無い。これも餌だ。

俺が考えた一瞬で錫杖は元の位置に戻っている。

それも大きな気の動きも無くゆったり流れるように。


「気を量れるのは良いが、気圧されては行かんぞ」


 罠満載のお化け屋敷にそんな気軽に踏み込めるもんじゃない。

解りやすい強大な気を放っているなら選択肢は無いが、

三蔵法師様の気は今感じられる部分は小さくとも、

それが押さえているのは解る。そうなると選択肢が多すぎて

考えれば考えるほど迷う。出来れば三手先位までは考えておきたい。


「それはダメだな」


 三蔵法師様は予備動作無しで錫杖を突いてきた。

一瞬どころか十秒は考えてしまっていた。

紙一重で額に飛んできた錫杖の先を避ける。

更に身を屈めて薙ぎをかわす。まだ錫杖に気は通っていない。

恐らく


「正解だがな」


 黒隕剣で錫杖を受けようとしたが、軽く叩いただけで

足を払いに来た。それを黒刻剣(ダークルーンソード)

地面に突き刺して止める。接触した瞬間、錫杖には強い気が

宿っていた。受け止めはしたが手が痺れた。

俺は追撃を打たれる前に一旦引かせるべく黒隕剣で振り払う。

ただそれは優雅に三蔵法師様を後退させただけだった。


「良く動くし武器の扱いも死線を潜り抜けてきただけあって

流石のものだ。ただなぁさっきまでの修行をすっぽり捨てちまってるのが

ダメだなぁ。俺と会って驚いてるのは解るが、成長したお前さんを

俺は見に来たんだ。もう一度」


 三蔵法師様は改めて最初と同じように錫杖を構えた。

俺も改めて構え直す。さっきの痺れはもう無くなっている。

恐らく手加減したのだろう。三蔵法師様との修行と言えば……。

 俺はあの時の事を思い出す。そしてさっきまでの事を。

静の修行をした。気だけにとらわれ過ぎるな、五感を使え。

そして雑念を振り払う。見えていると情報が多く入ってくるが、

気の無い物体以外は同じだ。自分の体の動きを理解し、

自分に向ってくる動きの流れを自然に捉え、一瞬を捉える。

 俺は自分の星力を最小限にして、ゆっくりと間合いを詰めていく。

三蔵法師様はニヤリと笑った後、錫杖を突いてくる。

それに対して右足を引いた後その足を、自分を中心に時計の九時の

場所へくるっと移動させてかわして三蔵法師様の側面へ。

足が飛んできたが、無理な体勢からだったので俺は腰を落として

左腕でその足を当てカチ上げる。が、三蔵法師様はそこから

錫杖で薙いできた。それを一歩引いただけで避ける。

すると錫杖は地面を突き、逆立ちのような状態から三蔵法師様は

元の位置と構えに戻ろうとしていた。

 俺はそこを見逃さない。着地するより前に間合いを詰めた。

降りかけの三蔵法師様は、俺に向けて地面に突いていた錫杖を

振り下ろす。が、これもさっきの要領で足を移動させて錫杖の側面へ。


「はあっ!」


 着地し両手で錫杖を握ったのを確認した後、俺は相棒二振りで

剣撃を繰り出す。間合いを詰めしかもバランスが安定しない今、

回転も速い二刀流の俺の方が手数は上だ。ここが攻め時と思い

星力も開放して畳み掛ける。


「やるではないか。そうでなくてはな」


 これを捌かれてる事に驚きを隠せないが、それでもと俺は

剣撃を止めない。この間も力を入れるところ流れで叩きつけるところと

同じ力で叩きつけないように一撃一撃繰り出す。


「どうだ、決定的な一撃を入れなければ倒せまい?」


 余裕で捌く三蔵法師様。ただそれは長くは続かないだろうと思った。

何しろ星力と俺自身の力を何十撃何百撃と受ければ、自ずとダメージは蓄積される。

それがどんなに小さくてもだ。そう確信し俺は更に回転を上げる。


「これは……!」


 流石にしんどくなってきたようだ。確かに回転を上げつつ剣撃を

繰り出してはいるが、三蔵法師様の動きや気配を見逃してはいない。

どうやって下がろうが距離は取らせず、隙をついた一撃を打たれても

かわしてリズム良く叩きこむ。


「ならば!」


 その掛け声と同時に三蔵法師様は錫杖の上部と下部を右手左手で

掴むと、俺の一撃を受け止める瞬間反対方向へと引っ張った。

そして現れる光。


「貰った!」


 三蔵法師様のその声に俺は冷静だった。何かあると思っていたし、

錫杖であれば可能性があるとすれば仕込み刀。俺はそこを集中的に

攻撃し、そしてキン!という強く響く音と共に叩き折った。

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