一戦目の終わり
マスコットが去った後、俺は紫のミニ恐竜相手に悪戦苦闘しつつも、
何とか避け続けて生きていた。最初は全力で避けていたものの、
それでは体力が持たないと大分減ってから気付き、相手の動きが止まった
少しの間に呼吸を整えたり深呼吸したり体を休ませたりと、
工夫をしていく。
「ほへぇ~粘りますね~きゅぴ」
低い声で面白いと言わんばかりに声を掛けてきたマスコット。
余裕があれば声のする方向へ向かって強打してやりたいところだが、
それどころではない。といっても余裕が無いわけじゃない。
最初より慣れてきている。命が掛っていればこその荒業でしかないし、
元々鍛えてきた土壌があればこそなんだけど。
相手も体力が無限にあるわけではないようで、長時間俺を潰そうと
全力で掛ってきていたのが段々緩やかになってきている。
牽制の踏み込みや尻尾叩きなどをしてきたりもしていたが、
それも予備動作や気配に風の音などで判断が出来るようになってきた。
ホントここまでの闘いがあったればこその芸当である。
ただ肝心なのは攻撃が出来ていないという事だ。
有効打は勿論の事、剣を振る事すら出来ていない。
相手は見えてる上に聞こえている。更に相手も俺に慣れてきている。
動きの範囲だったりも掴んできている。大きな動きをすれば叩きつぶして
くるだろう。それくらいにいらついてもいるだろうし。
しかしこのままでは埒が明かない。メデューサさん達の結界による効果が、
ティアマトさんの補助有りだとしてどの程度持つのか、
またロキが何をして時間を稼いでいるのか解らないが、
そんなに悠長にはしていられない。
「南無三!」
ある程度ダメージを覚悟しつつ、俺は気配がし息遣いがする方へと
走って間合いを詰める。恐らくその間に相手は動くだろうから、
どうでも対処できる構えで突き進む。
動く様子が無い……。こっちの一撃を受けるつもりか、直前まで動かない気か。
俺は相棒たちを握る手に力を込める。出来れば一刀両断だ!
「でぇやああああああああ!」
俺は完全に相手の間合いに入ったと感じた後、更に加速し
一気に気配の直ぐ近くまで詰め、右手の黒隕剣を振り被り叩きつける。
「グォオオオオオ!」
斬れた感触が伝わる。これはいける!俺は確信して全力で同じ場所へ
剣撃を繰り出して傷を広げた。
「ガアアアアアアアアアア!」
勿論そのまま斬り続けていられるわけもない。相手も応戦してくる。
尻尾が薙がれた風切り音が聞こえた。
「もらった!!!」
俺はその方向へ黒刻剣を振り被った後振り下ろす。
ザクッという音と感触が伝わり、
「うわぁああ!」
という離れたところにいるであろうマスコットの情けない声が聞こえた。
「一刀両断!!」
俺は胴体がある方へ二振りを並べて振り上げ、そうなるよう願い信じ
全ての力を込めて振り下ろした。
「アアアアアアアアアアアアア!」
振り下ろした後グォっという唸る音が聞こえた直ぐ後に、バカッという
何かが割かれた音、断末魔が聞こえる。
俺は振り下ろした体勢を解かない。何があるか分からない。




