落とし穴は玉ひゅんでは済まない
辺りがさっきよりも濃い紫の霧で覆われている。
この分だとそう長くは持たなそうだ。若干息苦しいし。
そう感じたのは魔術で空気に溶かした毒が
空間に満ちれば、恐らく星力の粒子の間を縫って
入り込み俺にダメージを与えるのでは、と思ったからだ。
正解かどうか試してみたくはあるが、この状況だと救援は望めないし、
兎に角諸々解決してこの世界で培った力を如何無く発揮し、
ミノさんを超える引き篭もり迷宮を建設する為に死ねない。
「くっだらね」
汚物を見るような眼でそう吐き捨てる腕の中のマスコッツ。
このまま握りつぶしたろか。
「ここは走っても良いんだろうな!?」
「死ぬ気で走れ」
偉そうに言いやがって……ホント憎たらしいわこいつ。
て言うか後ろからガッシャガッシャ聞こえてるのが
気になってしかたないんだが……。
「そらそら!走らないと命が危ないぞ!」
きゅぴつけろやホンマに。
ゆっくりと下りになっている道を全力で走る。
曲がり角を曲がっているので、螺旋のような状態になっているのだろう。
しかし解りやすく最初より下に行きやすくなったなぁ。
「あ」
「あ?」
「そろそろ玉ヒュンするぞ」
「は?」
次の瞬間空中を歩いて俺は落ちていた。
「ああああああああああああ!」
「きゅぴいいいいいいいいい♪」
こういう時どうするんだっけ!?星力の力でダメージは軽減されるだろうけど、
衝撃が軽減されるかまでは不明だ。これでもちょっとはこの世界に来て頑強に
なってるはずだ!目の力がないっぽいがやるしかない!
「だりゃああああああああ!」
俺は地面に視界が近付くと、足を何とか漕ぐように前に出して、
地面に触れた瞬間前へ飛ぶように蹴った。
……つってもなぁ……加速状態で落ちてきたんだよなぁ……。
蹴ったは良いものの、そのまま破壊して前へと進み、
壁を転がりながら上がった後、また更に落下した。
今回の落下はさっきよりマシなので、見ながら着地した。
「んがあ」
ドシーーーンという轟音を立てて俺は踏ん張りながら着地。
痺れは来た。勿論普通なら足の骨が飛び出てるが無傷だ。
痺れが柔らかになったところで懐を見ると、マスコットは
自分の右手の先を左手で弄りながら口笛を吹いてやがる。
「ごぉおおおおお!」
ブラキオザウルスの首を少し短く体を三メートルくらいに縮め、
紫色でデコレーションしたような生き物が吠えている。
あれどうやって処理するんだべ。
「さ、あれを倒したまへよ君」
「どらっしゃああああああ!」
あ、めっちゃスッキリした。
俺は某野球漫画の主人公よろしく足をバレーダンサーの如く上げ、
腕にいたマスコッツをひっつかんげおもっきり相手に投げつけた。
あ、めっちゃスッキリした。
「ぐあ」
いるかそんなものとばかりに尻尾で我らがマスコッツを弾き、
身を屈めて戦闘態勢を取った。
「ちくしょう良くも俺のマスコッツを!」
声には漢字は出ないのである。良くやってくれたまじで。
俺はただ投げただけ。それだけさマイク。




