流れに乗るって言うと胡散臭い
剣を振る音と俺の星力の領域に接触し、バチッという音のみが
辺りを支配している。星力は掴めるものではないし、今の状態は
俺の体を通して発せられているバリアの様なものになっている。
濃度の高い状態で刃を防いでいる。
相手の動きをジッと見ながら受けているが、ヒステリック状態
の人物が叩きつけるように剣を振り下ろしているかと思えば、
今度は左右に俺を動かしつつ上下左右斜めあらゆる角度から、
というようにバラエティに富んだ実に鍛練的な動きをしてくれている。
そうは言っても気を抜けば致命傷は避けられない。何処の手練れの魂が
乗り移っているのかはたまた操ってる人がいるのか。
「ようあんた、こっちに合わせて手を抜いてたんじゃ体が鈍るんじゃ
ないのかい?」
と俺が軽口を叩くと、一瞬動作を止めた。が直ぐに再開。相手が
骸骨だけに表情が見えない。動きを止めたのも何の意味があるのか。
機械的にビタッと止まったので焦ったわけじゃないだろうけど。
「そんな機械的な動きじゃ、人は捉えられない……ぜ!」
俺はずっと受けることだけに専念していたが、今度は体を寄せ
言わば星力で押すような動きをして見せた。予想外の動きに対応できず
防御の構えを取らずに吹き飛ばされた……だろうただの骸骨であれば。
体を寄せた俺に対して体を入れ替えて避けた。達人てレベルじゃないだろ。
魂入りなのは間違いなさそうだ。ただ操っているとしたら相当の手練れだぞ。
「おいムシュ」
「何きゅぴ」
「お前ら中身は別々なんだろうな」
「……どういう意味きゅぴ」
「どういう意味ってそういう……」
俺が話を続けようとしたが、骸骨が再び斬り込んできた。無駄口を叩くな
と言いたいんだろう。まぁこれの正解を得たところで何か解決するわけでも
ないんだけどね。ただ恐ろしく一人遊びが上手な人物だという事が解るだけだ。
薄々感づいてはいたんだ。ミノさんが特にそうだがそういう者たちが集まってるなと。
俺としてはあのファニーの仇や喰い物事件以外別に居心地は悪くない。
というか悲しい話居心地が良い。最初に言ったみたいにいつかこういうので引き籠る
場所を作ってやろうと思わずにはいられない。引きこもり時代に一から家を建てるゲームを
寝ずにやったのを思い出す。最初は岩で範囲を決めて積み上げて借家を作り、
にわとりを飼育したりして文化レベルを上げていき、最終的には近代的な家に近いものを
作り上げた。現実は退化しているのにね。
「魂は惹かれあうのかも知らんなぁ」
ぼそっと俺は呟いた後、今度は受けより押す方をメインに立ち回る。
刃の動きを見て体を入れ替えて押す。が、一回目は成功しても二回目同じ態勢では対処され、
という感じで俺の動きを読んだというより学習した、癖を掴んだと言った方が良いだろう。
何にしてもこの位の動きじゃ合格点は程遠いらしい。よくある力に振り回されている状態
に見えているのだろう。ただ俺もこの繰り返しには何故だかテンションが上がってきた。
例え合わせられても更にそこから一つ、また一つと動きを加えダメージを与えるべく体を
動かしていく。体が主体となっているような感覚に陥っていく。
「ま、待ってええええあああ」
暫く身を任せて攻防を繰り返していると、あの情けないミノさんの叫び声が飛んできた。




