蜂のように舞い虎の様に噛みつくマスコット
このクリオネっぽい生き物は
丁度21インチのモニター位の大きさで、
浮遊しながら明らかに見た目に遭わない
凶悪な歯をむき出しにして
俺に襲いかかってきた。
ペナルティ軽減とかほざく奴の
噛みつきなんて喰らったら一発で
BANは間違いない。
俺は幸いな事に星力を発動したままだ。
このままギリギリでも避け続ければ
勝機があるかもしれない。
……いや星力使ってギリギリて。
「この凶悪怪獣が!」
「黙れおっさん!」
俺は蜂の巣を壊した後のように、
凶悪怪獣にブンブンと取り着かれている。
手で何とかはたき落そうとしても、
この生き物は難なく避け同じ感覚を
取り続けていた。
恐らくパワーアップしている俺の拳の
風圧を受けていれば、軌道がずれる筈だ。
なのに殆どズレの無いコースを飛んで、
隙を突いて噛みついてくる。
先ずはコースを消すように薙ぐ。
それを掻い潜った所を潜られた手で
叩き潰すように下ろす。焦った所を
捕まえる。
と書くと出来たような感じだが
その実全く捕まらない。最小限の動きで
ジャブの様に手を出しているが、
逆に引いた時に合わせて
噛みつこうとされる始末。
ただ俺だって戦いにおいては一日の長が
ある。徐々にタイミングも慣れてきた。
それにコイツが感情を剥き出しにして
襲いかかってきている以上、そこに必ず
隙が生まれる。どちらが正確に、
且つ辛抱強く相手の隙が出来るのを
待てるかが勝負の鍵だ。
「いや何してんだお前ら」
不意に魚人の声が飛び込んできた。
これはチャンスだ。俺は視線を声の方へと
向けるよう首を右側に動かした。
相手が狙ってくるのは体の中心軸に近く、
確実に仕留められる場所。つまりは首だ。
「ぐあ」
わざわざ声まで出しやがって
天才子役っぽい声の凶悪怪獣め。
僅かに起こる風の感覚と、さっきまでの
小競り合いでの感じをプラスして、
俺は最速最短距離で左手を伸ばす。
それと同時に首も戻す。怪獣は
俺の左手を潜り抜けている。
だがさっきまでとは違う。
相手は確実に俺の首へ飛び込んできている。
と言う事はそこはずれない。
日本人として、時代劇好きとして
一度はやってみたかった技。
「これが真剣白羽取」
「長いわ!」
ホントマジムカつくわ……。
あのリアクション芸人もどきめ。
こんな時だけ能力の高さを発揮して
俺を突き飛ばしやがった。
「大体お前ら何殺意剥き出しにしてんの?
お笑いやる中で、相手に対して怒ったりとか
しちゃダメだろ! 見てるこっちが
引いてどうすんの!?
笑わせて笑わせてー!」
「うるっせハゲ!」
「このクソジジイが!」
俺達は魚人を無視して取っ組み合いの
泥仕合に発展する。
俺が魚人に突き飛ばされた後、
凶悪怪獣は俺の腕に噛みついてきた。
正直魚人にマジパンチで突っ込んでやりたいが、
その前にこの凶悪怪獣をどうにかしないと
コイツに俺の腕が噛みちぎられる。
「おいおい止めろ止めろ!
ストップストップ!」
もう一人余計な奴が割り込んできた。
どこから出したのか知らんが、
ピコピコハンマーを手に俺と凶悪怪獣の
頭を叩いてきた。しかも一回ならいざ知らず
二回三回と立て続けに叩いてくる。
これには流石の凶悪怪獣もキレて、
水人に飛び掛かっていった。




