プロデュースされる人
髪を掴んだり腕を引っ張り合ったり
取っ組みあって地面を転がるなど、
姉妹喧嘩のようなものが続いた。
結果メデューサさんがボロボロに
なりながら、後一歩の所で魚人に取って
代わられる残念な少女達。
「いぇええええええい!」
「クルール10ポインツ!」
「うひょぁあああああ!」
横取りしたのに凄いテンションだなオイ。
罰ゲームそんなに酷いのか。
「っさ! どんな手を使っても結構です。
あの神殿を一番最初に動かした人に
10ポイントを差し上げーますと」
「あのー」
「何か」
「あの後ろの方達は……」
ギトウが指さす先には、
メデューサさんとロリーナに引き摺られ、
ボコられている魚人が居た。
「ギトウ君10ポインツ!」
「えぇ!? あ、やったぁ!」
10ポイント安すぎやしないか?
あの神殿動かしても10ポイントって。
「仕方ないなぁお前達は。俺様がサービス
してやろう」
水人はゆるーっと移動するのかと
思いきや、人が歩くように少し離れた
所にある神殿の前に来た。
立ち止まると右手を前に出す。
するとその手は広がり神殿を包み込んだ。
そして地鳴りを上げて神殿が動く。
「いやそんなの無理だろ。人間に出来るか!」
「はい! じゃあそんな出来な人達の為に、
この街の中に金色の海星が隠してありますっ!
よーい……アクション!」
「無視かよ」
「え、ちょマジで!? ラハム様俺聞いてないよ!」
俺以外の皆が一目散に素っ飛んで行った。
仕方ないなぁ。これも修行の一環か、と
思って走り出したが
「おい待て」
と早々に呼びとめられた。
後ろ走りに元の所まで戻って振り向くと、
水人は腕を組んだポーズで仁王立ち。
「解っているだろうが、お前は真面目に
コイツを動かせ。浮かせても構わんし、
ずらしても構わん。要は動いていれば
良い」
「つってもなぁ」
「ならヒントをやる。真ん中を持ち上げろ」
「いやこのデカイのを持ち上げろってそんな気軽に……」
俺はその真ん中の位置に移動して見上げる。
「大きさ的には縦660寸横825寸奥行3300寸」
「超絶正確に言われてもイメージが湧かないんだが」
「知らないより知っていた方がイメージしやすい。
イメージは大切だろう?」
「数字言われてもなぁ」
「長方形ってことは解るだろ? それだけでお前みたいな
考えやすい奴は十分だ。寧ろこれでも情報としちゃあ多い方だ」
「感じろってことか」
「簡単に言えばな。お前に必要な修行は今それだ。
肉体的に言えばお前に必要なものは技術的な部分だった。
それをここまでの家庭で手に入れてきた。
しかし根本的なところは入り口にすら立っていない。
星力の力が安定しないのもそこにある」
「……アンタ何者だ? ティアマトさんに作られたって
感じじゃないだろ」
俺がそう問うと、腕組から腰に手を当てる形に変えた。
「作られたという意味ではその通りだ」
「形作ったって事じゃない」
「……まぁな。私は海から形作られた者。魔物とは違う。
簡単に言えば星に近き者、精霊と言ってもいい」
「そのクラスの精霊が戦いに参加するなんて珍しいが、
この後始まる戦いはそんなに凄いのか」
尋ねた後にラハムは天井に顔を向けて沈黙が始まった。




