きおくそうしつ
一旦気を失って再度起きた時、
回復促進草は、必要最低限の量のみを残して
捨てる事になったって言われた。
俺としては何故知らん人が
一緒にいるか解らなかった。
「いや……お前ら帰れよ」
何処かの奥の方まで辿り着いた時、
目の前に現れた魚人にそう言われて
俺は意識を取り戻した。
「あれ、魚が鎧着て槍持ってる」
「ホントですね」
「僕何か可笑しなもの食べましたかね、
記憶が……」
「俺様もだ……しかしまさか魚が
二足歩行なぞ」
「馬鹿だろお前。竜の癖に馬鹿だろ。
仲間が仲間忘れてどうすんだお前」
その言葉に知らん奴は首を傾げた。
「魚なぞに仲間など居らぬ!」
男前に言い放つ。
「お前らコイツに何喰わせたんだ?
アホではあったが馬鹿じゃなかった
はずだが」
「知らん」
俺がそう言うと、何故か視線が
俺に集中している。え、嘘でしょ。
「いやホントに知らんし。てかこの人誰?」
俺の言葉に空気が凍りつく。
「集合!」
魚人が手を上げて集合を掛ける。
俺は集合を掛けられる義理も無いので
スルーしたが、俺以外が集合した。
全員魚の様な眼をしながら俺を見つつ、
ヒソヒソやってる。
「ハイ! じゃあ仕切りなおしまーす」
元の位置に全員が戻る。が、目は魚の様な
目のままである。なんだよ。
「よくきたな勇者ども。ここから先に
行きたくば、お」
「ちょ待てよ」
当然俺は抗議の為に割り込んで声を上げた。
「よくきたな勇者ども。こ」
「ちょ待てよ」
何スルーしようとしてんだ。
「うるさいなぁ……なんだ!」
「いや何も解決してないが。
この人誰」
知らん奴、結構な美人を指さす。
「参考までに聞くが、誰なら解るんだ」
「知らん」
あ、魚の目が白くなった。
「え、ちょ待てよ」
「俺のパクんな」
「お前のじゃねーわ。ちょ、ちょっと誰か!」
魚クンは奥に向かって怒鳴ったが、
ただ響き渡っただけだった。
「え、嘘でしょ。マジで?」
「知らんもんは知らん。なんか適当に歩いてたら
お前が出てきた」
「何処からなら記憶あるんだ」
「えーと、確かアーサーを倒して気を失った
ところまでは覚えてる」
「いやそんなん俺達は知らんわ」
「聞かれたから答えたんだ」
「な、なら俺様は知ってるだろ、
中身は訳あって違うが」
金髪美人……。
俺はその声の主を見た。
よくよく見れば、俺がこの世界に来て最初の街で
道端に座り込んでいた時に、食べ物を恵んでくれた
人……。
「ああ女装趣味のひ」
「いつまで人を女装趣味扱いする気だボケェエエアアアアアアア!」
俺は首がもげるかと思うくらいの強い衝撃を
右頬に感じた後、天井の染みが流れるのが見えた。
そして最後は皆が逆さまに見えた直後、
グシャァッと地面に突っ込んだ。




