へるあんどへぶん
次第に鍋は沸騰してきた。
一旦メデューサさんはロリーナもどきに
火を止めるよう指示。パッと止まると、
どこから出したのか、オタマで
鍋の汁をすすった。
何も言わずになみなみとオタマに
その汁を救うと、ロリーナもどきに
人差し指で来るよう指示する。
当然そんなもの頷くはずもない。
が、彼女は特殊技能持ちである。
ロリーナもどきは火をつける為に
四つん這いになっていたので、その
膝と掌が石化して地面と一体化した。
「や、やめろ! やめるんだ蛇女!
ぶっとば」
解る人しか解らない危機を感じた
メデューサさんは左手でロリーナもどきの
頬を強く掴んで口を開けたままにさせる。
涙目で頭を横に振るロリーナもどきを
尻目に、悪魔の笑みを浮かべて
メデューサさんは汁を流しこんでいく。
何とか地面から起き上がろうと暴れる
ロリーナもどき。
俺は、涙が、止まりませんでした。
メデューサさんも涙が止まりませんでした。
「さ、次」
爽やかな笑みを浮かべるメデューサさん。
俺は一瞬思考停止していた。
「んあっ!」
ギトウはその隙に立ち上がり、気を吐いて
来た方向へと走り出そうとした。
俺よりも基礎能力高そうなギトウ。
だがやはり思考が甘い。
あっさり足の裏を地面と一体化される。
こういう時外骨格は大変。
はがせないもの逃げられないもの。
「貴方が勇者であれば、邪魔が入らなかった
でしょうに……」
それは機械的な奴だな。
お約束と言うやつだ。終わるまで待つやつだ。
俺はそこでハッとなる。
俺は、俺こそは!
「行くぞ! レッツ!」
……まぁ無理だよなこれは。
多分画面的に周りが渦ぞわわーってなって
俺が高速で走る的な演出がされ始めた位で、
足の裏こんにちわからの地面とキス。
直ぐに襟を掴まれ、仰向けにされる。
無言で顔を横に向けさせられると、
そこには無残な姿の勇者の仲間達が!
「お前勇者ちゃうやろが……」
俺が何をしたと言うのか。
瞳孔をかっ開いて、口の端を片方だけ
釣りあげながら吐き捨てるように言った。
そして俺の口を強制的に閉じない様に、
手で頬を掴んでいる。
何か、何か策は無いのか!?
「はーいコウちゃんごはんでちゅよぉ?」
色見ただけで明らかに不味そうなものが
入っているオタマを、俺の口へ向けて
ゆっくりいたぶるように運んでくる。
「へっふ!」
決してわざとではない。
わざとではないのだ決して。
なんか鼻がむずむずするなー嫌だな―と
思っていたら、でちゃったね自然と。
メデューサさんは身動き一つしない。
顔に色々ついてらっしゃるのに☆
俺は即座に黒隕剣を握る。
星力解放だっ!
――解放不可――
え。
こうして早々にその日は探索を終了した。
気付いた時には、辺りに散乱する緑の物体と
壊れた鍋。そして壁に背を預けて寝ていた俺。
若干視界が可笑しいので顔を触ると、
そこには……。
あの恐怖の草が!(キャー)




