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冒険者少女たち、その2

かつてない恐怖と対峙するコウ。

一刻も早く駆け付けたい冒険者少女たちは

クエストに挑むのだった。

「どうだ?大体解ったか?」


 草原の真ん中で小さな二人が並んで座っている。

リムンは本をジッと読みながら難しい顔をしていた。

その顔を見てファニーは溜息を吐く。

ファニーが暫くそよ風に身を任せていると


「よしっ!」


 と勢い良くリムンは立ち上がり、杖をかざした。


「我が魔力によりて紡ぎゅ」

「噛むな」


 すかさずリムンに突っ込みを入れるファニー。

涙目になったリムンは口をぎゅっと結び耐えた。

そしてもう一度と気合いを入れ直し、口を開く。


「我が魔力によりて、紡ぐは安らぎの場、誰も阻む壁なり」


 そう言葉を発しながら、杖で自分の前の地面を、左から三つ叩く。

するとリムンより少し高い半透明に薄緑が入った壁が出来た。


「更に三つ、紡ぎて、囲いを立てたり、魔力よ通りゃんせ!」


 リムンは更に自分の横と後ろ、ファニーの横を三つ叩いた。


「なるほど。一気に言えば噛むから一つずつ分断しての詠唱か」

「うん、アタチ噛むから。これなら大丈夫」


 鼻息荒く胸を張るリムンに、ファニーは溜息をまた吐いた。


「まぁ及第点だな。本を読まずにさっさと言えるように

ならねば、戦では役に立つまいよ」

「出来た事が大事だのよ。おっちゃんを助ける為に。

その内詠唱無しでもやってのけるだのよ」

「何万年先になるやら。ま、結界の練習でもしておれ。

我はイノシシの大群相手に加減の仕方を学ぶ」

「頑張るだのよ!」


 立ち上がりつつリムンを見て、何か言いたくなるのを抑え

歩きだすファニー。


 実際のところ、加減をするだけなら問題ない。

要するに相手を倒しつつ連戦出来る加減が必要なのだ。

となれば、竜の吐息ドラゴンブレスも巧くすれば

焼け野原にせずにいけるのではないか?

ファニーは森から抜けてきたイノシシの大群を前に考える。


「つあっ!」


 最初に使ったのは前回リムンの時に

使用したブーメランだった。

しかし力が弱過ぎて突進を鈍らせるのみだった。

次々と向かってくるイノシシたち。


「イノシシさんイノシシさん、

そこのけそこのけ危ない崖がある、ミラージュ!」


 後方から元気な声が飛んでくると、

猪たちの真っ赤な眼が黒眼に変わり、

全体が足を止めた。

ファニーが後ろを振り向くと、

うんしょうんしょと小さくとび跳ねながら杖を光らせている

リムンが居た。

それを見てファニーは微笑む。


 必死なのだなあれも。

コウ、我らをこんな気持ちにさせた

その責任を取ってもらうまで、お前は死なさない!

 ファニーはブーメランをもう一度投げる。

思いのこもった一投は、二列三列と次々にイノシシたちを

なぎ倒して行った。

そしてすかさずファニーは大きく息を吸い込んだ。

 あのような小さきものが足掻いているのに、

我が挑まぬ理由は無い!

 一気に息を吐くファニー。口から炎が飛び出し、

イノシシの群れを焼き尽くす。

ファニーは炎の息を吐きつつも、

草原に直接炎が移らないようにコントロールする。

次々とイノシシが倒れて行くなかで、

当然火は草原の雑草に移る。


「雨降れ雨降れカエルさん、ゲコゲコ鳴いてレインウォール!」


 ファニーが後ろを振り返ると、リムンの足元には

カエルが沢山現れゲコゲコ大合唱していた。

そして小さな雨雲がイノシシの群れの上に現れ、

雨を降らせ消火する。

ファニーはリムンの奮闘する姿を見て、

仲間とは、一人では無いという事は

こんなに素晴らしい事なのかと感激していた。


 誰かが背中を守ってくれている。

竜の身では叶わなかった事が

人の身に化ける事で叶うとは。

生態系で神を除いた頂点に立つ竜よりも

人の方が凄いのかもしれない。

一人で出来る事はたかが知れている。

だからこそ知恵を磨き、物を作り

手を取り合って生きて行くのだな。


「俺との出会いでその後の道が変わったのなら」


 ファニーはコウと出会った時の言葉を

思い出し口に出す。


「我は運命と呼びたい。誰かと共に生きたいと

願うこの心は、もうあの頃の我の道とは

もう違っている。ああ、我はお前に逢いたい」


 雨雲はファニーにも雨を降らした。

その頬を伝うのは雨なのかどうか。

こうしてクエストは終わりを告げた。

丸焼きになった猪の大群をミレーユに預け

ファニーとリムンはアイゼンリウトの

首都アイルを目指して旅立つ!

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