ロキの目指す場所
「で、星力ってなんだ」
「文字通りだよ。星の力。
神様ってさ、誰が最初に言い出したと思う?」
「人間だろう」
「そう。神の話が書物に出てくる前から
宇宙は存在し、
星は生まれては死にを繰り返している事が、
人の手によって証明されている。
実際目にしているものと、信じたいもの。
ある意味対極にある存在」
「お前も信じたいものの一部だろ」
「そうなんだよ。僕は今ここに居て
君と話している。
でもそうじゃない世界もある。
僕が知りたいのはそこなんだ」
何故今自分は存在し干渉し、思い考え
動いているのか。神様というよりは人間に近い。
神様なら何でも知っていると思ったけどな。
「一人だけ知っている者が居る。君も知っている。
僕はね、彼に問いたいんだ。何故こんな世界を
生んだのか」
「おい、消されないのか?」
「消されないような仕組みを作ったんだよ」
振り返るとロキはメデューサであり、
それを降ろしている
異世界人の亜希子を見た。
異世界人はこの世界にとって
イレギュラーの存在。
それは作ったものにとっても同様。
その器にこの世界の神を降ろし混ぜて、
イレギュラーな結界を作ったって事か。
「まさか修行させる為の空間か」
「そういうことだよ。悪いけど知ったところで
出られると思わないことだ。僕は生憎気が長い。
何年掛かろうと待つよ」
俺の修行が完璧になるまで、と言わんばかりだ。
「竜人の進行は?」
「結界展開中は問題ない。それに僕が次の手を
取っていないなんて事はないんだ。解るだろ?」
どんな手を使うかは正直思いつかない。
ただブロウド大陸もある、シルヴァ大陸も
まだまだ広い。そこから何かを使って当てるか、
相対している相手に対して当てるか位だ。
少し間があいた後、俺は訊ねなければ
ならない事を問うことにした。
この答えによっては今戦うことになる。
「一つ大事なことを問いたい」
「何だろう」
「お前は主神に取って代わりたいのか?」
「それはないよ。悪いけど僕にとっては神も邪神も
居てくれないと困る」
面白くないから、と言う前に口を閉じた。
まぁ俺が察するだろうという感じだな。
このロキと言う人物は良くも悪くも好奇心の塊だ。
悪意なんて無いんだろう。考える事の出来る者が
困難に立ち向かい潜り抜けるのが、
心底好きなんだろう。
それが今は自分と世界に向かっているんだろう。
役から飛び出てしまったようだ。
「ちなみに残念だけど、君に対して興味が尽きるのは、
ひょっとすると永遠に無いかも。何せアーサーより先を
見てみたいと思うくらいだからね」
「凄まじいご贔屓どうも」
「地獄の底までいらっしゃい」
悪魔らしい笑みを浮かべる。
恐らくロキは、自分が滅ぶとすれば後悔しない様に、
全力で生きているんだろう。
引き篭もりで抑圧されて生きてきた俺には、
やはりまぶしい。
「勘違いしてるのかもしれないけど、
僕もロキであること、物語の外の行動をするのは、
今回が初めてなんだ。それまでは当てはめられた
事だけを繰り返していただけ。引き篭もる事も許されずにね」
引き篭もるよりきついな……。
ただロキがロキである為だったら、叛旗翻すよりは
役割を通して好奇心を満足させることが出来るほうが、
楽なのにと思わなくも無いけど。
「なぁ」
「何だろうか」
「それってロキっていうのかな」
俺の言葉にロキは天井を見上げる。
「なら別の名前でも考えようか……。
でも良いやこのままで、僕は僕でしかない。
偶々偶然この道に気付いちゃったんだ。
それがあればどのロキでも覗いて歩いたと思うよ」
実に爽やかな笑顔である。
主人公かなコイツは。




