リセットしたい地獄黙示録
「おのれぇええええああああ!」
精神の均衡が取れない牛さんの叫び。
自分の思い通りに行かないどころか倍返しされて
叫ぶという……。
何と言うブーメランだ。
異世界に来てブーメラン返ってくるなんて、
なんて酷い仕打ちだろうか。
「さぁ一騎打ちと行こうじゃないか大将同士でなぁ!」
俺は心の汗をそのままに、ミノさんに
剣を突き付ける。
肩をブルブル震わせて俯くミノさん。
ついに覚醒して戦うか!?
「でぇひっ……でひゃっ……でぇひゃははははっははは!」
手を天井に広げて気色悪い声をあげて笑うミノさん。
「どした?」
「お前は俺を怒らせた!」
「だからどした?」
「俺が有利だという事がお前は解っていないのだ!」
「そだねー」
「んぎぎぎぎぎぎ」
とても放送できるレベルではない目と口と青筋と。
あぁ……お腹痛い……。もう止めて欲しい……。
らめぇ……黒歴史どころか、
地獄黙示録が心の門を空けるの……。
「リセットボターーーーーン」
ミノさんの絶叫。俺の目はきっと白目だったに違いない。
なんだコイツ。俺の過去か何かか?
絶対ぶん殴ってやる。
「ふはははははは! もう一度やり直すが良い!
いや、何度でもだ! この俺様が気に入るまで永遠に
繰り返すが良い!」
初期に元勇者を追いかけてきた元大魔王レベルで酷い。
「はいはい。じゃまたねー」
俺は棒読みでそう告げる。辺りが真っ白に呑みこまれ、
ミノさんも溶けていく。
「なんだその余裕は」
「別に。この程度のダンジョン何遍でもクリアしてやる」
「余裕じゃないか」
「余裕なんだよ実際に。ただこれだけは覚えておけ。
何度も何度もクリアすればするほど、お前のプライドは
少しずつ削られていく。何処まで耐えられるかな」
俺は悪役の如く顔を左に傾けつつ顎を上に向け、
右人差し指をミノさんに向けて告げた。
厨二病的なポーズの方が更に煽れるだろう。
明らかに馬鹿にしているようにしか見えない。
俺だったら会話をするまでもなく殴ってる。
ミノさんが溶けるのを止めて殴りかかってくれば、
本当にここで終了になるし。
「べ、別に俺様が困る事は無い」
「そうか? 何とかの一つ覚えみたいになってると
気付き、それ以上出せないお前のダンジョンを、
何度も何度も余裕でクリアされるという事は、
明らかに俺より劣っているという事だ……。
それでも平気でいられるのか?」
溶けきる間際の顔は、思いっきり歯噛みしていた。
それでも殴りかかってこなかったのは最後の意地かも。
ただ煽り態勢ゼロに近いのは解った。なんだったら
引っ張り出す為に、ダンジョン攻略しながら
ミノさんを小馬鹿にした歌でも歌ってやろうかしら。
「ほ、本当に入り口に戻ってしまいましたね」
ギトウの声に辺りを見ると、
上からじわーっと水の波紋が広がるように、
真っ白な空間が大きな扉があった場所の、
景色になっていった。
「おけおけ。さーギトウ、エウリュ。こっからは
タイムアタックだ」
「た、たいむあたっくですか」
「良いねー」
エウリュアレーはちょっと悪い顔をしている。
俺もニヤーッとする。マジ全力で煽ってやっかんな。




