ミノさんの秘密の罠ショウ!開幕
「取り合えずどう思う? エウリュは」
俺は歩きながらエウリュアレーに問う。
すると彼女は歩きながら目を瞑り、暫くして
「宝箱、見たいかな」
と答える。俺もその意見に賛成だ。
頷くとギトウの腕を掴む。
「あ、ま、また何か危険がっ!?」
ギトウは俺に掴まれていない手を俺の手の上に
乗せて右往左往している。懐かしいなぁ俺にも
こんな時があったよ。初めて期待に胸躍らせて
スタートボタンを押したあの日。
「多分それ違う」
「ありがと」
エウリュアレーの突っ込みに答える。
思考が駄々漏れなのだろうか。こういう特殊な状況は
あまり無いので、自分と相談する感じ、喋りかける感じなら良いのか。
「それでオケ」
「どうも」
エウリュアレー達はエウリュアレー達で会議をしているのかも
しれない。何しろ俺の懐かしい記憶と同じ経験と知識がある
であろう中の人と、真面目なダンジョン構築家、そのご主人様で
知能担当と今彼女の中は専門家会議みたいな状態なのだから。
特に末妹は実働部隊としてダンジョンを大きくないなりに構築した
経験がある。勇者を罠に実際に掛けているし苦しめ命を奪っていた。
対してもう一人は俺と同じ経験の人。あれも中々巧い事しないと、
ガンガン突破されてゲームオーバーになる。かといって最初から
キツメの罠を仕掛けるわけにもいかず、また出来たとしても
そんなものは数の暴力と違わない、浪漫が無いのだ。
何処かで同意されたくない人物複数に同意された気がするが置いておく。
最後の知能担当に至っては妹任せではあるがアドバイスはしたし、
何より一応ここまで俺をサポートしてくれた事もあるし、
女神として意地悪か試練か解らないギリギリの物を提供してきた者だ。
……ああそう考えるとめんどくさいな。
「エウリュ、面倒だから会議止めてって伝えて?」
「あい」
そういうと笑顔に戻ったエウリュアレー。
今ここで意見を出し合っても堂々巡りだ。
「あ、あの先生。何故僕を止めたんでしょうか……」
「いや、出来れば宝箱見つけてほしいなぁと思って」
「は、はぁ」
ホッとしたような違うような、何とも言えない雰囲気を
醸し出すギトウ。そこは嘘でもホッとした演技しないと。
「ギトウ、イライラするのも解る。だが冷静にな。
先頭を任せているのは、どう考えても生物的に
相手も生物なら危険察知能力はギトウが一番高いと
信頼して任せてるんだ。失敗してもフォローするし、
まだまだ先も長いから俺たちだけじゃなく、
悔しい全てに返せる事もある。焦りは禁物だ」
「あ、ありがとうございます!」
両手を握って気張るようなポーズをしながら頷くギトウ。
そういや生まれてそう経ってなさそうだものな。
おっさんがもっと細かく、ただ重くならず、巧い具合に
合いの手を入れる感じでフォローしていこう。
「よし! 慎重に一歩でも前に進んでいこう!」
「はい!」
「おー!」
俺達三人はもう一度気合を入れなおして進む。
俺もスベったし色々あったから切り替えないと。
しかし思ったよりこのナマケモノもどきのダンジョンは
広さがある。落ちて何処に行くのか解らないのも不気味だ。
俺の予想としては、罠に落ちたら死亡か最初からやり直し。
ミノさんなら恐らく相手によって変えてくると思う。




