ニューパーティへようこそ!
行きと違い帰りは気が軽い。
とは言え完全に軽くなったわけではない。
これから旅のお供が一人増えるわけだ。
出来ればここである程度稽古を付けて、
それで先に進みたかったところだけど。
――あ、おかえりなさい――
「どうだった?」
二人は何故か向かい合って立っていたのを、
俺の足音か気配で気付いたのかこちらを向いた。
怖い予感がしておなかが痛くなりそうだよ……
いっそ記憶喪失なり幽体離脱なりしたわ……うぐぅ……。
「なんとか彼を一緒に連れていくことで、下へは降りられる」
俺が全力☆スマイルで右手の親指を立てつつ
二人にアピールする。が、意に介さず二人は向き合いなおす。
誰か、奇跡って起こせる?
――ですから、僕が言いたいのはですね――
「やかましいわ。何でアンタにそんな事言われなきゃいけないの?」
――……言われなくても解ってると思ってらっしゃるなら話は早い!
僕のお兄さんと全力の子孫繁栄を――
わぉ。避けられると思ったんだけど無理なのね。
女王蟻の息子は体をくの字に曲げる。腹部にはステンノーの拳が
めり込まれていた。
「えっとー、話始めてもよろしくて?」
次の瞬間、俺の脳内で結構思い出深い一言が流れる。
―起きないから奇跡―
「ぐはっ」
ステンノーの右目に星が輝くとき、それすなわち必殺の一撃が唸るとき。
などとよく解らない語りを入れてみた。すっごい速かった。
マジ見えなかった。何してんのこれ。神様とかの力じゃない。
俺は腹部の激痛と共に空へと舞い上がる。下には拳を振り抜き
高々と上げたステンノー。大丈夫なのか新生PT。
またしても薄れ行く意識の中で願う。エリアルレイヴだけはどうか……。
だが下では翼を生やし、飛び上がろうとしていたところで意識は途切れる。
「そろそろ起きて頂かないと……」
俺は声に目をあける。するとそこには女王蟻の娘がいた。
今度は彼女とステンノーが向き合っている。どうやら兄が倒されるところを
見なくてすんだらしい。比較的平和に会話している雰囲気がする。
「ああ悪いな待たせて」
「良かったお目覚めになって。無事なようで何よりです」
「心配掛けたな。それより女王から聞いているか?」
「はい。ですのでこうして兄の見送りに、と思いまして来ました」
俺が上体を起こすと、ステンノーと女王の息子が並んで立っていた。
あっぶね。第二ラウンド開始するところだったじゃないか。
「じゃあ早速降りよう。……と、その前に君の名前だけど」
俺は女王の息子に向き直り
「君の名前はギトウ。由来は俺の生まれた国にある神社の名前だ」
――ジンジャとは――
「神様が祭られているところ」
――名に恥じぬよう生きたいと思います――
「ギトウ、悪いが道中で稽古を付けながら進むぞ。どうしても
このダンジョンの最下部までいかないといけなくてな」
――望むところです。他の所を見てみたい――
「よし、そうなったらギトウは自分の食事とか必要なものを準備
してくれ。それが出来たら出発だ」
――なら問題なく。我々はどこからでも食事を採取できます――
俺はその言葉を聞いた後、妹の方を見るが頷いていた。
なんとかなるならそれで良い。
「解った。なら早速旅立つぞ!」
――ハイ!――




