無頼者たち
これ以上やられて起こしでもしたら、
もはや策も糞もない。ここを制圧するとかいう殲滅戦を
やらなきゃならなくなる。向こうは睡眠を細かくとることで、
24時間動いてる軍隊だ。それと戦うなら殲滅戦は避けられない。
「ならばっ!」
俺は解放している気にプラスして、魔力も混ぜる。
こうすることによって更なる強化をする事が出来る。
が、元々ある生命力である”気”と
魔法や魔術を使うためこの世界に来て初めて触れる”魔力”
俺が持っているものではあるが、発祥が違うことで
混ぜ合わせること、そして維持することが難しい。
長くは持たない。
「おらぁっ!」
「きゃあっ!」
一瞬で加速による風圧を作り、ステンノーにぶつかる。
元々が前衛ではなく、中後衛職なのに武力で対抗するとなると、
同じくらいの質量を出せばこちらが有利になる。
とは言えトントンに持っていくためにエライ消費するが。
「まだまだ!」
「終わりだ」
これ以上被害を広げられても困る。ここは真面目に
止めに行く。俺はステンノーが自分の着地した足元を砕こうと
しているのを見て瞬時に差をつめる。目の強化があるのは
こういう時助かる。魔力を出している今は経験則にプラスして、
予知のようなものが発動しているから、行動だけでなく
細かな動きも把握して留めに入ることが出来る。
俺はステンノーの右腕を掴んで持ち上げる。
――僕にも一つ!――
どういうことだ。空気を読めないにもほどがある。
……かと言ってこれは当初の狙いの一つでもある。
最初にあった時の動きなどからして、戦うという行為に対して
興味があるのは明らかだった。また生まれて間もないことや、
男という性別のものが今は彼しか居ないこと。
ママンが一番可愛い息子と絆を持てればそれは敵が味方に
なる可能性がある。俺自身もそうだが、孫悟空さんや太公望さん達
との絆は目に見えない今でも繋がっていると思っているし、
誰にも断てないものだと確信している。
まぁぶっちゃけて言えば、今の自分に出来る一番大きな事であり
こちらから出せる交渉のカードとしてはこれしかないのだ。
ステンノーがブチキレて来たのは明らかに想定外だし、
今この展開になったのも想定外だ。
体力的に厳しいが、落としたウキに獲物が喰い付いたんだ。
ここを逃す手はない。
「手加減無しだ」
――望むところです――
手加減無しとはいえ、良いところで落とさないと、
散々ぶちのめした後にママンか妹でも出てきたらコケる企画だ。
―行きます!――
すっかり丁寧な言葉になっちゃってまぁ。
などと暢気に考えていると、トップスピードで懐に飛び込んできた。
最初にあった時のように、俺は腕を交差させて彼の攻撃を防いだ。
――流石です――
俺が防いだ事で一瞬動きが止まった。それほど自信のある
一撃だったのだろう。勿論こんなもの通常状態で受けたら腕が砕けてる。
そして何よりその動きだ。構えも何もない。こちらの動きを止める為、
最短距離を体勢も構わず打ち込んでくる。
――であっ!――
4本の腕によるラッシュ。隙さえあれば俺の腕を拘束しようと
しているのも読めている。
「甘い!」
恐らく俺があまりにもきれいに捌くので、リズムを変えようと
不意を突こうとしたのだろう、4本同時に突いて来たのだ。
それは2本の腕ですら近距離で避けることが出来ないタイミングに、
相手の中心を狙って打つのがギリギリ決まるレベルのものだ。
動きが単純になる。打つ方も回避能力が極端に落ちるのだ。
俺は流れるように腹部の筋肉へ向けて右拳を突き出した。
腹部に入るまでの流れで膝が動いたが無視してそのまま入れた。




