あの娘は無頼者
「あ、意識が天使に連れ去られる……」
とある土カマクラの天井を大の字になって見ながらつぶやく。
今が何時だかわからない。何故ならここダンジョンの中。
常時発光している壁の明かりによって、朝昼夜どれだか判らない。
ということは作業が終わらないということだ。
しかしここで間違いがあった。蟻は寝ないのだ。
そういや蟻って常時動いているイメージしかない……。
何かの本で働きアリは超短時間睡眠を繰り返していると聞いた。
ひょっとすると最初にすれ違った時も、断続的に寝てて認識して
なかった可能性があるんじゃないか。
企画倒れになるところだった……。
多少人と交流したことで、多少誤魔化すことができるように
なった。土カマクラを直し終え、ステンノーの作った窪みを
直した後、
「働きすぎは良くないゾ☆ 皆一旦休憩だ!
ちなみにお兄さんのお部屋は覗いちゃ駄目だゾ?」
と言いこの確保した土カマクラに入るまではキラキラしてた。
が、当然の如く中にミリ単位で入る毎に顔が死んでいく。
そして輝きは失われ心なしか自分の色が無くなって
溶けていくイメージ。
SAN値直送で三途の川が見えるやうだ……。
一人暮らしの社畜してる方たちを尊敬せざるを得ない。
特にコミュ苦手な人とかその強さとか学ばせて頂きたい。
マジミノさん許さへん。あたい許さへん!
「私がお前を許さへん」
えぇ……。声のほうに顔を向けると、
極な奥様的なオーラ纏った人が仁王立ちしてる。
うそでしょホントもぅマジ無理。
逃亡しょ。
「それがマジ無理」
知らなかったのか、ラスボスからは逃げられないという
感じであっという間に地面を固められた。
可笑しいやろあんな大雑把にしか結界を張れなかった人物が、
早く的確に指定した領域に張ってる。
「怒りによって目覚めたか……」
「とっくの昔にご存じなんでしょ?」
中の人の知識が俺を追い越して行くわ。
そしてこの返しで理解した。真面目に怒りによって成長しておる。
「おい神様、なんで成長するんだ」
「私達四人で一人になってるし、元々得意な事も変化したり
レベルダウンしてるのよ。当然あんな大きな結界を指定地域に
張れないし」
「ならば良し!」
俺は気を解放して一気に場を去る。まだ固まりきらない状態なら、
気で吹き飛ばせるようだ。一々細かいスキル状況をこちとら聞いて
られんのだ。マジワンパンチされるのがオチである。
そして俺は攻撃しないのだ。逃がしてくれるなら逃げるのみ!
――お兄さんどちらに!?――
ここで余計なのが出てきた……もうホントマジ無理。
重労働の後に追いかけっこなんてさらなる地獄があるとか
ずっこいぞ!!
「お前は邪魔だ!」
わぉ……女王の息子を蹴り飛ばした。
すっごい勢いでこの村の入り口まで吹っ飛んだ!
「その背中のはなんですの?」
「妹の持ち物を流用しております」
そう。ステンノーの背には羽が生えている。
そらこっちが土カマクラの上をジャンプして逃走してるのに、
悠々追い付いてくるわけだ。
「なるほど。ペガサスが好むってことは……」
「死ね!」
加速による風圧を纏って突っ込んできた。
あぁ……俺の汗と涙の結晶の土カマクラが消えていく……。
よく考えたらこれ俺も竜人達と同じくママンを激ギレさせて
しまうんじゃ!?
繰り返し俺を襲う邪神を避けながらママンをみる。
「寝てんのかい!!」
そういや女王蟻は寝るんだったね人と同じくらい。
そして兄があんな目にあったのに出てこないということは、
妹も寝てるってことだ。良いんだか悪いんだか。
……いや何一つ良くないぞ!




