思案する無頼者
「君らも大変だよねお母さんご機嫌斜めで」
「仕方ないです。ちょっと村が壊滅しかけたので」
そら駄目だわ。弁明の余地もない。けども謝れ竜人たちよ。
俺たちは立ち長考もなんなのでって事で座って善後策を練ることにした。
道理で話し合いをしようとする感じじゃなかった訳だ。
第一重要な交渉役として俺みたいなのでオッケーってのが、
交渉する気がアダマス様にはなかったんだろうなと思うわ。
「まぁ俺は今は竜人の使者とかじゃないし、今は自分の用で
ティアマト様に逢いに来たから」
「とは言え、お母様からすると、区別が付かないといった所でして」
「愛する息子と娘は判別が作って事か」
流石ダンジョンだ。襲い来る敵を千切っては投げ、千切っては投げでは
クリア出来ない。しかし最初からこういう趣だと、なんと言うか
冒険ロマン活劇って感じじゃないんだよなぁ。ちょっとだけしょんぼり。
思えば本格的なダンジョン探索は初めてに近い。
黒刻剣に初めてあった時以来だ。
そういやダンジョン探索したかったような気がしてたわ。
「取り合えず余すところなく楽しむとしますかね」
「何か名案でも浮かびましたか?」
「そうね。名案なんて立派なもんじゃないけどね」
「是非教えていただけますか?」
「ズバリ答え。信頼を回復します」
あれ……天使が通ったようだ。
シーンとしたまま時だけが流れていく。
「あー、えーと、そのぅ……あまりにも漠然としすぎて
何がなにやら」
妹蟻さんはとても気を使った答え。基本お兄たまを
批判というか否定というかそういうところに行かなければ、
窓口嬢としては適職なのかもしれない。
――意味が解らん――
お兄たまらしい竹を割ったような感想ありがとう。
「そこが大事なんだよ。あまりにも露骨にすれば、余計臍を曲げるだろうし」
――僕たちにまで解らないようにするのか?――
「いや、取り合えず何処か住処を借りたいんだけど」
「それは構いませんけれど……」
あれ、妹蟻さん困惑してる。
――いや、村を見渡してみてくれ――
なるほど。岩やら窪みやら石化やらで半壊してらっしゃる。
「えーと、これは俺の所為になるんかな」
「半々という所ではないかと」
良かった折半してくれて! って全然良くないわ!
割と真面目に俺何もしてなくないか!?
理不尽極めすぎじゃねーのかこれ。
……こうなったらミノさんぶっ飛ばした後ここを占拠して、
俺の引き篭もり王国にしたろかなホントに。
「よーし新たな目標も出来たことだし、先ずは復旧作業と
行きますか」
――お前も一緒にやるのか?――
「勿論。先ずはそこから始める。恐らくもっと楽な方法も
あるんだろうけど、鍛錬もかねて」
俺は立ち上がり、背伸びをする。そして左右の足を伸ばし、
腕を左右に振りとラジオ体操を一通りこなす。
――それは何の意味があるんだ?――
「ん? ああ、これは俺の国の準備運動だよ。間接や筋肉を
解して動きやすく、そして怪我し難くする為のものだ」
――それ、僕にも教えてもらえないだろうか――
俺は二人とお母さんに気付かれないようほくそ笑む。
解る人には解り易過ぎるとしかられそうだが、
あのお母さん的にはこの兄妹は特別な存在だ。
だからこそこの二人と深く交流をすれば、
俺はここから下へ行くことが出来る。
竜人の使者として赴いたのであれば、
竜人達の為にお母さんに完全にどいてもらう方法を
考えないといけないんだが、今その縛りはない。
なんなら竜人が侵攻してきたところで通れない。
この兄を強化すれば、俺が用を済ませて戻るまでに、
竜人すら退けられるかもしれない。
そう考えればただ通るだけの策を講じるよりは、
布石をすることが出来るなら一つでも多くするべきだ。
相変わらず後手だからこそ、攻守交替の機会を窺う為にも
必要なのだ。




