灰色に隠れる色
「そういう所行きたくないなぁ」
「この状況下で他にどうしようもなくない?」
「確かにね」
こっちはアダマス様どころか、アルブラハさんと話も出来そうもない。
なら話できそうなティアマトさんの所へ行くべきか。
「なんつーか露骨に嵌められてるな」
「そうね」
興味なさそうというよりは、話をはぐらかそうとしてないか……。
蛇の髪を指で遊ばせ始めたよ。
「しかしなぁ……仲間を放っておくわけにもいかないしなぁ」
とカマを掛けてみる。
「それなら問題無いわ」
余裕で乗ってきたよ……。
「聞きたくないけど聞くわ」
「今日偶々私達散歩に出たのよ。それでこの街に来たのね」
「はいはい」
「そしたら騒ぐわけよ竜人のクセに」
「うんうん」
「で頭きちゃってさ。竜人如きが束になってきたところで、私達の力には敵わない訳よ」
「それでそれで?」
「ちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返していたら、貴方の仲間もやっちゃって」
「はーそれはすごいねー」
「めんどくさくなったからティアマト一家だーって名乗って貴方の仲間石化させて、
お前たちもこうされたくなかったら観念しろ! って啖呵切ってその石化させたものを
洞窟へ向かって投げちゃった☆」
言い終わるや否や、俺は思いっきり後頭部をはたいた。
こいつの所為じゃねーか!
「お前の所為じゃねーか!」
「まぁそんなこんなでこんなことになっちゃって。悪いんだけど迷宮クリアしてくんない?」
「おい中身変わっただろ説明から。ズルくね? それ」
「そういうアビリティみたいなもんだと解釈していただければ宜しいかと」
「……口調だけ変えてるわけじゃないのが尚更腹立つし落ち着かないんだけど」
一番は目付きだ。知能担当はタレ目。軽い感じのは目が半開き。
丁寧な口調のは切れ長のつり目。忙しないなぁまったく。
「仲間の事もあるだろうし、さっさと行きましょ」
「……途中で石化した仲間がいるかもしれないぞ」
「元が球技とかいうのが得意だったみたいで、寸分違わない位で投げ込んだから、
洞窟には入ってるわ。あれは石は食べないと思うけど、どこか入口じゃないところに
あるのは間違いないと思う」
「……ただの洞窟じゃないとは思ったが、まさか生き物とは」
「世界が滅ぶまで引き篭るんだから、マッピング可能なダンジョンじゃ難しいじゃない」
「50階位あるんじゃないのか?」
「誰がそんなこと言ったの?」
「竜人の先遣隊とか、ティアマトさんとの交渉は? 交流とか」
「さぁ? 私達生まれたばかりだし」
兎に角行くしかないのは決定的だが、何処で誰が口を開けているのか解らない。
最たるものはロキに違いないが……。
取り敢えず細心の注意を払いつつ、ティアマトさんに会いに行くか。
「お前達の手に先ず乗ってやる。さっさと案内してもらおうか」
そういうと彼女はニヤリと笑う。知能担当に変わったようだ。
「改めて宜しくね勇者。私はステンノー」
ステンノー好みの展開ってわけか。なんでスタートからドSとなんだ。
「はいはい宜しくね」
「あら、もっと私達に興味持ってもいいのよ?」
「五月蝿いなぁもうそういうのお断りなんですー。定員オーバーキャパオーバー」
「私そういう人大好き」
ニヤニヤしておる。ホント嫌だわぁ。さっさとクリアしたろ。




