混乱の気配
俺は街に戻り、ダンジョン攻略について、竜人側の協力等を話し合おうと思っていた。
だがそれは、門番の竜兵によって阻まれた。
「ここから先に行く事は出来ない」
門番の竜兵の一言に、何か流れが変わったと感じた。
「どういう事だ?」
「どうもこうもない。アルブラハ様の命令だ」
……アルブラハ様?
アルブラハさんは意識が戻っていないはずだ。
それが何故?
「中に入らなくても結構だが、アルブラハさんと話をさせてほしいんだが」
「それも出来ない。アルブラハ様は病床より復帰され、この島を統一するべく
軍を統括され指示を出されているからだ」
詳しい説明どうも。
俺が見た限りそんな簡単に復帰できるようには思えなかったんだが。
「じゃあ仲間が中にいるから、一緒に出て行きたいんだが」
「お前に仲間など居ない。アルブラハ様からそう聞いている」
……浦島太郎状態なのか俺は。数時間戦っただけで?
てかこいつら入るのも見ていたから知っているはずなんだが。
どうする?
夜を待って侵入すればとも思うが、相手は竜人だ。
生きる事に対する意思が薄弱でも、能力は関係ない。
それが返って厄介になる。仕事をこなす、というかこなせば良いだけと
考えると返ってボーッとしているより性質が悪い。
ひょっとするとアダマス、ティアマトの両方の思惑がかちあったのか。
何と言うタイミングだ。
アダマス側のやる気が気になる。今まであの指揮系統がなっていなさそうな
ティアマト側を攻めなかったのに、今更やる気を出したのは何の理由だ。
ロキの思惑にしては随分と……。
……キツイ選択を強いるな。
ここで俺が竜人相手に大立ち回りをして中を覗くか、
ティアマトダンジョン奥深くまで行くか。
ロキにとってどちらにしろ損しないのだろう。
俺にとっては有利に動く所が何もない。
より軽傷になれる方を選ぶしかない。
どっちにしろ標的になるってことか。
今までとは大分違うな。
「まぁここは一択だな」
ぶっちゃけこの状況ならこれしかない。
アルブラハさんがあの状況から復帰したとは考え辛い。
それに仲間が居なかったとなるのは、アルブラハさんがキチンと
復帰していたなら解るが、それもない。
何よりその策を使うのであれば、門番を通して伝えても効果がある訳がない。
突っ込んでこいと言ってるようなものだ。
そして突っ込んで大暴れすれば、こっちにも睨まれる。
ダンジョンに単騎で突っ込めば、皆の安全が確認できない形で
竜人達の良いように動き、且つ恐らくロキが企んでいる事に加担してしまう。
……その後どうなるか解らないが、結局竜人には睨まれる訳か……。
という訳で俺は相棒二振りを引きぬく。
竜人の皮膚の強さを信じて一気に吹き飛ばすか。
俺は二振りに気を通して交差させて前面に切っ先を突き出した。




